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子供の情景(2007年・イラン、フランス)

「学校に行きたい」と強く思うアフガンの少女

画像:子供の情景(2007年・イラン、フランス)

 「子供の情景」(ムヴィオラ、カフェグルーヴ配給)の舞台は、アフガニスタンのバーミアン。2001年、イスラム原理主義を標榜するタリバンの手によって、巨石で築いたバーミアンの仏像群は、すでに破壊されてしまっている。
 仏像群の近く、石屈に住む貧しい家族がいる。6歳の少女バクタイ(ニクバクト・ノルーズ)は、となりに住む男の子アッバス(アッバス・アリジョメ)が勉強しているのを見て、学校に行きたいと思う。学校に行くには、鉛筆とノートが要るよ、とアッバス。
 バクタイは、町に出かけたお母さんを探すが、見つからない。鉛筆やノートを売っているお店で、20ルピーで買えることが分かったバクタイは、家の卵を町で売ろうとするが、誰も買ってくれない。やっと卵をパンに変え、パンをお金に変え、ノートを手にいれるバクタイ。
 アッバスといっしょに学校に行ったものの、そこは男の子だけの学校。先生は、女の子の学校は川向こう、と教えてくれるが、まったく無関心で、バクタイを追い払う。
 川向こうを目指して、破壊された仏像の前まで来たバクタイを、男の子たちが取り囲む。ノートを取り上げて、紙飛行機を作って飛ばす男の子たち。バクタイにブルカのような紙袋をかぶせて、戦争ごっこさながらの虐めを加え始める。
 なんとか逃げ出したバクタイは、車も通らないのに交通整理をする警官に出会う。いじめを訴えても、自分の仕事しかしない警官。山を担当する警官に言ってはおくが…と冷たい対応である。

 学校があった。ところがここは小さい子どもたちの学校ではない。バクタイは、黒板が気に入ったのに、またしても追い払われてしまう。
 やっとたどり着いた女の子の学校でも、バクタイのいる場所はない。先生に追い出されたバクタイは、さらに、男の子たちの戦争ごっこにまきこまれていく。

 このような状況を作ったのは、とりもなおさず大人たちである。ただ勉強したいという、6歳の少女のある日を描くだけで、映画は多くのメッセージを伝え、重要な疑問を投げかける。ラストシーンでのバクタイの決断が、重く観客にのしかかってくる。
 一見、ドキュメントふうのリアリズムである。しかし、町の市場や、学校の先生、警官などの描写からは、おとなたちの無関心さが、象徴的に浮かび上がる。また、男の子たちの戦争ごっこでは、アフガニスタンの実情を鋭く示唆、みごとな演出に驚く。
 バクタイを演じた少女の、愛くるしい中にも、強い意志を感じさせる演技にも、ただ驚くばかり。
 監督はハナ・マフマルバル。「カンダハール」などの傑作を取ったイランの監督モフセン・マフマルバフの娘で、この映画を完成させたときは、まだ19歳であった。
 原題は「ブッダは恥辱のあまり崩れ落ちた」。父モフセン・マフマルバルの著書「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない。恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」から採られている。

●2009年4月18日(土)より岩波ホールにてロードショー