「ピンチクリフ・グランプリ」
30年の時を超えて甦る人形アニメ!ノルウェーでもっとも愛される作品
温かな人のやさしさに、
こころほっこり…
もう30年以上前、ノルウェーで大ヒットした人形アニメーション映画である。1993年にはノルウェーの人口以上のチケットが販売されたという。以来、ノルウェーはもちろん、ヨーロッパじゅうで大ヒット、時代と世代を超えて愛されている作品がこの「ピンチクリフ・グランプリ」。
日本でも一度公開されたが、それほどの評判には至らなかった。いま改めて見ると、その精緻をきわめた作り、キャラクター設定の見事さに驚く。
おだやかで冷静な性格の自転車修理工、レオドルは、丘の上の小さな村、ピンチクリフに住んでいる。助手のソランはアヒルとカササギのハーフで、チャレンジ精神にあふれているが、けっこうのんびりしたところもある。もう一人の助手がハリネズミのルドビグ。たいへんな恐がりで、いつも物陰に隠れている。
ある日、ソランが新聞を見ると、スーパーカーでレースに出るルドルフのことが出ていた。ルドルフは、レオドルの発明した車の設計図を持ち逃げしたのだった。三人(一人と二匹)は、新しいスーパーカーを作って、ルドルフに挑戦しようと考える。
石油国の王様の援助を仰ぎ、一年がかりで完成したのが、スーパーカー、イル・テンポ・ギガンテ号。はたしてレオドルたちは、ルドルフをはじめ、並みいる強敵に勝つことができるのだろうか?
人形のアニメであるが、人間や動物、背景の描写が、実に細かく、よくできている。修理工場、ソランとルドビグの寝室、イル・テンポ・ギガンテ号の装置などなど、その細かさは驚くばかり。
イル・テンポ・ギガンテ号の完成式、ピンチクリフの村でジャズ演奏がある。ピアノやトランペット、ベースなど、楽器を操る指の動きは、実際の指の動きを再現したという。もう、凝りようは並みではないのである。
いまふうのコンピューター操作ではない。一コマ一コマの手作りである。見ていると、ほのぼのとした気分になってくる。なにかしら、送り手の「暖かさ」が、伝わってくるのである。
監督はイヴォ・カプリノ。脚本、撮影、編集も兼ねる。お話そのものは単純ではあるが、どこかたまらない懐かしさをおぼえる、そんなアニメーション。
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