ここで,実際のネットワークを活用した課題研究の成果を挙げます。インターネットを活用した課題研究というと,どうしてもネットに関するものと考えがちですが,決してそんなことはありません。後述するように本校では生徒達の自己責任のもと,かなり自由にコンピュータ室を開放しています。そのためインターネットを「道具」として活用することが多く,ネットに関わらない内容でも,この光ファイバーのインターネットシステムがあったからこそ,完成した課題研究がたいへん多くあり,紙面の都合からその一部しか紹介できないのが誠に残念です。 ▲コンピュータ学習室B(Win95が20台) ▲コンピュータ学習室A(Win2000が40台) この他にも,LL学習室(WinNTが30台),ワープロ学習室(Macが40台)があります。 いずれの部屋からも,インターネットにアクセスすることが可能です。 (1)まず始めにネットワークを主体としたものから紹介します。 ■「ネットワークを利用するソフトウェアの開発」 この課題研究では,メールをやりとりするメールソフトをWebメールとして作成し,実際に運用もして好評を得ました。細かいところまでよく配慮されたソフトです。なお,提出されたレポート(A4で56枚)には,PHPで書かれた全ソースコードが載っていて後輩たちに役立っています。 ■「学校とインターネット〜情報化社会の教育を考える〜」 インターネットやメールを初めて使おうとする生徒達を対象に,「講習会」を行うわけですが,この課題研究では,その際のテキストを作成しました。現物をぜひ見ていただきたいところですが,微に入り細にわたり様々な注意やアドバイスが書かれ,また随所に参考となるホームページが示されているものです。現在でも授業で活用させてもらっています。 (2)次に,ネットワークを主体としたもの以外からです。 ■「列車運行管理システム」 この課題研究は,列車がいかに安全に走らされているかをテーマに,これまでの列車事故から各鉄道会社が学んだことをまとめ,さらにこれからの安全輸送を願ったレポートです。A4で32枚,各鉄道会社や事故を報道した各新聞社のホームページを,コンピュータ室で,開放時間ギリギリまで熱心に調査していました。 ■「環境ホルモンについて」 この課題研究は,サブタイトルに「今こそ現実に目を向けよ,私達と子孫達の未来のために」とあるように,大きな危機意識を持って書かれたレポートです。日米の認識の差や各国からの報告をはじめとして現実の実態にせまり,自分なりの仮説をたてて,それを立証したものです。A4で62枚,参考・引用文献は,なんと275にも及び,そのほとんど多くは「学会誌」という内容です。また環境ホルモンと確認された物質,あるいは疑われている物質のリストアップに,このレポートもWebを非常に多く活用していました。多くの先生方が,高校生のレベルをはるかに超える内容と評価していました。 ■「プレゼンテーション」 この課題研究は,上手なプレゼンテーションとは何かという素朴な疑問から始まり,自身の考え方を展開するうち,民間会社の「コマーシャル(宣伝)」に行き当たり,各会社がどのように自社製品を買い手側に印象付けているかを調べたものです。そして最後には14の会社とメールのやりとりをして,直接さまざまなノウハウがあることに気づいていきます。メールのやりとりの中で,生徒自身が変化していく様子が手に取るようにわかるレポートです。 以上,5つのレポートについて紹介してきましたが,別掲のように,本校の卒業年次の生徒全員が取り組む「課題研究」は,インターネットなしでは考えられない状況になっています。「(座席が)込み合っているコンピュータ室であっても,(回線は)込み合っていない」という状況を確保しなければこれだけの課題研究の成果はなかったと言えます。
前述のとおり,本校では「姉妹校交流」を行っており,出発前の数ヶ月間は現地の方々とメールでやりとりして情報交換しています。もちろん帰ってきてからのメールのやりとりを授業で生かすことも行ってます。 さらに,「公開セミナー」という県内の一般の方を対象とした生涯学習講座を毎週水・金の午後5時10分から開催しており,ここでインターネットを活用した講座も開講しています。
本校では放課後,そして生徒達の空き時間にコンピュータ室での授業がなければ自由に入室してインターネットやメールを使用して良いことになっています。生徒各自のIDという形はとっていません。空いているコンピュータならどのコンピュータでも自由に使用して良いことになっています。
本校では,有害情報に対してはソフト「WebSense」を導入しています。約30あるカテゴリーをひとつひとつネットワーク利用推進委員会で検討し,生徒に対しての基準を作ってきました。 ただ,生徒達から「WebSense」にひっかかったものの,授業や研究のためどうしてもこのページを見たいとの要望があった場合には,「フィルタリング解除申請書」に,その目的やどうしてもこのページでなければならない理由を明記して提出し,ネットワーク利用推進委員会で検討して,解除するかどうかを判断しています。 また,個人情報保護の観点から,著作権に対する意識付けを強く行ってます。ホームページから引用させてもらう際,その方のメールアドレスがホームページに出ている時は,許可をもらうためにメールを出すよう指導しています。
以上,本校の光ファイバーを活用した実践例の一部を挙げてきたわけですが,生徒達は教師側が想像する以上に,確実にインターネットやメールを「道具」として使いこなしている現状を示してくれました。 そしてその陰には,多くの生徒達が一度に同じページをアクセスしても,イライラすることなく表示されるスピードが「学校に供給されていたから」という事実が土台になっています。 これは,例えれば電気や水道と同じです。各家庭に入っている電気や水道でも学校のそれでも,使用している際にイライラすることはありません。しかし,供給されている量を考えればその「総量」はケタ違いのものです。 本研究は,2001年3月をもって終了ということになりますが,研究をすればするほど,そして生徒達の使い方が分かれば分かるほどさらに多くの研究の必要性が出てくるのも事実です。 今後もさらに生徒達の学習環境の整備のあり方を考えていきたいと思います。 多くの先生方の御指導・御助言をお願いいたします。 また,御質問も随時受け付けております。