学習指導要領解説の「情報社会における問題の解決」の項を見ると,「問題解決」の授業のポイントは次の4点に要約できる。 (1)問題解決の基本的な流れの理解 (2)身の回りの具体的な問題を解決する課題 (3)問題解決の方法に関する知識と技能習得 (4)解決案を実践しての検証 以下,これらの観点から今回の実践を考察していく。 (1)問題解決の基本的な流れの理解 これは知識として身につけるのではなく,この流れを教員が理解した上で授業を設計し,生徒には体験的に理解させる方がよい。本実践でも生徒が体験的に理解できるよう授業を構成した。 (2)身の回りの具体的な問題を解決する課題 生徒が自ら問題を発見することが理想だが,教員の側であらかじめテーマを設定し,そこに自然な形で誘導した方がよい。 本実践でも「生徒が身近に感じ,実際に問題がある課題が望ましく,かつ多くの解決方法があり,そして解決提案の効果が目に見えるテーマ」として2年連続で学校食堂を選んだが,日本文教出版「社会と情報」,「見てわかる社会と情報」の各教科書で例示されている「図書館の活性化」,「文化祭の活性化」など,学校の中にはいろいろな取り上げられるテーマがあるように思う。 身近なテーマ設定は生徒の問題意識や問題解決的な視点を育てることにつながる。例えば今回の実習を終えた後,生徒会執行部は食堂で働く人を朝礼で紹介したり,新聞委員会は食堂に関するアンケートを行うなど,授業後も「何か改善できないか?」という意識が残った。 (3)問題解決の方法に関する知識と技能習得 本実践では,付箋を使った話し合いやKJ法,ブレーンストーミングといった方法,適切なグラフの選び方や見せ方などの問題を解決するためのさまざまな知識や技能について指導した。 これらの方法を教えることで生徒の話し合い・プレゼンテーションは大きく変わる。例えば話し合いの場面では,従来は参加しない生徒がいたり,一つの意見が出たらそれ以上意見が広がらなかったことも多かったが,付箋やブレーンストーミングの手法を使うことで,全員が参加し,出される意見の数が増え,それに伴い企画の質も向上した。 (4)解決案を実践しての検証 理想的には企画のプレゼンテーションで終わるのではなく,実際に案を実践させるところまで行い,効果の検証まで実施したい。時間と関係者との調整は必要だが,次年度の実践に向け改善したい。 以上実践しての振り返りについて課題も含めて述べてみた。これから問題解決の授業を作られる際の参考になれば幸いである。 最後に筆者のこれまでの実践は,本実践のプリント・スライドも含め,Web上で公開している。 「情報科の授業アイディア」http://www.okamon.jp
※注1:「 ウ 情報社会における問題の解決 問題を解決する方法については,問題の発見と明確化,分析,解決策の検討,実践,結果の評価などの問題解決の基本的な流れを理解させ,身の回りにある具体的な問題を解決する例題や実習によって,情報機器や情報通信ネットワークの適切な活用を通して,問題を解決する方法に関する基礎的な知識と技能を習得させる」(文部科学省 2010「高等学校学習指導要領解説情報編」 p.25-26 開隆堂出版)