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きつねと私の12か月(2007年・フランス)

大好きだから、さようなら
フランス・アルプスを舞台にした、美しく切ないファンタジー

画像:きつねと私の12ヶ月(2007年・フランス)

 「皇帝ペンギン」でアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞したリュック・ジャケの脚本、監督になる「きつねと私の12か月」(松竹配給)を見た。

画像:きつねと私の12か月(2007年・フランス) 10歳の少女が森で出会ったきつねと仲良しになりたいと思う。少女ときつねの触れあいは、美しい自然を背景に、ドキュメンタリー・タッチで展開する。
 山肌を赤く染める秋、雪の積もる冬、あざやかな緑が映える春、そして、いろんな生き物が活動する夏。四季の色とりどりの自然は、目を見張るほど。きつねだけではなく、いろんな生き物が出てくる。それぞれがていねいに描かれて、飽きない。
 少女は、なかなか現れないきつねを待ち続ける。やっと、きつねと再会、なんとか仲良しになる。しかし、野生のきつねである。少女の願いは叶いかけるが、現実は厳しい。ハラハラドキドキ、観客は少女ときつねの交流を見つめることになる。

 秋。10歳の女の子リラは、自転車で学校に通っている。ある日、森のはずれで、きつねに出会う。美しい、とび色の毛、かわいい瞳をしたあかきつねである。
 また、きつねに会いたいと、森に通うリラ。秋は深くなっていく。
画像:きつねと私の12か月(2007年・フランス) 冬。雪が積もる。リラは雪を踏みしめて、足跡を頼りにきつねを探すが、なかなか見つからない。ふと、小さな足跡を見つけて、見上げると、狼がいる。思わずリラは、崖から落ちてしまう。歩けないまま、ベッドで冬を過ごすリラ。きつねの本を読み、きつねの絵を描く。会いたい思いはつのるばかりである。
 春。足の治ったリラは、また森に出かけていく。やっとのことで、きつねの巣を探しあてるが、そこには子きつねたちがいる。リラの探していたきつねは、冬のあいだに母親になっていたのである。リラを見ると、すぐに逃げていたきつねの警戒心は、すこしずつ、ゆるやかになっていくようである。
 夏。リラの冒険が始まる。きつねに導かれるように、きつねのあとを追うリラ。きつねにティト(おチビちゃん)と名前をつける。渓流に蛙を見つける。リラはうれしそうに蛙を捕まえる。ティトはリラを誘うように、洞窟に入っていく。あとを追うリラ。
 またふたたびの秋。リラとティトの距離はぐんと近くなる。ティトはリラの家まで訪ねてくるようになるが…。

 リラを演じるベルティーユ・ノエル・ブリュノーの表情が豊かでとてもいい。きつねを見つけたときの微笑みは、歓びにあふれている。だから観客は、すっかりリラになりきって、画面を見つめることになる。
 家族みんなで、自然について、野生の動物について、語り合うきっかけになるに違いない。

●2009年1月10日(土)より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー、恵比寿ガーデンシネマ ほか全国ロードショー