日本文教出版の「見てわかる社会と情報」(以下;教科書)は,その名の通りイラストを主体とし,最低限度の本文とキーワードに関する事柄は吹き出しなどを用いて説明している教科書である。視覚に訴えることで,教科書に例示されている内容や複雑な事柄を理解しやすくすることができる。 ここでは,「情報通信ネットワークの活用とコミュニケーション」の分野を例に,授業展開の方法を探ってみたい。
次に,コミュニケーション実習の一例を挙げておく。情報通信ネットワークがいかに発展しようとも,パソコンや携帯電話,スマートフォンなどの画面の向こう側にいる人を常に意識しなければならない。コミュニケーション手段によっては,相手の表情や様子がすぐにわからないものもある。 特に,最近の生徒の様子を見ていると,携帯端末を利用して,その場の思いつきや感情でブログやSNSに投稿する例が数多く行われているようである。よく考えずに投稿することによる人間関係のトラブルが後を絶たない。次に紹介する実習は,道案内を利用し,コミュニケーションの本質を考えさせるものである。 (1)準備 1クラスを1グループ6〜7人のグループに分ける。各グループの中から代表者を1人選ぶ。各グループの代表者1人を別室や廊下に呼び出しルールを説明する。その間に教室に残った生徒には机や椅子の配置を図5のように変更させ,代表者を囲むように移動させておく。また,B4のクリアファイルに2枚の地図を入れておく。最初は裏面のみが見える状態で表面には紙を貼って隠しておくようにする。 ▲図5 机と生徒の配置 地図の表面は,よくある路線図を利用する。生徒達が土地勘のない地域であり,複数の路線があるものを選んだ。路線毎に色分けされ,カラー印刷ができればなおよい。本校では,札幌市営地下鉄の路線図(※注1)を利用している。現在,代表者がどの駅にいるかには印をつけておき,何処の駅に行きたいかは表面の地図の横に記載している。 裏面は,翻訳サイトを利用して路線図にある駅名を外国語で表示したものである。地図は上が北ではなく,上が東になるように向きを変え,さらに白黒の表示とする(図6)。 ▲図6 路線図の裏面(一部) 英語や英語に近い言語,漢字を用いる言語などは生徒が内容を容易に想像できるので使わない。今回作成したのは韓国語版である。翻訳サイトを利用して容易に変換でき,文字数も少なく表示できるためであるが,一見して何が書かれているかを識別できない言語であれば,どんな言語に置き換えてもよい。昨今の韓流ブームでハングルを理解できる生徒も増えてきたため,ほかの言語に置き換えることも検討している。 (2)実習開始 代表者にクリアファイルを手渡す。この時点では,表面は紙で隠されて見えない。代表者には,「あなた達には迷子役をしてもらう。現在居る場所は,黒い丸印の部分である。グループのメンバーから道案内を受けるので,わかったら手を挙げるように」という指示を告げる。ルールは次の通りである(図7)。