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中華学校の子どもたち(2008・日本)
未来を写した子どもたち(2004年・アメリカ)

未来への責任として、大人こそが見るべき映画

 子どもたちが出てくるドキュメント映画が2本、公開される。
 「中華学校の子どもたち」(ブロードメディア・スタジオ配給)と「未来を写した子どもたち」(アット・エンタテインメント配給)である。

日本の中華学校で学ぶ子どもたちの“日常”と
中国と日本の未来を映し出すドキュメンタリー

画像:中華学校の子どもたち(2008年・日本)

「中華学校の子どもたち」

 横浜に中華学校が出来たのは1898年、孫文の呼びかけである。初めは大同学校、華僑学校、中華学校の三校で、日本在住の華僑子弟の教育のために開設された。中華系の学校はいま全国で5校、そのうち2校が横浜にある。山手にあるのが中国本土系の山手中華学校、中華街にあるのが台湾系の横濱中華學院である。
 この作品は、横浜・山手の中華学校に学ぶ小学1年生たちの3年間を記録する。
 獅子舞の説明をする先生。天真爛漫な子どもたち。授業とはいえ、どの子どもたちもいきいき、活発である。中国語、日本語が入り乱れての図画や中国語の授業風景が描かれる。獅子舞も子どもたちだけで踊りを練習し、太鼓や中国式シンバルを打ち鳴らす。
 100年を超える学校の歴史を、卒業生が語る。戦前の日本と中国の歴史が、そして、中国がいまの形になるまでの歴史が出てくる。1923年の関東大震災、アメリカ軍の空襲など、学校存続の危機もあった。1949年、中華人民共和国が成立、台湾系の学校と分裂する「学校事件」など、苦労の歴史が続く。
 子どもたちは、中華街に出かけて、父兄の経営する店を見学、取材する。海の安全を守る媽祖廟にも出かける。
 子どもたちのいま、卒業生たちの発言を通して、日本に住む中国の人たちの辿ってきた苦難が浮かび上がる。

カメラと出会い、自分たちの無限の可能性を知る子どもたち
格差の悲惨な現実を伝えるドキュメンタリー

画像:未来を写した子どもたち(2004年・アメリカ)

「未来を写した子どもたち」

 この作品は、2005年アカデミー賞の最優秀ドキュメンタリーに選ばれた。なぜ、今まで日本で公開されなかったのだろうか。
 映画は、イギリスの写真ジャーナリスト、ザナ・ブリスキが、インドのカルカッタで暮らして、売春婦たちを取材したことがきっかけとなって出来上がった。
 ここに暮らす子どもたちの母親は、ほとんどが売春婦である。子どもたちは小さいころから、朝早く井戸まで水を汲みに行ったり、鍋を洗ったり、食事の準備をしたりする。
 ブリスキは、子どもたちにインスタント・カメラを与えて、写真を撮る指導をする。祖母も母も売春婦だった女の子、ここから抜け出したいと思う男の子、絵を描くのが好きな男の子などなど、子どもたちは、写真を撮るおもしろさを体験していく。
 ブリスキたちスタッフは、子どもたちを動物園や海に連れていく。子どもたちは、無邪気で可愛く、いきいきしている。
 子どもたちをなんとかして学校に行かせたいと願うブリスキは、子どもたちの写真展をヨーロッパやアメリカで開くことを考える。すぐれた写真を撮った男の子が、アムステルダムの写真展に招待されるが、行きたくない、と断ってしまう。本当は行きたいけれど、家族のことを考えての発言である。
 悲惨な状態である。これはカルカッタだけのことではない。世界中いたるところで、悲惨な状態で生きていかなければならない子どもがいる。

 

 「中華学校の子どもたち」も「未来を写した子どもたち」も、活発で無邪気な子どもたちが描かれる。しかし、ここには大人たちの作った過去の歴史だけでなく、悲惨な現実もまた浮かび上がる。この2本のドキュメンタリーは、未来への責任として、大人こそが見るべき映画だろう。

「中華学校の子どもたち」
●11/22(土)横浜ニューテアトル、12/6(土)銀座シネパトスほか全国順次ロードショー
「未来を写した子どもたち」
●11月22日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー