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中学校の情報教育実践例 |
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中学校 技術・家庭科における「プログラミング学習」の実践
〜プログラミング言語「ドリトル」を使って〜 |
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1.はじめに |
中学校の技術・家庭科にコンピュータ領域ができたころの授業といえば,お絵かきソフトで絵を描くか,ワープロで文章を作るという「ソフトの使い方」が中心であった。インターネットが普及するようになってからは,Webページによる「調べ学習」が加わった。今でもこの状況はあまり大きく変わっていないように思われる。
このような中で,ソフトウェア(とくにゲームソフト)がどのように作られているかに興味を持ち,プログラマという職業に憧れる生徒も多い。そこで,ソフトウェアがどんなもので,プログラマによってどのように作られているのかを体験させるために,プログラミング学習を取り入れた。
授業を行う中で,生徒たちにとってはソフトウェアやハードウェア等コンピュータの原理を学ぶだけでなく,思考力や創造力の面でもよい影響を受けていることに気付くようになった。今では,「思考力」や「創意工夫する力」などをつける最適の教材ではないか,と考えている。 |
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3.生徒の様子〜アンケートより〜 |
まず,授業の終わりに書かせている学習カードを紹介する。
「今日の授業を楽しく感じたかどうか」を延べ人数で集計すると,表2のようになった。
表2:授業の楽しさの集計
「楽しい」… 57.2%(143/250回)
「楽しい方」… 32.8%(82/250回)
「楽しくない方」… 8.4%(21/250回)
「楽しくない」… 1.6%(4/250回) |
「楽しい」と感じている生徒が,非常に多いことがわかる。しかし,同時に記入している感想を読むと,いつも単純に楽しいと感じているわけではない。生徒の感想を表3に示す。
表3:生徒の感想記述(一部)
・星を動かすのが楽しかった。
・ドリトルで形を作るのがおもしろかった。
・思い通りにいかなかった。
・タイマーを使うのは難しい。
・あまりうまくいかなかった。
・どうしたらいいのかわからなかった。
・とても複雑だけど覚えることができたら楽しそう。
・前回の授業で無理だったことができたことがとてもうれしかったです。
・ボタンの位置をxやyで表すのが難しかったけど,楽しかった。 |
これを見ると,理解できなかったり,思うように作品を作れなかったりして,困難を感じている生徒がいることがわかる。しかし,困難を克服した喜びの感想もあり,授業の中でいろいろな問題を克服しながら,理解を深めていく様子を感じ取ることもできる。
授業で力を入れていることは,プログラムも大切ではあるが,発想・アイデアを重視した作品になるように工夫を促している点である。プログラムの思考ではなかなか優位になれない低学力の生徒も,発想・アイデアでは優位に立つことができる可能性があることから,すべての生徒が制作意欲をもって取り組めると考えたからである。
次に,単元の最後に実施したアンケートを紹介する。まず,「プログラミング学習で役に立ったことがあれば書いてください」というアンケートを実施した。最初,自由記述式で項目を作り,その後,項目ごとに「強く思う,思う,あまり思わない,思わない」の4段階で回答する選択式のアンケートを実施した。肯定している生徒の数をまとめたものが表4である。
表4:アンケート集計結果
A1 数学の座標(x座標y座標,+や−)がわかるようになった。 |
68.7% |
A2 図形の角度(内角や外角)がわかるようになった。 |
41.2% |
A3 数学で図形を学習するよりドリトルで「かめた」を動かせた方がよくわかった。 |
41.2% |
B1 根気強く同じことができるようになった。 |
51.0% |
B2 集中力がついた。 |
56.9% |
B3 考える力がついた。 |
68.6% |
B4 創作力がついた。 |
52.9% |
B5 難しいことでもあきらめず,自分で調べるようになった。 |
66.7% |
C1 コンピュータソフトがどのように作られているかわかった。 |
62.8% |
C2 ゲームソフトの作り方がわかった。 |
64.7% |
C3 プログラムの構成「どうやったらこういう動作をする」ということがわかった。 |
74.5% |
A群のような「数学の理解」を助けるという意見があったが,半分近くの生徒がプログラミング学習の方が数学の図形の授業よりわかりやすく感じていることに驚いた。
B群については,「根気」「集中力」「考える力」「創作力」などの力が身につくという意見であるが,半数を超える生徒が認めている。とくに「考える力」については,7割近い生徒が認めていることに驚いた。
C群は「コンピュータに関する理解」であるが,ほとんどの生徒はソフトウェアの仕組みなどを理解できたと感じていることがわかる。また,ほとんどの生徒はプログラムの本質である「手順が自動的に実行されて行く」という概念を理解していることもわかる。
学習カードやアンケートから,プログラミング学習によって,いろいろな学習に波及効果があることがわかった。 |
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4.おわりに |
現在のプログラミング学習の扱いは,中学校指導要領技術・家庭科を見ると,図8のようになっている。「B.情報とコンピュータ」の学習内容ではプログラミングの単元は選択になっているため,すべての中学校で実施されているわけではない。
今後プログラミング学習の効果が広く認められ,すべての学校で実施されていくことを期待する。
▲図8:中学校学習指導要領
この研究は,一橋大学の兼宗進助教授,筑波大学の久野靖教授の協力を得て実施しております。また,全国の小中高の先生方と連絡を取りながら進めています。
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