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報告 |
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協働授業によるプレゼンピックへの取り組み ─学校の枠,地域の枠を超えた授業への挑戦─ |
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1.はじめに |
2003年度より教科「情報」がスタートし,新しい取り組みの第一歩として,学校内の授業の枠を超え,同年代の考え方や知識を共有することを目的とした協働プレゼンテーションの授業「プレゼンピック」を計画,実践し,5年を経過した。授業時間内でほぼ完結しがちな学校教育をオープンにすることにより,生徒も教員も向上心をもって楽しく学ぶことができると考えた。授業カリキュラムに他校との交流を設定し,相互に刺激し合い,ブロードバンド回線を通じて遠距離にある学校の教員や生徒とコミュニケーションをもつことにより,多様な授業形態を研究,実践している。
三学期に授業のまとめとして,各学校の代表生徒によるプレゼンテーション大会を行った。
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2.一学期(オリエンテーション) |
年間のカリキュラムの中で,情報化社会の問題点から選んだ次のテーマを研究させた。
1.不正コピー |
6.個人情報 |
2.肖像権 |
7.携帯電話 |
3.チェーンメール |
8.ウィルス |
4.出会い系サイト |
9.ネットオークション |
5.なりすまし |
10.インターネット社会 |
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まったく面識のない生徒が円滑にコミュニケーションを取ることができるように,各学校のWebサイトを調べさせ,地域の特性や校風などのイメージをつかませた。
最初の協働授業として,本校で合同オリエンテーションを実施した。本年は生徒らによる各学校の紹介(遠隔地である岩手県立大野高等学校はビデオファイルで発表),東京成徳大学の青柳隆准教授の講演(百万人に伝わるプレゼンテーション),参加校の教員紹介を行った。このオリエンテーションの目的は,参加生徒のお互いの関心を高め,プレゼンテーションへの共通理解を深めることである。新年度の生徒が協働授業へ取り組むための一歩として位置づけている。
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3.二学期(協働授業) |
参加校の教員を生徒交流部会,Skype部会,Web部会に分け,毎回Skypeを使って実践案をまとめ,メーリングリストにて各教員,学校に報告し教員間のコミュニケーションを取った。
▲Skype授業
プレゼンピックのWebサイトに参加校限定の掲示板を立ち上げ,前述したテーマごとに調べ学習した内容や進捗状況を書き込む授業を実践した。ここでは進行状況が各校で異なるため,適切な返信の書き込みよりも他校の進度を見ることによるモチベーションアップが得られた。
教員はプレゼンピックのWebサイトに生徒が質問しやすいコラムを掲載し,あらかじめそれに対する質問をサイト内に設置したBBSに生徒側が質問事項を記入し,Webカメラを通じてSkypeで回答・解説する取り組みを行った。交流授業の目的は,生徒がネットワークを通して他校の教員・生徒と交流できるような環境を構築していくことにある。恒常的な授業体系から離れ,情報教育としての時事的な話題に触れることにより,環境の異なる生徒同士がネットワークを通して討論できる場を設けることができる。
各校の発表班以外にも研究テーマについてのポスターを作成させ,本校は2年生に,大野高等学校は3年生にも参加を呼びかけ,各校で多様な作品を集めることができた。この情報化社会に関するポスター作成も本年度からの新しい取り組みであり,ネット規範の複雑さやモラルを描いた作品が多かった。
▲サイト内設置の生徒用BBS
▲サイト内コラムによる交流授業
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4.三学期(プレゼンテーション) |
「プレゼンピック」(合同プレゼンテーション大会)で,この1年間の成果を発表した。大会参加校は,以下の通りである。
・岩手県立大野高等学校
・滋賀県私立近江兄弟社高等学校
・埼玉県立豊岡高等学校
・国立東京学芸大学附属高等学校(世田谷)
・自由学園高等科
・豊南高等学校
・明星中学・高等学校
・東京成徳大学高等学校(高等部中高一貫部)
・東京成徳大学中学校(特別参加)
▲プレゼンピック大会(東京会場)
満員の東京会場と岩手県の大野高等学校を,音声ラインはSkypeを利用して結び,映像ラインはネットワークカメラで結んだ。昨年度より大野会場にも司会を立てて,東京会場とのやり取りを行っているが,司会や応援団も,遠隔地とのネットワークによる交流を楽しみながら,東京会場に4,5人で乗り込んでいる代表生徒を盛り上げる姿勢が伝わった。特に,生徒が雪と戯れる光景が大野会場から映し出されると,超満員の東京会場観客席から思わず歓声が上がり,ブロードバンド回線の能力がフルに発揮された。
▲プレゼンピック大会(岩手・大野会場)
作品の評価では,発表形式の違いによる印象の差を埋めるために,ビデオファイルを利用した作品と利用しない作品に分けた。また,発表の順番による評価の不公平をなくすため,当日のくじ引きで順番を決める工夫をした。
各校の発表のあと,美術関係者によるポスター部門の講評と投票による作品の表彰が行われた。
▲ポスターに投票する風景
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5.まとめ |
プレゼンピックでは,普段おとなしい生徒が積極的に参加するなど,活動を通して生徒の新たな一面が発見された。また,班員で協力しテーマを決め,調査し,まとめ,相手に伝えるように発表を工夫し,100人以上の前で考えを伝えるということは,普段の高校生活ではほとんどなく,非常によい経験と言える。また,テキストや映像,Web回線での通信など多種多様なコミュニケーションを1年間という短期間で実体験し,その感想を参加高校の仲間と分かち合えるのもプレゼンピックならではである。
大野高等学校の生徒の感想には,「大変だったが楽しかった」「もう一度チャレンジしたい」「達成感があった」など,いい経験をしたというものがほとんどであった。活動を通して「考えを相手に伝えることの難しさを学んだ」とプレゼンピックならではのものや,「協力することや諦めない気持ちの大切さを学んだ」という感想も見られた。
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6.おわりに |
参加校の教員は,2か月に1回のミーティングで顔を直接会わせ,コミュニケーションを取った(大野高等学校,近江兄弟社高等学校は,Skypeで参加)。本年度の活動では昨年の反省を踏まえ,Webサイトのコラムの活用と,ブロードバンドの利用による交流授業を中心に研究を進めた。前者では,コラムを教材として活用し,検討テーマとして授業で取り上げることができた。後者では,Skypeの活用により,他校への音声・画像送信授業の可能性が得られた。
他校と生徒同士のコミュニケーションは,大会での他学年の生徒による司会やアトラクション参加,ポスターでの参加により,さらに親密度を上げられた。今後の課題として話題の提供方法や指導方法を研究していきたい。
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