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ICT・EducationNo.22 > p14〜p18

教育実践例
電子メールの活用
−「School Mail」を活用した情報の授業事例−
東京都立成瀬高等学校 内記昭彦
tt031001@naruse-h.epals.com
1.はじめに

 新教科情報の授業を展開する上で,メールを実際に使用することは必要不可欠であることは言うまでもない。しかし,いざそれを行おうとすると様々な問題に突き当たることになり,情報担当教諭は二の足を踏まざるを得ないケースが多いのが実態であろう。

 本校では「情報A」を1学年に置き,平成15年度からスタートした新学習指導要領の初年度から実施している。東京都では初年度からの実施校は比較的少数派であったために,4月の授業開始時点ではメールについての参考例を見いだすことができない状況であったが,東京都高等学校情報教育研究会の研修会における情報交換の場で新学社の「School Mail(以下スクールメール)」(図1)を知る機会があり,導入して1年間活用した。本稿ではその状況について紹介したい。

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▲図1 スクールメールログイン画

2.本校の概要
 本校は,東京都多摩地区南部の町田市に位置する全日制普通科高校である。全校生徒は約840名で,大半の生徒は四年制大学への進学を希望している。

 前述のように,1学年に「情報A」2単位を置き,2校時連続授業(1校時50分)としている。

 「情報A」ということから,実習を主体とした授業を行っているが,生徒は全般的に非常に熱心に取り組み,昼休みや放課後にも残って作業を続けることも少なくない。

 インフラ面では,昨年度8月にコンピュータ教室が7年ぶりに更新となり,2学期からOSを含めたシステム全体が大幅に変更され,サーバーはWindows 2000 Server,生徒機はWindows XP professionalとなった。これに合わせて,それまでのクライアントマシンごとのユーザー名とパスワードによるログオンから,個人ユーザー名とパスワードによるログオンに変更し,サーバー上の個人フォルダ(ネットワークドライブ)の利用ができるようにした。これと並行してスクールメールの利用もスタートさせた。
3.授業でのメール利用の諸問題

 私たちがメールを利用する場合には,プロバイダと契約することが一般的である。しかし,学校の授業で利用しようとする場合,それをそのまま適用することはできないことは容易に想像がつく。

 代替の方法としてフリーメールを考えた場合には,原則的に経費は生じないが,生徒の個人情報保護の問題や,匿名性による種々の問題の発生が懸念される。

 最も理想的なのは学校でメールサーバーを設置する方法である。大学などでは一般的であるが,高等学校の限られた予算の中でのインフラ整備が必要になること,管理する教員の高いスキルが求められ,異動のサイクルが早まっている中では継承という点で懸念があること,メンテナンスをしていく上で日々大きな負担が生じることなどの問題点がある。

 検討の結果,スクールメールはこうした諸問題の多くを解消し,さらに様々な利便性もあり,情報を担当する教師の誰もがメールを活用した授業を可能にしてくれるものであると判断できた。

4.スクールメールの概要
 スクールメールには,以下のような特徴がある。

1)メールサーバーの管理は,基本的にすべて新学社に任せられる。ウイルスやハッカー対策などのセキュリティ面の余計な心配が不要である。

 また,TRUSTeマーク(TRUSTe:特定非営利活動法人日本技術者連盟TRUSTe 認証機構 http://www.truste-jp.org)が授与されており,一定の信頼性が保証されている。

2)Webメールであるため,学校だけではなく,自宅をはじめインターネット環境(ブラウザ)があればどこでも利用できる。

 コンピュータ教室の生徒機には環境復元ソフトが導入されているため,メールソフトを使用した場合に個人設定を保持することが困難であるが,この問題も回避できる。

3)フィルタリング機能(メールフィルター及びアクセスレベル)の設定が可能なため,外部や生徒同士などの間で内容等に問題のあるメールの送受信を防止できる。これにより,生徒の個人情報漏洩の危険性や悪質なメールへの不安は最小限に押さえられる。

4)Outlook Expressを使用しないため,これをターゲットとした多くのウイルスやワームなどの被害に遭いにくい。

5)ブラウザのオートコンプリート機能を利用した場合の危険性を周知させることができる。

6)学校で一括契約でき,学年積立金などから教材費として支出がしやすい。契約内容にもよるが,1人当たり年間500円程度である。

7)独自ドメインではないものの,学校名を含んだメールアドレス(例:naruse-h.epals.com)が設定できるため,帰属意識を持たせることが可能である。

8)生徒一人一人にメールアドレスが記載されたカードが配布され,年度内の使用ができる。メールアドレスのユーザー名の部分をコンピュータ教室でのユーザー名と同じにすることで,整合性が持たせられる。

9)生徒と教師のメールアカウント登録のための名簿データ(学年・組・姓・名・姓カナ・名カナ・アカウント名・性・担任姓・担任名のみ)は,Excelなどで扱えるCSV形式で一括登録が可能である。
5.電子メールの授業
 電子メール活用についての授業は,電子メールの基本的事項と,スクールメールの操作説明とし,1回の授業(2校時連続)で行った。「電子メールの送受信」について各種注意事項と説明のプリント(図2)と,スクールメールの簡易マニュアルから操作上の必要事項を抜粋したプリントを配布した。

電子メールの送受信

2003.Oct.
情報科

1.School Mail(スクールメール)について

 電子メール(教科書p.62〜)の実習のため、スクールメールを利用します。使用できる期間は2004年3月末までです。
 一般的に電子メールに使用するOutlook Expressではなく、Internet Explorerを使用する「Webメール」というタイプです。
 Internet Explorerを起動し、スクールメールhttp://naruse-h.epals.com にアクセスします。

1)ID
 コンピュータ室で使用している「ユーザー名」と同じです。(※stは小文字)

2)パスワード
 初期状態ではユーザー名と同じですが、初めて使用する際に新たに付け直して(更新して)下さい。この際、オートコンプリート等は絶対に使用してはいけません。
 また、パスワードを忘れてしまうとメールの使用ができなくなりますので注意して下さい。万一忘れてしまった場合には、至急先生に届け出て下さい。
注】パスワードの制限
 半角・英数文字(及び記号)・大文字小文字の区別有り・8文字以内
 不適切な場合にはメッセージが出ます。

3)メールアドレス
 stで始まるユーザー名 + @naruse-h.epals.com

4)会員証
 IDの他、パスワードを記入する欄があります。「新しいパスワード」欄は、原則的に必要がなければ(覚えられれば)記入しない方が安全です。

5)メールの送受信
 この自分自身のメールアドレスや、自宅で使用しているアドレス(携帯電話のメールも含む)との送受信が可能です。どれだけ使用しても、追加料金はかかりません。(登録料等は学年積立金から支出)
 インターネットに接続しているコンピュータでブラウザが使用できれば、原則として、どこのどのコンピュータからでもメールの送受信が可能です。その際にはオートコンプリート等には十分な注意が必要です。
 また、添付ファイルの利用も可能ですが、1MB以下にして下さい。

6)メールのチェック(重要)
 授業の中でメールの実習を行うという点から、通常のメールと違って契約会社及び先生によるチェックが行われます。
 プライバシー保護の観点から無闇にはチェックは行いませんが、必要に応じてチェックができるようになっています。あくまで授業を通じての使用であるということを理解し、プライベートな内容を含むメールの送受信には使用しないで下さい。
 また、不適切な語句(侮蔑語・差別用語・猥褻語)を含むメールはフィルタ機能が働くために送受信ができず、契約会社及び先生に回送され、承認された場合のみ送受信できるようになっています。よって、自分自身では送信したつもりでも先方に届かないケースがあります。
 万一、メールを使用した悪質な行為があった場合には、特別指導の対象となることもあり得ますので、マナー及び社会常識を遵守してください。

7)不審メールの対処
 スクールメールのシステムは、一般的な相手からのメールは送付されにくいようになっていますが、不審なメールが届いた場合には絶対に返信せずに先生に連絡して下さい。

8)詳細な使用方法
 配布するマニュアル(抜粋版)を適宜見て下さい。

9)先生のメールアドレス(スクールメール)
 内記 昭彦 tt031001@naruse-h.epals.com
 ×× ×× ********@naruse-h.epals.com

2.授業での取り扱い

 今後は、コンピュータ室に来たら、すぐにコンピュータ(Windows)にログオンし、さらにスクールメールのWebページ(http://naruse-h.epals.com)から自身のアドレスに速やかにアクセスして下さい。
原則として、本日の授業内容や課題等をメールにて送付しておくようにします。

3.自宅学習

 自宅にコンピュータがあって、インターネット接続ができれば、自宅でもスクールメールが利用できます。
 たとえば、学校での課題の続きを自宅でやりたい場合には、学校のコンピュータ室からスクールメールで添付ファイル等を自分宛に送信しておき、自宅のコンピュータで受信してその続きをやり、再度スクールメールで自分宛に送信してコンピュータ室で受信するという方法も可能です。従来から自身のメールアドレスを持っている人は自宅での送受信にはどちらを使用しても結構です。

▲図2 授業の説明プリント

 ブラウザの「お気に入り」には「SHINGAKUSHA School Mail - ログイン」を登録して容易にアクセスできるようにした(図3)。

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▲図3 「お気に入り」への登録

 説明は最小限にとどめるようにし,教師からの初めてのメール(図4)に記載したメールのマナー・ルールについて説明されたWebページ(富士通azby Club:パソコン活用 よくわかる!パソコン入門講座 メール講座 ,財団法人インターネット協会:インターネットを利用する方のルール&マナー集)を閲覧させ,それに基づいた課題とアンケートへの回答をまとめてメールで返信させることで生徒が主体的に学習できるようにした。

 大半の生徒は,ほぼ指示通りの返信メールを送付することができた。引用の仕方も概ね適当であった。これは,日常的に携帯電話のメールを利用していることが大きく影響しているものと思われる。

 若干問題があったのは,半角カタカナや機種依存文字を無意識に使用してしまうことであった。

 これについては,再度メールを返信して指摘するようにした。

今日の作業内容です。

1.メールのマナー
 http://azby.fmworld.net/usage/lesson/mail/index.htm
及び
 http://www.iajapan.org/rule/
に「メールのマナー・ルール」等が掲載されています。

 これらを読んで、メール作成上注意すべきことを簡単に(10行程度)にまとめて、メールのマナーに配慮したメールを「メール作成上の注意」という件名で先生のメールアドレスに送信してください。

2.電子メールの利用
 あなたは電子メールを実際に利用していますか?「電子メールの利用」という件名で以下の内容の回答を先生のメールアドレスに送ってください。

1)電子メールの良いところ・悪いところをそれぞれ3つ以上あげて下さい。

2)利用状況アンケートに答えて下さい。
 ●電子メールを実際に利用   している・していない

 (1)電子メールを実際に利用している人
  ・何を使って(パソコン・携帯など)いますか?
  ・利用目的は何ですか?
  ・1日何通ぐらいやりとりしていますか?

 (2)利用していない人
  ・電子メールを利用したいですか?
  利用したい場合:どのような目的で利用したいですか?
  利用したくない場合:利用したくない理由は?

3.今日の授業の感想
 「今日の授業の感想」という件名で自分の考えをメールのマナーに従って5行以上の文にまとめ、先生のメールアドレスに送ってください。

▲図4 課題を記載したメール内容
6.授業での活用場面

(1)授業内容の連絡

 メールアドレスを付与して以降,毎回の授業内容の連絡・提示は,基本的にメールで行うようにした。生徒がコンピュータ教室に入室したら,速やかにコンピュータにログオンし,ブラウザを起動してメールを受信するように指示した。

 これにより,授業開始までにログオンすることを徹底させることが可能となり,授業内容の概要を把握させることで限られた授業時間を有効に使えるようになった。

(2)Webページ作成の補助

 Webページ作成時に,生徒自身のカメラ付き携帯電話で撮影した画像を自身のスクールメールのアドレスに送信させて,Webページに掲載する写真として利用させた。

 生徒に貸し出すことが可能なデジタルカメラの台数が限られているため,この方法は有効であった。携帯電話の機能向上と普及に助けられる結果となった。

 また,カメラ付き携帯電話の画像はファイルサイズ・画像サイズが比較的小さいため,Webページに掲載する際にほぼそのまま使用しても容量の問題がないという副次的な効果もあった。

 なお,携帯電話の機種やキャリアによっては,ファイル名がWeb上では不都合(ファイル名が非常に長い等)なものもあり,注意させる必要があった。

(3)外部との連絡

 Webページ作成の授業で,地域紹介等のコンテンツ作成のために掲載の許可を得ることが必要な相手や,リンクをしたい希望先,素材の借用先などに依頼・問い合わせ・通知をする際に,必要に応じてメールを利用させた。メールアドレスには学校名が入っているため,先方に差出人が学校の生徒であることを容易に理解してもらうことができ,手続き上でも有効なことが多かった。

 また,当然のことではあるが,郵送と違って送料等の経費が不要となったことは言うまでもない。

(4)自宅での継続作業

 自宅にコンピュータがある生徒で,自宅で作業を継続したい場合には,スクールメールのサーバー上にある自身のフォルダにファイルをアップロードさせるか,自身のスクールメールアドレス宛てに添付ファイルを送信させ,フロッピーディスク等を介さずにデータを扱わせた。

7.問題点

(1)フィルタ機能

 不適切な言葉を含むメールをチェックするフィルタ機能により,送受信されないメールは教師宛てに送付されて承認の判断が求められる。これらが滞留すると教師のメールボックスの容量が意外に早く不足してしまい,新たなメールの受信ができなくなるため,頻繁にメールのチェックをし,不要なメールを削除するする必要があった。メールボックスの容量は,標準容量より追加して契約することが可能とのことであり,新年度からはそのような契約とした。

(2)パスワード忘れ

 ユーザー名はコンピュータ教室でのログオンに使用するものと一致させ,規則性のあるものにしたが,パスワードは各自で新たに設定し直すようになっている。これを忘れてしまう生徒が想像以上に多く,授業開始時に手間がかかることが少なからずあった。

 さらに,教師から注意されるのを嫌って新学社のサポート宛てに連絡し,サポート担当者に余計な手間をかけてしまうことがあった(実際には教師がパスワードの再設定をすることが原則である)。

(3)OSとブラウザ環境

 スクールメールのサポート環境は,OSがWindows,ブラウザがInternet Explorerということである。NetscapeやMacOS上での利用についても正式にサポートされれば,より広い環境での活用が可能になると思われる。

8.おわりに

 スクールメールはその他の機能として,掲示板の開設,会員によるスクールネットワークと国際交流,Web上でのファイル共有機能等があるが,昨年度は利用までは至らなかった。国際交流や,ファイル共有機能は他教科も含めてメリットがあると考えられるため,これを生かした利用方法を検討していきたいと考えている。

 情報の授業自体が2年目ということで日々が試行錯誤の連続であり,メールの活用方法についても手探りの状態である。本稿で紹介した内容についてもまだまだ工夫・改善をする余地が多々あることは言うまでもない。

 今後も,生徒にとっても教師にとっても有意義な情報の授業ができるように研鑽を積んでいきたいと考える次第である。

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