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教育実践例 |
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模擬掲示板システムを用いたネットモラル教育の指導 |
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1.はじめに |
本校は大阪府堺市にある中学を併設した男女共学の私立の高校である。高校には,付属中学からと公立中学から約120名ずつ入学する。本校は,大阪市にある大正7年創立の帝塚山学院を母体とし,昭和58年に創立された。私は情報科の教諭として,情報科が開設された時(平成16年)より本校の情報科教育を一人で担って,今年で6年目になる。情報科は高校1年で週2単位である(必修)。昨年及び今年授業を通じ,下に述べるような模擬掲示板システムを用いて,ネットモラル教育を実践した。以下,その報告である。
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3.このシステムを使ってみて |
(1)まとめ
このシステムは,生徒に非常に強烈な印象を与えたようである。特に,ネット・携帯電話のモラルの指導は,わかっている・当たり前なことを色々な形で繰り返すことが多いが,生徒にとっては「もう判っていることなので,聞きたくない」と興味を示さない生徒が多い。しかし,実際に誹謗中傷を打ち込んでみて,それを自分が見るという体験はかなり印象深く,また,実際の掲示板と同じように書き込まれた者(被害者)からは削除できないことを体験することによって,インターネットの特徴やそれを利用するときに心得ておかねばならないことなどを,身を持って体験できたであろう。そして,自分が誹謗中傷される身になってみた時の気持ちも,自分の名前が書かれた誹謗中傷の文章があるディスプレイを見ることにより追体験できたと思っている。
(2)感想を分析して
この掲示板システムを行った時の感想を分析してみると,次のようになる。
参加生徒:8クラス(在籍265名,2007年度)
- よく理解できたと思われる感想:210名
- まあまあ理解できたと思われる感想:32名
- 理解が不十分と思われる感想:4名
- 「こんなん見慣れているから何とも思わない」という感想:10名
- その他:1名
合計:255名(留学・長欠・欠席等:10名)
割合をグラフにすると次のようになる。
▲図3・4 模擬掲示板システム感想
(この判断は,感想文より筆者が判断したものです。従って必ずしも生徒の理解度を示していない可能性もありますが,感想文のまま判断しました。)
理解が不十分な生徒は,残念ながら授業に対しても積極的でない生徒であり,「楽しかった」「高揚感がありわくわくした」などと感想を述べている。また,インターネットを日常的に利用している生徒ほど,「なんとも感じない」「見慣れているから気にならない」という感想を書いていた。
そして,「過去の公立中学時代,ひどいネットいじめの被害に遭い,そのことが頭に過ぎって打ち込めなかった」という感想があった(昨年)。こういう生徒がいる可能性があることは,この模擬掲示板システムを用いてインターネット掲示板のモラルを指導する上で,指導者が十分心がけておかねばならないことである。今年は前回の反省を踏まえ,書き込むことや見ることを強制しなかった。従って,その様な反応も特になかったと思っている。
(3)終わりに
この模擬掲示板システムは,ネットモラル・携帯モラルを学習する上で,あたかも軽いやけどをした者が本当に火の怖さを知り,その扱いを身を持って理解するように,一つの良い体験になると思う。また,その体験は生徒にとって,わかりやすくかつ印象深いのではないかと思っている。ネットモラル・携帯モラルは,当たり前で当然のことだけに,指導しにくく,また,一部の生徒が表面のみ理解したように取り繕い裏でひどい誹謗中傷を書き込むことは,ありがちなことである。しかし,色々な取り組みを持って積極的に指導していかねばならないと思っている。
(4)生徒の感想文より
【感想1】
- 送信なんか押したくなかった。
- ストレス解消なんてならない。むしろ罪悪感が残った。こんなことをして楽しんでいる人がいるなんて信じられなかった。
- 自分がばかばかしくなりました。とてもいやな気分だし,本当に後味が悪かった。
- こんなことすると逆にストレスがたまる。とてもいやな気分です。
- すごい罪悪感を感じた。本当に遣ってはいけないと思った。
- すごく嫌だった。ぜんぜん何も考えないようにした。ただ打っているだけなのに悲しかった。
【感想2】
- やるせない気持ちになった。自分の名前と共に「死ね」や「ゴミ」とか書かれているだけでこんな気持ちになるなんて,本当に言葉は凶器になると思った。
- 言葉だけで表れたら,本当に気持ち悪いし傷つくと思う。
- 自分で送ったときと同じく,とても嫌だった。絶対に誹謗中傷はしてはいけないと思った。
- 嫌だし,すぐ消したい気分だった。誰かに本当に見られたくないと思った。
【感想3】
- びっくりしました。早くどうにかして消したいと思いました。
- インターネットもこうなっていると知ったので,もし私がこんなことをしたら,すごく後悔すると思います。絶対に誹謗中傷は書き込みません。
- こんなもの早く消してしまいたいと思った。消えないなんてどうしようと思った。
- もし,自分がこれを書き込んだら絶対に後悔すると思う。自分はしない。
- とても責任を感じました。
【感想4】
- ホッとしました。でも,書き込まれた方の心の傷は消えないと思います。
- よかったと思う。安心しました。
- ホッとしました。でも絶対に相手を誹謗中傷するような書き込みはしてはいけないと思いました。
- 消えてよかったです。もう書き込みたくないと思いました。
- もうこんなんかかんとこと思った。
- これは先生が作った掲示板だから消せるのでいいけど,消せなかったらゾッとします。
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