ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.7 > p22

コンピュータ教育のバグ
おたく,がんばってます?!
−コンピュータ指導者のスタレオタイプ−
 もう10年以上になるだろうか。コンピュータが学校現場へ姿を見せ始めてから久しく言われ続けているのが,コンピュータ教育の指導者不足という問題である。21世紀にはコンピュータの爆発的な普及に対して,必要とされるエンジニアや指導者が,著しく不足してくるという見方が古くからある。では実際,学校現場でのコンピュータ教育の指導者の実像はどうかというと…
なぜコンピュータに関する指導をする羽目に…
 今現在,学校におけるコンピュータ教育の指導者の多くが,コンピュータに関する技術なり知識なりを学んだ方法は独学である。コンピュータに触れ,その有能さに感銘を覚え,これを自らの職場である教育現場に持ち込み,そして活用するという経緯で今に至っている。コンピュータそのものの歴史すら浅いのだから,これの教育利用となると更に短い歴史しか刻んでいない。人類の誕生から今までの歴史を,茶の間から延々と書斎兼子供部屋にあるパソコン本体のモデムまで引っぱってきた電話線だとすれば,コンピュータの教育利用はモジュラージャックの先に見えているピンくらいの長さでしかない。そんな短い歴史の中で,指導者となっておられる方の本音のところは,不本意ながら足をつっこんだ世界から抜けられないということであったり,日々進化していく情報社会に追随するのにアップアップしがちだったりするのである。

 いやむしろ,こういう方々の方が,コンピュータ社会についての矛盾や問題点を少なからず認識しておられるという点では,まだましかもしれない。逆にコンピュータ教育の第一人者として校内で君臨して「コンピュータのことなら私に任せなさい」などと言うタイプの教師は,得てして使用するコンピュータもソフトウエアもこの上なくマニアックであるのに,構わずそれを生徒に押しつけていたりするのである。
コンピュータ教育の理想的な指導者とは
 コンピュータに関する科目を学び始めた生徒がわざわざ先生を呼び止めてよく訊く質問が,「どのコンピュータを買うと一番いいですか」という内容のものである。この質問に対して「某社のこれ」とか「これとこれが付いていてこれが出来る機種」などと答える先生方がまたけっこういたりする。しかしこういう答えの根本は自分にとって都合のいいコンピュータを勧めているだけではないだろうか。この質問に対するコンピュータ教育の指導者として答えは「あなたがコンピュータを使うにあたっての5W1Hで考えてみなさい」というのが最も無難なのではないだろうか。訊かれて知らずば教師の恥とばかりに,あれこれ説明したところで,それは今現在の刹那的な状況を言っているにすぎないので,3ヶ月も経てば一番良いと思われたモノは過去の遺物となっている。

 あたりまえのことなのだが,自分の知りうる状況の中だけで,なかなか最善の指導というのはできないものである。長い歴史を持つ教科・科目ならばここのところは,過去の蓄積が解決の道しるべとなってくるのだが,歴史の浅いコンピュータ教育ではそうはいかない。まだまだ試行錯誤の段階である。指導者として,このあたりを心しておかないと「オタクとしては頑張っておられるんでしょうがねぇ」といわれそうである。
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