天然コケッコー
田舎の分校で芽生えたほのかな恋心…
家族愛や日本の美しい田園風景とともに描く
なんとものどか。ゆったりとした時間が流れている。
大人たちは、かつての子供のころを思いだし、都会の子供たちは、田舎の学校、生活のありようにおどろくだろう。
映画「天然コケッコー」(アスミック・エース配給)を見た。
原作は、くらもちふさこさんの傑作コミックである。「リンダ リンダ リンダ」で大ブレイクした山下敦弘が監督、ほのぼのとした映画であった。
海が近くの、島根県のある村。学校には小学生が3人、中学生が3人の計6人しかいない。登校下校は、毎日みんないっしょである。
右田そよ(夏帆)は中学2年の、活発な女の子。自分のことをわし、という。東京から転校生がやってくる。そよとおなじ中学2年の大沢(岡田将生)だ。なかなかのハンサムで、そよはたちまち大沢くんのことが気になる。
大きな事件は何ひとつ起こらない。みんなで給食を食べたり、海に行ったり。中学生は小学生の面倒を見、小学生も中学生を慕っている。そよの弟は、都会のセンスを身につけた大沢くんの髪型に憧れ、そよは大沢くんのジャケットを欲しがる。
いちばんのちびっ子はさっちゃん。学校でおもらししたり、そよからすこしは我慢しなさいと言われて、膀胱炎になったりする。
そんな田舎の、子供たちの日常が春、夏、秋と季節の移ろいとともに、淡々と描かれる。
修学旅行は東京である。旧友と再会する大沢くん。そよは、貧血で倒れたりする。
やがて、そよと大沢くんは高校受験。大沢くんは、東京の高校を受ける選択肢もある、と言う。ちょっぴり、がっかりするそよ。
そよと大沢くんのキスシーンが3回、出てくる。まことに、ほほえましく、かわいい。
恵まれた自然、のんびりした子供たち。大人だって、みんな親切で、やさしい。
日本の学校や家庭が、この映画のように、おっとり、のんびりしていたら、何も問題はないのだが、と思う。
さわやかに笑って、ほのかな初恋のほろ苦さに、ちょっぴり涙も。
●公開は7月夏休み シネスイッチ銀座、渋谷シネ・アミューズ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー