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全国高等学校情報教育研究大会報告 —人と人とのつながりを広げるきっかけとして— |
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1.はじめに |
武蔵工業大学付属中学校・高等学校(平成21年度より東京都市大学付属中学校・高等学校)情報科教諭の神藤健朗(かんどうたけあき)です。教科「情報」の教員として,早いもので4年目となりました。他教科との兼任の学校も多く,現在も専任の教員を1人配置することが難しい学校も多くあります。そのような中,本校では教科「情報」専任の教諭を配置し,中学〜高校まで6年間を見通した情報教育の実践を行っています。
教科「情報」は前述のような教員配置の特性上,授業が独りよがりになってしまう傾向が強くなります。私自身,教科「情報」の授業を受けたことがなく,当初は手探りの中,授業実践を行っていました。そこで,授業実践をブログで発信されている先生を参考に自分の実践をブログで配信することにしました。拙い授業実践報告でしたが,他校の先生方からの貴重なコメントを頂き,授業改善に役立ちました。このようなオンラインでの交流は,各種研究会に参加すること,つまりオフラインでの交流を通してより深いものになりました。とりわけブログ仲間としてのつながりからか,初めて顔をあわせた気がしないこともあり,初対面にもかかわらず気軽に話をすることができました。
そのような活動を通して,さまざまな教育環境の中,教科「情報」の授業実践を行っている先生方との貴重な交流を行うことができています。こういった人と人とのつながり,つまりネットワークの構築は私自身の中で貴重なものとなっています。私はオフラインでの活動拠点として,東京都高等学校情報教育研究会(以下,都高情研)に参加しています。
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2.全国大会の開催に向けて |
(1)開催経緯
都高情研が神奈川県高等学校教科研究会情報部会と交流を始めたことがきっかけとなり,関東近県に呼びかけて開催されたのが,平成17年の関東地区情報教育研究会合同研究大会(第1回東京大会)です。平成18年には埼玉県立春日部高等学校にて第2回の埼玉大会が開催され,関東都県高等学校情報教育研究会が設立されました。平成19年には関東都県高等学校情報教育研究会研究大会(神奈川大会)が開催されました。
研究大会の実施を重ねる中で,人と人とのつながりが北は北海道から南は沖縄まで広まり,全国大会開催の機運が高まってきました。そこで,全国高等学校情報教育研究大会実行委員会を立ち上げ,みんなで協力して全国大会を実施しようと動き始めました。
私は全国大会の会場が武蔵工業大学(平成21年度より東京都市大学)世田谷キャンパスとなったこともあり,実行委員会事務局・会計担当として参加させて頂くことになりました。このように大きな研究大会の運営は初めての経験であったため,なかなかうまく動くことができませんでした。しかし,他の実行委員の方々の協力もあって何とか無事に役割を果たすことができました。これも,人と人とのつながりがあってこそだと思います。
(2)大会テーマ
実行委員会での打ち合わせの中で,大会テーマが「Next Stage−新たに広がるネットワークの構築−」に決定しました。このテーマには2つの気持ちが込められています。1つは,新しい学習指導要領に対する次の段階,情報教育を次の段階へ高めていこうという気持ちが込められています。もう1つは,人と人とのつながりを通して,より良い授業実践をお互いに共有していこうという気持ちが込められています。
情報科の教員は教科の特性上,非常に人数の少ない中,さまざまな校務を兼務しながら授業を実施しています。相談する相手のいない中,すべての教材を一人で作り上げていくというのはなかなか難しいものです。実践されている授業内容を見て・聞いて・質問することができる研究会は授業研究する上で非常に価値があります。また,全国レベルで開催される研究会は,報告される実践内容の地域性もあり,新しい発見が数多くあるため良い刺激となります。
今回の全国大会は,現場レベルの情報科教員が一堂に会して発表を行う初めての大会だと思います。この貴重な場を参加者の方々に有効活用してもらおうというのが,今大会のテーマに込められた思いです。
(3)情報デザイン
今大会では武蔵工業大学小池情報デザイン研究室と神奈川県立横浜清陵総合高等学校の五十嵐誠先生が中心となり,全国高等学校情報教育研究大会の情報デザインを行いました。大会ロゴ,リーフレット,名札,構内案内,Webページなど,大会にかかわるものをすべて統一したデザインコンセプトで作成して頂きました。
6月上旬の実行委員会で決定した大会テーマをもとに,大会ロゴの作成をして頂きました。まず,学生の作成した原案をホワイトボードにすべて貼り付けます。次に似たような原案を集めていき,グループ分けを行います。その中から大会テーマに沿った内容を含むものを抽出し,さらに検討を重ねていきます。その結果,以下のような大会ロゴが完成しました。
▲大会ロゴ
大会直前は連日遅くまで作業をして頂き,大会当日には素晴らしい作品が完成しました。事後アンケートも好評で,次回大会でも情報デザインを取り入れた大会案内を計画しています。
なお,小池情報デザイン研究室の学生が,今大会の情報デザインの作成過程を全国高等学校情報教育研究大会ブログ(※注1)で公開しています。
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3.全国大会 |
(1)基調講演
大会当日は天候にも恵まれ,北は北海道から南は沖縄まで,25都道府県から300名を超える方々が参加しました。事前申し込み数が200名弱だったことを考えると,当日はかなりの方々に来て頂いたことになります。そのため,当初予定していた資料250部が午前中にはなくなってしまいました。結果としてかなり多くの方にご迷惑をお掛けすることとなり,大変申し訳ありませんでした。事前申し込みの周知をしっかりと行っていれば,このような事態にならなかったのではと考えると,申し訳ない気持ちでいっぱいです。事前申込者への資料配付方法等も含め,次年度以降改善できればと考えております。
さて,基調講演では文部科学省初等中等教育局参事官(産業教育・情報教育担当)の斎藤尚樹先生をお招きして,「新しい学習指導要領と情報教育」をテーマに講演して頂きました。400名弱収容可能な教室が,以下の写真のように埋まるほどの盛況ぶりでした。
▲斎藤先生の講演
学習指導要領の改訂の経緯,各教科の情報教育(情報活用・情報モラル等)への対応,学校のICT環境整備の現状,教員のICT活用指導力,学校のICT化のサポート体制の整備,情報モラル教育の推進などについて具体的な数値データを交えてお話がありました。今後私たちが取り組んでいかなければならないことを考えさせられる内容でした。
(2)分科会
午後から始まった分科会は5会場に分かれ,計25本の発表がありました。現場からの授業実践事例についての発表,指導主事という立場からの情報教育環境整備についての発表など,授業の様子や各県の状況報告などがありました。また,各地で取り組んでいるWeb上への教材の公開,他教科や行事との連携に関わる実践報告など多岐にわたった発表が行われました。
以下の写真のようにプロジェクタ・黒板を活用し,短い時間ではありましたが有意義な情報交換ができたのではないかと考えています。
▲分科会発表
なお,基調講演および分科会で配付した資料は,小池情報デザイン研究室が作成した全国高等学校情報教育研究大会Webページ(※注2)で公開されています。全国大会にご参加いただけなかった方,また,全国大会で資料を受け取れなかった方は,Webページより資料を取得して頂ければ幸いです。
【第1会場】
- 情報デザイン教育の提案
〜専門学校教育の事例から〜
- 情報科新入生テスト・完成テストの結果報告
- ほんものにつながる情報教育
〜高大連携から地域貢献へ〜
- 情報活用能力の伸長と国際認定資格
- 沖縄県立IT教育センターの取り組みから
【第2会場】
- プレゼンテーション以前
- 情報学習読本と教科情報in 石和高校
- 情報を活用して学校をデザインする
- 力をあわせて描くクラス人物マップ!
- VB.NETを利用したプログラミング学習の実践
【第3会場】
- 連続相互評価を利用した総合実習
- 情報の科学的な理解を促進するためのプログラミング学習
- 評価を考える
- 情報モラル絵本の作成について
- Excelと学ぶ数理統計
【第4会場】
- 教育における知的生産型コンテンツ
- 教育用プログラミングモジュールの開発
- 普通教科「情報」における教材開発
- 情報Aのプリント教材開発
- 2校目の教科「情報」
〜変わるもの・変わらないもの〜
【第5会場】
- 専門学科「情報科」の取り組みと専門教科「情報」の現状と課題
- 教育課程研究協議会レポートにみる教科「情報」の授業内容
- 行事における現場取材を取り入れた情報活用能力の育成
- 情報モラルに関するアンケート調査
- Squeakを使用した教育環境のデザイン
(3)ポスターセッション
分科会発表の合間にポスターセッションを実施しました。3会場に分かれ計11本の発表がありました。会場間の移動距離を軽減するため,分科会会場と同じ校舎を使用しました。そのため,固定式の机が設置された会場となりました。
発表が見にくかったというご意見が多々ありましたが,その反面,多くの方にポスターセッションに参加して頂くことができました。
▲ポスターセッションの会場
【発表タイトル】
- 大学の情報デザインの教育・研究
- インターンシップ生からの報告
- PSITE第2ステージ
- 生徒の興味を引き出すために
- 情報デザインワークショップを通して提案する観察法・コンピュータと加工機によるアクセサリー制作
- 理科・数学とのクロスカリキュラム
- 教科「情報」設置学年とその可能性
- グループでの「話し合い」の雰囲気を作る工夫と実践
- 情報機器を使った授業は「有効」か
- アンプラグド教材展示 ほか
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4.さいごに |
私がSEをしていたとき,先輩から言われた言葉で今でも心がけていることがあります。「情報を発信する人のところに情報は集まってくる」という言葉です。教師という仕事に就き,授業内容もままならない状況の中,苦労をしながら作った授業をブログの中で紹介しました。さまざまな地域の先生からコメントを頂き,そのコメントを糧に頑張ることができました。実際,ブログ仲間として研究会でお会いしたときなど貴重な情報を頂くことがあり,その言葉の重みを感じています。
次回の全国大会は2009年8月24日(月)に茨城県つくば市にある筑波学院大学で開催されます。茨城県高等学校教育研究会情報部会が中心となって,来年度の実施に向けた作業が着々と進んでいます。また,他都道府県の先生方も事前準備〜当日の運営サポートのために動き始めています。会場へは,東京・秋葉原からつくばエクスプレスを利用して1時間弱で到着します。今から予定をあけて頂き,可能であれば当日の運営サポートや実践事例の発表をして頂ければ幸いです。
最後になりますが,今回の全国大会開催に際してご協力頂きました実行委員会の皆様,小池情報デザイン研究室の皆様,当日運営に参加された皆様,当日全国大会に参加された皆様,どうもありがとうございました。
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