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私のちいさなピアニスト
人と人が出逢い、愛し、希望とともに成長する物語
韓国は、才能ある西洋音楽の若い演奏家が多く輩出している。そんな背景もあってか、韓国から、すてきな音楽映画がやってきた。
映画「私のちいさなピアニスト」(原題は「ホロヴィッツのために」)は、偉大なピアニスト、ウラジミール・ホロヴィッツに憧れ、国際的なピアニストを目指しながら挫折した女性と、絶対音感を持った天才少年の、ピアノの教授を通して、それぞれの成長を描いたドラマである。
ジス(オム・ジョンファ)は、ソウル近郊のアパートに、ピアノ教室を開く。かつてはピアニストを目指したが、挫折。海外留学の道も閉ざされ、せめて教え子に、自らの叶えられなかった夢を託そうとしている。
引っ越しの日、近所のいたずらっ子、7歳のキョンミン(シン・ウィジェ)が、荷物の中からメトロノームを盗もうとしたことから、ジスはキョンミンと出会うことになる。
やがてジスは、風の音や川のせせらぎに耳をすますキョンミンが、絶対音感の持主であることを見抜き、特訓を開始する。
教室の下のピザ屋の店長グァンホ(パク・ヨンウ)は、美人のジスに一目惚れ、子供たちに混じって、教室の生徒になる。
ジスの見抜いた通り、キョンミンのピアノはたちまちのうちに上達、コンクールにまで出ることになる。
グァンホはジスにプロポーズするが、ホロヴィッツという愛する人がいる、と軽くあしらわれてしまう。
やがてコンクールの日。キョンミンは突然、4歳のときの母親の自動車事故の思い出が蘇り、ピアノが弾けなくなってしまう。
キョンミンに才能があるが故に、もはや教える限界を覚えたジスは、大きな決断をすることになる。
効果的にピアノの名曲が使われる。ショパンの「子犬のワルツ」、シューマンの「トロイメライ」、ドビュッシーの「2つのアラベスク」、モーツァルトの「ピアノ・ソナタ第16番」、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」などなど。
ここには、名声を獲得するために手段を選ばないピアノ教師の自己変革と、トラウマを抱えながらもピアノに打ち込む少年の成長が描かれる。シリアスな話ではあるが、ピザ屋店長に扮するパク・ヨンウのコミカルな演技が、ほどよいアクセントになって、楽しくさえある。
ジスに拒否されたとき、酔っぱらいながらホロヴィッツの名を口にする。ホロヴィッツがホラビーツになり、ホラービーチ(恐怖の海岸)となり、爆笑を誘う。
キョンミンの成長した役を、韓国で「ピアノの貴公子」と評判のピアニスト、ジュリアス=ジョン・ウォン・キムが演じる。じっさいに本人の弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の演奏シーンがクライマックスとなる。
教えるということは、うわべだけの技術ではなく、教える側が、自らを裸にして取り組むものであることが、ひしひしと伝わってくる。
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