—映画監督って,どんなお仕事なんですか。
「プロモーションやマーケティングなど総合戦略を理解して,映画というパーツを創りあげる者だと私は考えています。これは,古くから映画に携わっている方々とは一線を画す感覚かもしれません。とにかく今は,映画(作品)のクオリティだけでは売れないんです。漫画化,アニメ化,書籍化,TVドラマ化,ゲーム化,プレゼントなどのプロモーション企画,キャラクター商品の製作,DVD,モバイルコンテンツなど,さまざまなパーツを総合的に組み上げて映画事業が出来上がる。映画はその事業全体の中の1つのパーツに過ぎないと理解して,私は映画監督をこなしています。」
—今と昔では状況が違うということですか。
「その昔は,監督主義と言われるスタイルでした。つまり,映画監督そのものが商品になっていました。監督が思うままに撮って,「監督 ○○何某」と宣伝するだけで,映画はヒットしたんです。しかし,今ではこんなやり方ではまずヒットしません。いろいろなメディアの力を使った総合戦略が欠かせないんです。
—なぜそんな状況に変わったのですか。
「大昔の映画黎明期の頃は,映画館で上映することだけを念頭において製作し宣伝していました。しかし,TVが家庭に入り,VTRが一般化し,DVDなど新しいメディアが台頭し,インターネットや携帯電話が爆発的に普及し,と新しいメディアがどんどん増えてきました。これにより,各メディアそれぞれのインパクトは薄くなってきているといえます。そうなると,映画館で映画を見に来ている人だけに宣伝をしても十分な効果が得られないので,例えば,メディア力のあるTV局と組んで,どんどん映画のプロモーションをかけていくというように,いろいろなメディアをミックスする手法が一般的になりました。」
—そんな映画作りの中で著作権についてどう考えておられますか。
「日本では,確かにいろいろな企業が持つ著作権などの権利は,比較的守られているとは思います。しかし,こと個人に関しては,ハリウッド映画などと比較すると権利意識が希薄で,権利を持つ側も映画で使う側もうやむやにしてしまう場合がまだまだあります。アメリカでは「人の考えたもの」を使用することに対して,きちんとお金を支払うというシステムが確立しています。」
—個人の権利が守られない場合があるのですか。
「例えば,映画のワンシーンで,重要な登場人物が印象的な場面で効果的な台詞を言ったとしましょう。この場面と台詞は映画の構想段階で,企画書(あるいは粗筋)を書いた人間が考えたもので,それをそのまま脚本に使用するというようなこともありえます。当然この場面と台詞を考えた人にも,そのアイディアに対して権利があるわけです。しかし,日本では金銭で買い取り補償することもなく使ってしまい,使われた側も,「映画で使ってくれてありがとう。」という感覚で済ませてしまうことがあります。アメリカであれば,「おまえが考えたという事実も含めて,そのアイディアを売ってくれ」となるはずです。」
—須賀さん自身は著作権の処理について,どのようにされていますか。
「まず,複数の方のアイディアで作られた脚本の場合,その中にあるアイディアを分解して整理します。この部分は誰々の考えたアイディアだという風にね。そのようにして,権利を主張される可能性に気づくように心がけています。そして,できるだけ事前に契約して,必要ならお金を支払って,これらをクリアしておくのです。結果的に作品が完成したら使われなかったというアイディアも出てくるわけですが,後でもめることを考えれば,それはリスク回避かと。」
—では最後に,著作権について,学校ではどんなことを学んでほしいと思われますか。
「人のアイディアを勝手に使わないという感覚を持ってほしいと思います。また,自分がアイディアを出した場合は,そのアイディアがどのように使われるのかを先見してほしいです。このようにして,他人の権利を尊重し,そして,自分の権利を守るという感覚を身につけてほしいですね。」
—どうもありがとうございました。
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