今、目の前にいるのは「昔の友人」です。日が暮れるまで一緒に遊んで「よくおこられた」友達です。そこから今の相手を理解しようとします。「足が長く」なって「ちがうふんいき」なので「気づかなかった」こと。「服と帽子」は、今、制服を着る仕事をしていて、おそらく昔の夢だった「船長さんになれた」のだろうと想像します。そして「ヤンチャ」な性格は変わったのか気になりながら、「また一緒に遊ぼうね」と語りかけます。描かれた事実をもとに、そこに描かれていないことをたくさん見付けています。
お手紙紹介
郵便配達夫
みんなのお手紙①
「仕事終わりのおじいさんへ」
みんなのお手紙②
「昔の友人へ」
奥村 高明
先生
先生
みんなのお手紙③
「ゆうびんはいたつふさんへ」
奥村 高明
先生
先生
絵の鑑賞は、絵との対話です。それは「いつも」の郵便配達のおじさんに「こんにちは」と挨拶することから始まります。「これ今日の郵便物ね」「はーい、ありがとう」。対話は「日常」の一場面として展開します。郵便配達夫のおじさんは「少しここでやすませてもらえますか」と返します。そこで、この子は椅子を持ってきます。この椅子は「絵の手前」からこの子が持ち込んできたものなのです(!)。「お茶いれましょうか?」会話は続きます。それは普段の、でもかけがえのない、相手を思いやり言葉を交わす行為です。
みんなのお手紙④
「配便員の方へ」
奥村 高明
先生
先生
この子は、まず「仕事おわりのたばこ一ぷくは、どうですか」と郵便配達員に声をかけます。左手に持っている白い棒のようなものの先が、わずかに赤いことに気づいたからでしょう。タバコだとすれば、その場所や空間にタバコの香りも漂っていることになります。それは、大人が疲れた時に一服して香りと味を愉しんでいることを知っている「この子の生活経験」から来たものでしょう。絵に描かれていないタバコの煙や香りなどを感じたときに、絵は立体的な空間として迫ってきます。絵の感じ方も変えてくれるお手紙です。
先生
描かれた人物が「仕事終わり」だととらえたのは、「人通りがなさそう」な所に座っているからでしょうか、それとも、人物の表情や少し傾いた姿勢から忙しい何かを終えたときの「ぼーっとしてる」状態だと思ったのでしょうか。この「仕事終わり」と「ぼーっとしている」という2つの点で、絵の人物と子どもは重なります。この子も習い事が大変で、疲れるようですね。絵の人物にかけた「おつかれさま」「ぐっすりねむって明日にそなえてください」という励ましは、自分自身に向けた言葉でもあるでしょう。