学びムーヴメント! トピックス
いじめ件数にみるこれから。
今年は、教育に関しての報道が多い年でした。
今となっては、お忘れの方も多いかもしれませんが、「美しい国づくり内閣」といわれた安倍前内閣のテーマの一つに教育問題が掲げられていたからです。
この一年の間に、教育に関するさまざまな法律が改正されました。
- 2006年12月15日成立 教育基本法
- 2007年5月25日成立 児童虐待防止法改正
- 2007年6月27日成立 学校教育法改正、教育職員免許法及び教育公務員法改正、地方教育行政の組織及び運営に関する法律改正(教育改革関連三法)
教育再生
当時の安倍内閣総理大臣の諮問機関として、「教育再生会議」が設置され様々な議論が展開しました。これは、新しい福田内閣となっても継続され、10月にも第9回の総会が実施。会議の冒頭、福田首相は今後もよろしくとの発言があり、再生会議も11月27日には、3つの分科会が開かれて会議の内容は公開されています。
指導要領
中央教育審議会における新しい学習指導要領への進捗も、ここにきて明らかになってきています。11月7日には教育課程部会において「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」が公表され、来年1月には最終答申をとりまとめ、今年度末に改訂内容が告示されます。
学力調査
学力の面でもいろいろと取り沙汰されました。4月22日には文部科学省が平成20年度全国学力・学習状況調査を実施、平成19年11月14日に関係者に通知したとの発表がされました。
また、今月4日には経済協力開発機構(OECD)が国際学習到達度調査(略称PISA)の最新となる06年実施結果を発表しました。学力テストで、日本は数学的活用力が前回(03年)の6位から10位となり、2位から6位に下げた科学的活用力と併せ大幅に低下。前回2003年調査(41カ国・地域)に比べ、読解力が14位から115位、数学的リテラシー(活用力)が6位から10位と後退したこということです。
いじめの認知件数 調査結果
そんな中11月15日に文部科学省は、いじめ問題について発表しました。
正確には、平成18年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」についての報道発表で、その中のいじめの認知件数について注目です。
2006年度に全国の小中高校が把握したいじめの件数は約12万5000件に上りました。これは調査対象を拡大したり、いじめの定義を変えたりした影響で、前年度の約6倍になりました。
なぜこれだけの把握件数が増えたのでしょうか。
今までは、調査対象を「公立の小中高校のみ」にしていたのを、「国立、私立を含むすべての学校」に広げ、定義を「一方的、継続的に攻撃され、深刻な苦痛を受けたケース」から、原則的に「いじめを受けたと子どもが感じたケース」に変更したからです。
その結果、いじめの総数は、17年度の2万143件から12万4898件に急増。内訳は小学校6万897件、中学校5万1310件、高校1万3207件、養護学校など(現在の特別支援学校)で384件。いじめが確認された学校は、小学校では全体の48%、中学校では71%、高校は59%を占めていたことになります。
いじめの内容も、ひやかしやからかいが最も多く66.3%、仲間割れや無視が25.4%、遊ぶ振りをして、叩かれたり蹴られたりという暴力的なことが18.2%だそうです。ネットによる顔写真や住所の掲載によるいじめが、3.3%になっています。いじめを受けていた児童・生徒の自殺が6件、インターネットの掲示 板に悪口を書き込むなど、ネットを利用したいじめが約4900件あったことも初めて判明しました。
教育現場でも個々のいじめについて対策を練っています。小・中学校では「被害、加害双方の児童生徒同士の話し合いを実施」、高等学校では「いじめの状況を確認するため、他の児童生徒に対しアンケート調査や個別面談等を実施」、特殊教育諸学校では「職員会議や委員会等でいじめについての対応策を検討」が最も多いようです。
さて、この把握件数についてどう思われるでしょうか。子どもの受け方で「いじめられた」と思うか、どう受け止めるか難しいところはあります。
例えば「一緒に帰ろう」と誘って、友だちが一緒に帰ってくれればいいのですが、「やだ」と言われた場合はどうでしょうか。拒否した側の理由として「一緒に帰りたくない」「今日は、別の用事がある」「ほかの友だちと一緒に帰りたいが、友だち同士の仲が悪いから全員一緒というわけにはいかない」など色々な理由があると思います。しかし、「やだ」と言われた側は「いじめられた」と思っているのかもしれません。
細かい調査をした自治体もあるようです。アンケート方式もさまざまのようで、ひとえに6倍の件数に増えたことをストレートに受け取るのもいかがなものでしょう。数の把握ではなく、内容だということになります。
ネット社会の現在「パソコンや携帯電話での誹謗中傷」によるいじめの件数も小学校で466件、中学校2691件、高校1699件、特別支援学校で27件の計4833件が確認されました。
ネットの掲示板やブログなどは、制限のない世界とも言えます。今後ますますネット社会が進行するでしょうが、利用する大半は大人です。ましてやプログラムを作るのも大人です。構造についても考えられないものでしょうか。
いじめは、学校だけのニュースではありません。ましてや、子どもだけのことではなく、大人の世界にもあること。人間関係がより複雑化し、ましてやネットによる稀薄な構造を産む社会の中で、モラルやマナーはどのように変化していくのでしょうか。