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ぼくたちと駐在さんの700日戦争(2008年・日本)
たかが30年前―、
されど30年前―で「今」を考えたい
1979年、昭和54年は、大学の共通一次試験の始まった年。いまのコンピューター・ゲームのはしりとなったインベーダーが、ゲームセンターなどでブームとなった時代である。
「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」(ギャガ・コミュニケーションズ配給)は、栃木県の小さな田舎の町が舞台。いたずら好きの高校生たちが、新しく赴任してきた、まだ若い駐在さんと、いたずらをめぐって争う話だが、決して陰湿ではない。
スピード違反を取り締まる速度計の前を、自転車で走りぬける。駐在所にSM雑誌を忍ばせる。人が倒れると見せかけて、駐在さんを落とし穴に落とす。ウォークマンの万引きを装い、バッグにしのばせた臭い布を、駐在さんにかがせる。それがことごとく、駐在さんのリベンジにあって、高校生たちが、さらにいたずらを重ねて行く。
隣町で花火大会がある。バイクの事故で入院中の仲間が、手術の必要な小さい女の子と出会う。女の子は、花火を見たい、と言う。よし、花火を見せよう、と約束する仲間。花火を見ると手術を受けてくれるかもしれない。仲間たちは、逮捕、退学覚悟で、隣町から打ち上げ花火を失敬して、少女に見せるよう、行動を開始する。
このようないたずらは、かつては、実際にあったような話である。いまのような、残忍な暴力やいじめは存在しない。まことに、天真爛漫、のんびり、おだやかである。
ナウい、ダサイなどが流行語、「ドラえもん」や「3年B組金八先生」がテレビでスタートしたころである。巷では、ジュディ・オングの「魅せられて」が流れている。この映画にも、さりげなく、当時の流行、時代背景が巧みに持ち込まれ、思わず笑いを誘う。
30年ほど前の話である。いまは、いろんな意味で「豊か」になったのかもしれないが、はたして、そうだろうか?
少なくとも、肉親どうしで傷つけ合うようなこと、学校でのいじめなどは、圧倒的に少なかったはずである。
いたずら高校生グループのリーダー格、ママチャリというあだ名で登場する市原隼人、若い駐在さん役の佐々木蔵之介、とぼけた花火師の竹中直人が、いい味の演技。
笑って、笑って、最後にさわやかな涙。そして、深く「今」を考えさせてくれる映画。
●2008年4月5日(土)より、シネマGAGA!ほか全国ロードショー!!