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海外との交流事例 |
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テレビ会議システムを利用した国際交流
─韓国清州機械工業高等学校との姉妹校交流─ |
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山梨県立甲府工業高等学校 中澤 透
nakazawa@kofu-th.ed.jp |
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1.はじめに |
本校と韓国の清州機械工業高等学校とは平成8年度に姉妹校を締結し,今年度で10周年となる。毎年10名程度の生徒が交互にお互いの高校を訪問し,相手側の家庭にホームステイし交流を深めてきた。日韓両国がお互いに尊敬しながら,心から両校の友好と親善交流を行うという姉妹校締結の目的は充分果たしてきている。
2年前からはその訪問の際にはテレビ会議システムを使用し,訪問している生徒だけではなく他の生徒も交流を行う形式を取り入れている。また,昨年度は工業高校同士ということで技術的な交流についても積極的に推進し,独立行政法人情報通信機構の「情報家電のIPv6化関連事業」の支援を受けて,山梨県立大学,清州機械工業高等学校,山梨県立甲府工業高校の3校で共同研究を行った。
今回は6月12日(月)から6月16日(金)の日程で本校の韓国姉妹校訪問団が清州機械工業高等学校を訪問した際にテレビ会議システムを使用した姉妹校交流を行った様子について報告する。 |
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2.テレビ会議システム |
インターネット技術の進歩はめざましいものがあり,現在数々のテレビ会議システムが普及している。今回は設定が簡単に行え,比較的画質・音質の良いシステムを検討した結果,Skypeとネットワークカメラの2系統のシステムを利用することにした。2系統のシステムを用意することにより,万が一のシステムの不具合にも対応が可能である。
(1)Skype
インターネットに接続されたコンピュータで,Skype同士なら世界中どこでも無料で電話が利用できるフリーソフトである。音声の帯域が広く,電話以上の高音質な会話が可能である。さらに,ゲートウェイやファイアウォールの設定等をしなくても使用できるので導入が容易である。バージョン2からはテレビ電話機能も標準で利用できるようになった。
(2)ネットワークカメラ
ネットワークカメラは本来インターネットライブ中継や遠隔地の監視用に使用するものである。最近は観光地等で現地の様子をリアルタイムで動画配信しているサイトでおなじみである。カメラ部にモータが付属していて,操作側からカメラを上下左右に動作することができ,またズームをすることも可能である。インターネット回線にもよるが,高画質の画像を送信できる。今回は両校に1台ずつ設置することによりテレビ電話として使用した。ネットワークカメラの弱点としては,インターネットを介してライブ中継する場合は,グローバルIPアドレスが必要となる。幸い,両校とも工業高校でありネットワークの研究用にグローバルIPアドレスを所有していたので導入は容易であった。
(3)使用回線および機器
以下に今回使用したインターネット回線およびテレビ会議に使用した機器を示す。
・インターネット回線 フレッツADSL固定IP接続サービス
・ネットワークカメラ Panasonic BB-HCM381
・Webカメラ Logicool Qcam Fusion QVX-13
・コンピュータ DELL INSPIRON 5150,DELLINSPIRON 5100
・プロジェクタ AVIO MP-400(テレビ会議用),AVIO MP-20(発表資料提示用) |
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3.テレビ会議による交流会 |
(1)外部からの協力
昨年度「情報家電のIPv6化関連事業」についての研究を山梨県立大学,清州機械工業高等学校,山梨県立甲府工業高等学校の3校で共同研究を行った。そのつながりもあり,今回も山梨県立大学国際コミュニケーション学科の八代一浩先生,吉田均先生,同大学総合政策学科の大西康雄先生から今後の姉妹校交流についての提案をいただいている。同じ技術の習得を目指す工業高校同士であるので,ものづくりを考えた技術交流をテーマに交流会を進めたらどうかという意見をいただいた。また,同世代の高校生同士であり,お互いの国で流行していること等についても大変興味があるという生徒の意見もあった。そこで,今回は技術交流会と文化交流会の2つのテーマで進めていくことに決定した。
山梨県は清州機械工業高等学校がある韓国忠西北道との姉妹県を締結しており,毎年1名ずつの職員をそれぞれの県に派遣している。山梨県企画部県民室国際課に依頼し,韓国忠西北道派遣職員の元京子様と県の交換留学生で山梨県立大学研究生の金相恩様の派遣依頼をお願いした。県国際課には本校の韓国姉妹校交流に理解をいただき,派遣依頼を快く引き受けていただいた。元京子様には,文化交流会で韓国側の生徒に韓国語で本県の紹介をしていただいた。金相恩様には,韓国側の発表用資料を日本語へ翻訳する作業と当日の交流会の通訳をお願いした。今回の交流会は山梨県立大学,県国際課等の外部からの協力がなければ実現できなかったと思う。
(2)事前打ち合わせ
テレビ会議を計画する段階で,清州機械工業高等学校の日本語教師姜聖豪先生と,メールおよびSkypeでの打ち合わせを行い交流会のプログラムを作成した。お互い常にSkypeを立ち上げておき,いつでも連絡が取れる状態にした。お互い授業があるので時間の調整が難しかったが,この事前打ち合わせには充分の時間をかけた。
韓国側での技術発表を行った清州機械工業高等学校電子科2年生の梁榮模君は日本語の会話はできないので,Skypeのチャット機能を使用し打ち合わせを行った。私が日本語の文章でメッセージを送ると,それを梁榮模君がインターネットの翻訳サイトを利用して韓国語に翻訳し,また,韓国語を日本語に変換して私に送り返してくれる。技術的な話ではお互いに共通する部分が多いので考えを理解しやすい。ホームステイをした生徒達も各家庭ではインターネット翻訳サイトを利用してチャットによりコミュニケーションを図っていたようである。文字だけのコミュニケーションでも,充分お互いの意見を交換できることに驚きを感じた。
(3)交流会
テレビ会議による交流会は,韓国側は清州機械工業高等学校電子科2年生と本校の韓国訪問団,日本側は本校電子科3年生で行った。なお,お互いの発表用資料は,事前にメールで交換しそれぞれの言葉に翻訳したものをプロジェクタで表示した。
図1は交流会の画像である。このようにプロジェクタを使い,お互いの様子をテレビ画像で見ながら交流会を行った。人数が多い場合の交流会では,プロジェクタの使用は欠かせない。
表1は今回実施したテレビ会議による交流会のプログラムである。
▲図1 交流会の画像(画面左がネットワークカメラ,右が Skypeの画像)
時間 |
内容 |
13:30〜13:35 |
●本日のスケジュールおよび関係者の紹介
(司会:姜聖豪先生)
韓国語と日本語で行う。 |
13:35〜14:00 |
●技術交流会
○清州機械工業高等学校電子科2年生の梁榮模君による「気象センサプログラム」
の発表(韓国より韓国語での発表)
○甲府工業高等学校電子科3年生の山本順一君による昨年本校で行った「IPv6に関する研究」の内容および今年度の課題の発表(韓国より日本語での発表)
●質疑応答 |
14:00〜14:30 |
●文化交流会
○清州および山梨県等の紹介
○元京子様から韓国語で山梨県の紹介をしていただく。
・お互いの高校生活について。
・現在両国で流行っていること,興味関心があること等。 |
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▲表1 テレビ会議交流会プログラム
ここでは特に技術交流会について説明する。
清州機械工業高等学校電子科2年生の梁榮模君による「気象センサプログラム」の発表は昨年度からの継続研究である。清州機械工業高等学校と本校に設置した気象センサからの情報をウエブ上に表示する。気象センサから得られる情報は,外気温度・湿度,室内温度・湿度,気圧,雨量,風力等である。
作成したプログラムの機能を以下に示す。
・気象センサから取り込んだデータをファイルとして保存する。
・保存したファイルをFTP転送プログラムによりFTPサーバに転送する。
・転送されたファイルより気象データを取り出し,HTML言語によりウエブ上に表示する。
図2はFTP転送プログラムである。FTPファイルサーバのIDとパスワードを入れることにより,FTPサーバに気象データの入っているファイルを転送する。このプログラムはMicrosoft
Visual Basic6.0で作成した。
▲図2 FTP転送プログラム
図3は現在インターネットで公開されている気象情報のページである。右側が韓国清州機械工業高等学校の気象センサ,左側が甲府工業高等学校の気象センサである。それぞれの学校に気象センサを設置することにより各校の気象データを比較できる。
▲図3 気象情報のページ(左が甲府工業高等学校,右が韓国 清州機械工業高等学校)
今回の交流では上記気象情報のページに加えて,日本から韓国側の加湿器と屋根の模型を制御する実験も行った。外出先から家の周囲の状況を気象センサで確認し,雨が降れば窓を閉め,湿度が低ければ加湿器を動作させる等の情報家電コントロールの実験である。これからのユビキタス社会に必要となる技術である。図4はコントロール用の画面である。
▲図4 コントロール用画面
F1 Onボタンをマウスでクリックすれば,韓国側の加湿器が動作する。F1 Offで電源が切れる。同じように,F2Onで屋根の模型が動作し,F2Offで解除される。現在は加湿器と屋根の模型のみの制御であるが,動作する機器を増やすことも可能である。このプログラムもMicrosoft
Visual Basic6.0で作成した。ネット制御の技術であるWinsockと加湿器等の機器を制御する部分はRS232Cからの信号で制御する。日本側から韓国側の機器の制御に成功した場面では,両校の交流に参加した生徒から歓声が上がった。
「IPv6に関する研究」の発表は,訪問団の生徒がIPv6に関する研究」の発表は,訪問団の生徒が韓国側から日本語での発表を行った。発表内容は昨年度の3年生が「情報家電のIPv6化関連事業」で活動してきた内容と今年度の研究課題についてである。発表の内容を以下に示す。
・IPv6の特徴等の説明
・昨年度の先輩の活動内容(広島工業高等学校,山梨県立大学等の見学)
・ネットワークカメラの説明
・情報家電コントローラの説明
・今年度の研究課題について
昨年度の研究では情報家電コントローラを使用して,ネットワークを介して本校の視聴覚室のスクリーンを制御した。今年度はこの情報家電コントローラを使用し他の機器を制御する予定である。 |
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4.おわりに |
今回は韓国姉妹校訪問の際にテレビ会議システムを利用した国際交流会を行った。インターネット回線およびテレビ会議用ソフトの発展により,手軽に国際交流ができる環境になってきている。しかし,言語および文化の違い等の問題もあるので,事前打ち合わせをしっかり行うこと,また,外部からの協力体制を整えることも必要だと感じた。今後さらに姉妹校交流を推進していくためには,継続的な交流会の実施が不可欠である。単発的な交流ではなく,継続的な交流を推進したいと考えている。今回ホームステイを行った生徒を中心に,メールアドレスの交換やSkypeのID等の交換により継続的な交流を進める準備をしている。また,生徒会,ハングル研究部を中心に,全校的な取り組みも必要だと考えている。
本校では技術交流については今年度も山梨県立大学,清州機械工業高等学校と次世代ネットワーク「IPv6」に関する研究を推進していく予定である。この共同研究を通してさらに姉妹校交流が深まることを期待している。 |
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