宮城野高等学校は,仙台北学区の生徒数増加への対応と,宮城県の高校教育改革のパイロットスクールとしての役割を担うために,平成7年に開校した全日制の単位制高等学校で,普通科(人文国際コース,理数情報コース)が4クラス,美術科が1クラス,総合学科が2クラスの3学科・2コースからなっています。学校は仙台市の東部にあり,中心部からは電車で15分程度の距離に位置しています。 本校の対外的なキャッチフレーズ「宮城野…ここでは一人ひとりが輝きます」からも分かるように,本校は生徒の自主性・主体性を重んじ,生徒一人ひとりが自らの在り方,生き方を自らの意思・責任で判断・決定する教育を重視しています。その一方で,生徒には自分の言動に対する自己責任や多様な個性の中での共生の大切さも求めています。 そのようなことから,制服の指定はもちろんのこと,いわゆる「生徒心得」は定められていません。また,部活動に類似したものはありますが,他の学校でいうところの「部」はないとか,生徒会の執行組織(委員会など)も有志による運営がなされているとか,他校ではあまり見受けられないようなことが行われている学校です。
(1)ハードウェアの問題 本校に導入されているコンピュータはすべて買い取りであって,しかもその中にはPC-9801互換のマシンが含まれています。この機種に関してはオペレーティングシステムがWindows95までしか提供されていませんし,故障した場合でも部品の交換が難しくなってきています。 導入してから8年目を迎える機種もあり,現実に本体やモニターの故障が増えてきていますので機種を更新したいところですが,財政上の問題もあり,実現に至るまではもう少し時間がかかるようです。ハードウェアの性能については,それほど高いものは求めていませんので,当面は安価な中古品を探して補充しながら対応することになると思われます。 さらに,ネットワークの転送速度の制約から,外部へのアクセスが増加してくると,画像などが表示されるまでにかなりの時間をようするようになってしまいます。特定のホームページだけを見るのであれば,キャッシュサーバを入れていますのでかなり改善されますが,現実にはそのようなことはあまりありません。 今後のことを考えれば,校内の基幹ケーブルを光ファイバにした上で,ほかの校内LANの転送速度を100Mbpsに上げて,外部とも光ファイバで結ぶようなネットワークを構成することも必要となってくるでしょう。 ▲生徒用のコンピュータ ▲サーバ機のうちの1台 (2)スタッフの問題 現在のところ,本校の情報に関する科目は,理科から2名,数学から2名の計4名で担当しています。このうち,教科「情報」の免許を取得する予定(申請中)の者は1名だけです。教科「情報」では免許外での担当は認められないようなので,このままだと来年度以降は1名で担当することになります。 持ち時間だけを考えれば,十分に対応は可能なのですが,授業内容を質的に向上させていくためには,いろいろな考え方をもった複数の担当者による指導が望ましいことはいうもまでもないことです。
来年度から教科「情報」の授業が実際にスタートしますが,こういった科目が初めて実施される学校においては,さまざまなトラブルや問題点が出てくるかもしれません。そのようなことから,初年度はあまり無理をせずに,教科書会社などで用意される副教材を利用しながら,コンピュータをスタンドアロンで使用する授業形態も想定されます。ただ,どんな形態であったとしても,単に技能的な面の指導(いかに速く正確に文書が作成できるかとか,いかに多くの関数を利用できるか)だけではなく,情報の活用や発信,効果的な表現方法についても授業の中で取り組んでいければと思います。 では,具体的にどのようにすればよいのかということになりますが,そこで是非検討していただきたいのが,これも来年度から始まる「総合的な学習の時間」との連携です。 こちらの方も授業展開は各学校さまざまでしょうが,少なくともこの時間の担当者については免許の制約がありませんので,いろいろな教科の複数の先生方で担当することになるはずです。この先生方と協力して,生徒が「情報」の授業で学習したことを「総合的な学習の時間」でも活用するとか,逆に「総合的な学習の時間」のネタを「情報」の授業で取り上げてみるといったことも考えられます。例えば,自分たちが調べたものをホームページの形でまとめるなどということは,比較的取り組みやすい題材です。これをさらに一歩進めて,担当者間や学校全体の合意が得られれば,「情報」の授業にチームティーチングの形で加わっていただけるかもしれません。 「題材の共有」から「完全なチームティーチング」までの間に,さまざまなバリエーションがありますが,実現することができれば前述の問題点に対する一つの改善案になります。本校では「総合的な学習の時間」を既に先取りで実施しておりますので,このことについては今年度の段階で「題材の共有」程度のことは試行的に実施できる体制にあります。 教科「情報」の実施に当たっては,ある程度の授業内容ができあがってくるまでは,試行錯誤を繰り返しながら進んでいくでしょうし,何がするのが効果的なのかなど,よくわからないことも多いと思います。そのようなときこそ担当者間での情報交換が必要になってきます。 宮城県でも5月に情報科教育研究会が発足し,来年度からの実施が少しでもスムーズに行われるようにと,独自の講習会の開催や情報処理学会等が主催する研究会への参加などを計画しております。また,ホームページや電子メールを通じての情報交換についても,当然のことながら積極的に活用していく予定です。 こういった情報交換の中から,新しい教科である「情報」の授業がよりよいものになることを目指して,授業実践の事例を中心に相互に共有できる情報が増えていくことを期待しております。