ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.50 > p32

コンピュータ教育のバグ
ハッピーホリデー!?
─情報科の矜持─

 最近,アメリカの有名人や政治家は公式の場で「Merry Christmas!」とは言わなくなったという話がある。これは,キリスト教のクリスマスを広く一般に押しつけるのは,宗教・信仰の自由を旨とした理念に反するという考え方らしい。「Happy Holiday!」。確かにこの言い回しをよく聞くようになった気もする。そう言われてみると,この言葉に少数派の人々に対する思いやりも感じられる気がしてきた。

誰が教えているのか
 高校で「情報の先生」として教科指導をしているのはいったい誰なのか。周知のとおり平成15年度に日本全国の高校で教科「情報」が必履修科目として新設された際には,数学・理科・家庭・看護・農業・工業・商業などの現職教員に対して,講習を受けることで教科「情報」の免許を付与し,当座の教員数が確保された経緯があった。すなわち,スタート当初の情報科の教員は,そのほとんどが,いわゆる別の教科の先生がスライドもしくは掛け持ちで指導しているという状況であった。
 情報科が設置されてから10年ほどが経過した現在では,大学の情報系学科などで教員免許を取得してきた純粋な(?)「情報の先生」も,徐々にではあるが増えつつある。ただ,スタート時の状況から,複数の「情報の先生」が校内にいる場合は,もともと別教科の教員だった情報の先生が先輩教員ということになる場合が多く,その先輩の元教科のニュアンスを多分に押し出した指導方針で情報の授業も展開されているケースがある。ただ,複数の先生がいるならば,指導方針などは相談しながら改善していくことが可能ではある。
 一般的な状況としては,開講単位も少ないので校内に専任の情報の先生が一人しかいない高校も多々ある。「一人なら気楽じゃないか」と言われてしまえばそれまでなのだが,現実はそう甘くはない。一般の高校では情報科は大して重要視もされず,その他大勢扱いされているのが現実である。そのくせ,コンピュータがらみの校務は真っ先に回ってきて,ハッピーホリデーどころではないのである。
情報の先生は何を成すのか

 改めて考えてみると「情報の先生」は高校の中でも特殊で微妙な立ち位置にいると言えるかもしれない。いずれにしても,一つ言えることは高校の先生の中では決して多数派にはなっていないということである。さまざまな場面において,肩身の狭い思いをしながら「情報の先生」をしている先生方も多々おられるはずである。しかし,だからといって,指導を疎かにしてよいというわけではない。ましてや,情報の未履修なんてもってのほかである。
 では,どのようにして情報科としての矜持を守っていけばよいのだろうか。やはり教科である以上は,授業である。どんな授業を展開するか,持てる授業デザイン力を生かして工夫を凝らした授業を展開すれば,おのずと確固たる立場を確立できてくるのではないだろうか。もしも,「情報の先生」が校内で辛い思いをしているならば,ここで一度原点に立ち返って指導実践の内容を精査してみるのもよいかもしれない。そのために自分のホリデーが少々短くなっても,結果みんながハッピーになれるはずである。

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