ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.3 > p9〜p12

教育実践例
学習を支える学習としてのメディア学習
滋賀大学教育学部附属中学校 奥西 邦彦
kokkun@mx.biwa.or.jp
1.はじめに

 本校では,コンピュータに関する学習は,昭和59年度より技術・家庭科の選択教科で行われ始め,徐々に他の学習の中で課題解決の一つの道具として利用されるようになってきた。そこで,コンピュータの利用の仕方等どこかでまとめて学習する必要性が生じ,平成元年度より,全学年で「特設コンピュータ学習」として学級担任ともう1名の教師のティームティーチングで行うことから始まった。同年,技術・家庭科では,「情報基礎」領域を必修教科で年間35時間取り扱うようになった。その後,いろいろなメディアについても学習がそれぞれバラバラに行われていたものを「メディア学習」として教育課程の中に位置づけていった。

  本年3月に生徒用の新しいパソコンが40台導入され,生徒の新たなコンピュータ利用が期待され,メディア学習の内容も刷新することとなった。

カリキュラムの全体図
▲カリキュラムの全体図

2.教育課程の中での「メディア学習」
 本校の教育課程は,「教科等の学習」,「選択学習」,「総合学習」とそれらを支える「メディア学習」の4領域で構成されている。それらの関係を図で示すと下のようになる。

  「選択学習」では,「選択基礎」で,生徒自身の興味・関心がどこにあるか見つめさせ,各教科の学習の進め方を体験し,「選択Ⅰ」と「選択Ⅱ」で必修教科の内容を深化・補充したり,発展させたりする。「合科的講座選択学習」では,1教科内では解決しにくい課題を複数の教科から迫る。「卒業研究」は,既習の内容から学習課題を決め,論文や作品にまとめる学習へと進んでいく。

  「総合学習」は,「BIWAKO TIME」と「HUMAN TIME」とから成り立っている。いずれも,教科の枠にとらわれない課題を,教師や外部講師からのアドバイスを受けながら,課題の解決を図る。

  そして,これらの学習を支える学習として「メディア学習」がある。ここでは,コンピュータや他のメディアについて,その特徴と使い方を学習し,情報の収集やまとめ方,表現やコミュニケーションの基礎を培う。
3.「メディア学習」の目標と開設講座
 本学習の目標は次の3点である。


①各種メディアの特性を理解し,目的に応じた活用ができる。

②具体的な創作活動を通して,各種メディアの活用の基礎を習得するとともに,多様な表現力を身につける。

③各種メディアについて興味や関心を深める。

  「メディア学習」は,教科学習の中で行われる講座と特設の時間を設定して行う「メディア タイム」の2つに分かれる。それぞれの講座は,自作のワークブックを準備し,教科の専門性を生かして,または学級の活動としてそれぞれ開設される。下表に11年度の「メディア学習」の講座等について示す。 全学年で同じ講座を開いているところもあるが,本年度新しいパソコンが導入されたためである。

講座名 担当 学習対象 時期 時間
新聞講座 国語科 1年全員 4〜5月 8時間
Windows講座 技術・家庭科 1・2・3年全員 4月 3時間
ワープロ講座 学級担任
フリーのTT
1年全員
2年全員
6〜7月
6月
8時間
技術・家庭科 3年全員 5月
表計算講座 技術・家庭科 3年全員 6月 4時間
ペイントソフト講座 美術家 1年全員
2年全員
9月
1月
8時間
プレゼンテーション講座 技術・家庭科 3年全員 6〜9月 12時間
ビデオカメラ講座 保健体育科 2年全員 2月 4時間
カメラ講座 理科 1年全員 2月 2時間
E−mail 英語科 3年選択 5〜9月 20時間

▲平成11年度メディア学習 講座名・担当・時期・配当時
4.実践例

<国語科による「新聞講座」>

  情報を伝えるメディアとして,古くから用いられている「新聞」であるが,「〜新聞」「〜だより」という形で,学習成果を発表したり生徒会活動で用いられたりするなど,日々の学校生活においても身近なメディアといえる。

  この講座では,「新聞」を「発信メディア」の一つと捉え,「新聞」を効果的に活用できるように,その特性や作り方を学ぶ。

学習の流れ

①「新聞」づくりの時のポイントを確かめよう。
②「記事」の作り方を知り,練習してみよう。
③「インタビュー」を記事にしよう。
④紙面への割り付け方(レイアウト)を学ぼう。
⑤レタリングで引きつけよう。
⑥実際に「新聞」をつくってみよう。
⑦できあがった「新聞」の鑑賞会をしよう。

  この講座で学習したことは,すぐにある校外学習でも,学習のまとめとして壁新聞づくりに生かされる。

ワークブック
▲ワークブック

校外学習のまとめ作品例
▲校外学習のまとめ作品例

<「メディアタイム」によるワープロ講座>

  この講座では,「私の○○○を紹介する」という課題を設定し,パソコンでそれを表現することによって,ワープロソフトの操作方法を学ぶことをねらいとしている。

  ここでは,学級担任とフリーの教師とのティームティーチングで指導する。

学習の流れ

1時間目

・ワープロとは
・ソフトの起動と画面構成
・ファイル 開くと保存

2時間目

・文字の入力 書体とサイズ

3時間目

・印刷プレビューと印刷

4時間目

・ページ設定,書式等

5〜7時間目

・課題

8時間目

・評価とまとめ

<社会科による「OHP講座」>

  OHPは,準備や操作が比較的簡単で手軽に活用でき,使い方によってはすばらしい効果を上げることができるメディアの1つである。生徒の活用頻度も最も高い。この講座では,OHPの特性や基本的な使い方を学んだ後,課題学習に取り組む中で生徒一人一人がTPシートを作成し,発表の仕方を身につけさせることをねらいとしている。

学習の流れ

1時間目
・OHPの特性,基本操作
・学習課題・方法と学習計画
OHP講座ワークブックの一部
OHP講座ワークブックの一部
▲OHP講座ワークブックの一部
2〜3時間目
・調査・研究活動
4時間目
・発表資料作成とリハーサル
5から7時間目
・発表会

BTでの活用例(オーバーレイ法)
▲BTでの活用例(オーバーレイ法)

<技術・家庭科よる「Windows講座」>

  本講座は,コンピュータ教室での学習をする上での約束や基礎的な内容に絞り,他のコンピュータを使っての学習の基礎となるものである。

学習の流れ

1時間目

・入室のしかたとパソコン配置
・パソコンの起動と終了
・デスクトップ画面構成

2時間目

・インターネットでHPを閲覧
・検索しよう

3時間

・印刷の仕方

4時間

・スキャナの使い方

<技術・家庭科によるプレゼンテーション講座>

1時間目
・プレゼンテーションとは
・ソフトの起動 
  デモンストレーション

あらかじめ用意した見本を示し,興味・関心を持たせる。

2時間目
・課題3枚のスライドで「自己紹介」しよう

いろいろな機能についていちいち教師が説明していくのではなく,仲間同士教え合ったり,「HELP」機能の使い方を示すことにより技能を付けさせるようにする。このことは,他のソフトでも同じように自分で解決できる力として大切である。

3時間目
・テーマを考えよう

本年度が初めて実施する講座であるので,生徒にはテーマ例を示していない。テーマは,自由としたが,必ず,グラフを入れることを条件とした。テーマを分類すると,映画やアニメ,スポーツに関すること,コンビニや商品,学校のこと,家庭のこと,地域のこと,社会問題のことなど生徒を取り巻く様々な内容を取り上げている。

4時間目
・発表の流れを考えよう。 
・データを集めよう。

大まかな発表の流れを考え,雑誌や文献,インターネットなどを使って,資料の収集を行う。


▲制作の様子データを入力

5〜10時間
・作品制作  スライドに入力していく。表示効果は,全体ができてから設定する。
・リハーサルをする。


▲リハーサルの様子
11〜12時間目
・作品発表と相互評価

一人ずつプレゼンテーションを行い,他の生徒は,相互評価表に評価しながら作品を鑑賞する。


▲プレゼン発表会の様子

5.終わりに

 本校では,生徒に豊かな個性と自己教育力を培うことをねらいとして,基礎的・基本的な知識・技能の習得と問題解決的あるいは課題追究的な学習を重視した教育活動を推進してきた。生徒は,自ら課題発見,調査・研究,発表や討議,新たな課題発見へと,この一連の流れの中で,情報リテラシーが育成され,活用されてきているものと考える。今後は,さらに情報発信について,具体的な活動を通して充実させると同時に,影の部分について考えさせる場面が必要と考える。

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