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第2回全国高等学校情報教育研究大会参加報告 ─ポスターセッションに参加して─
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1.初めに |
(1)自己紹介
中央大学杉並高等学校の生田研一郎です。数学科出身で教員生活12年目,私立高校2校目です。現職教員対象の講習会で情報科免許を取得し,情報科の授業を担当して6年目になります。現在は情報・数学の2教科の授業を担当している,二足のわらじ教員です。
(2)学校紹介
杉並区にある全日制普通科高校で,中央大学の附属高校です。男女共学で,2009年度の生徒数は1001名(男子562,女子439)です。卒業生の95%強が中央大学に内部進学しますので,いわゆる「受験校ではない進学校」です。学内成績の優秀な生徒から推薦学部・学科の選択ができるので,受験とは別の勉強プレッシャーがあります。
(3)授業配当
本校では必履修科目として「情報A」を第1学年で1単位,第2学年で1単位を設置しています。第1学年ではコンピュータリテラシーと情報社会の概要を扱っています。第2学年では情報セキュリティ,図記号,情報技術,プライバシー権や肖像権,著作権を扱っています。選択科目として「選択情報」を第3学年で2単位(1講座)設置しています。内容は担当教員によって違いますが,私はHTMLとActive Basicを担当しています。
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2.大会参加に向けて |
(1)大会参加まで
事の始まりは平成20年度東京都高等学校情報教育研究会研究大会の懇親会です。鹿野先生(石川県立金沢二水高等学校)に「発表した方が発表を聞くより得るものが大きい」という理由で日本情報科教育学会で発表することを強く勧められました。また,小原先生(東京都立町田高等学校)には「ポスターセッションは面白い!」と,これまた強く勧められました。
日本情報科教育学会全国大会(九州工業大学)では,「普通教科「情報」における著作権に関する授業実践」と題して分科会(15分発表+5分質疑応答)で発表しました。質疑応答においてはフロアからの刺激的な質問があり充実した時間でしたが,5分間という時間の短さに物足りなさも感じました。ランチタイムに小原先生から全国高等学校情報教育研究大会のポスターセッションの受付に間に合うことを教えてもらい,ポスターセッションへの参加を決めました。
(2)大会の特徴
学会や研究会にはそれぞれ特徴があります。学術的だったり,教育実践報告が中心だったり,ITなどの技術的な話題が多かったり,企業色が濃かったりと実に様々です。本大会は全国高等学校情報教育研究会と関東都県高等学校情報教育研究会が主催の「第2回全国高等学校情報教育研究大会兼第2回関東都県高等学校情報教育研究会研究大会」ですから,教育現場に軸足のある研究大会です。正式名称の長さはともかく,全国から様々な学校で行われている教育実践が報告されました。
また,筑波学院大学情報コミュニケーション学部情報メディア学科山本ゼミの学生たちによるサイン計画も見逃せない特徴です。学生達によって大会ロゴやリーフレット,会場案内などがデザイン・作成・設置され,制作過程の様子はブログで公開されました。途中,インフルエンザによる入構禁止措置というハプニングもありましたが,無事に乗り切っていました。情報デザインは情報科でも扱っている分野ですので,情報教育研究会らしい会場になっていたと思います。
作成過程をブログ※注1でチェックしていて,彼らの頑張りを応援すると同時に「若い力には負けられない」とも思っていました。ポスターセッションの準備にも熱が入りましたが,いつの間にかアラフォーになっていたことも思い知らされました。
▲大会ロゴ
(3)大会テーマ
大会のテーマは『ICT コンパス—あふれる情報の波を乗りこなす—』です。このテーマをどう捉えるかは様々だと思いますが,私は「あふれる情報教育実践の波を乗りこなす」と捉えました。普通教科情報が高等学校において必履修でスタートしてから6年が経過し,日本中で様々な情報教育がなされてきました。パソコン操作教育,情報デザイン教育,問題解決教育,情報科学教育,知財教育,情報法教育,情報モラル教育など,教育実践の種類は多岐にわたっています。
これだけ多くの教育実践があると刺激が多すぎて何から手をつけてよいか分からなくなってしまいます。そこで,ポスターセッションで自分の情報教育実践について意見交換することでこの波を乗りこなすための大きな方向性(≒コンパス)を見極めるきっかけにしようと思いました。
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3.大会当日 |
(1)基調講演
基調講演は永井克昇先生(文部科学省初等中等教育局視学官)による「新学習指導要領と情報科」で,全体的な方向性から「同一年次で履修」の話題まで幅広く取り扱っていました。平成25年度から新しい学習指導要領になり,「情報A」「情報B」「情報C」から「社会と情報」「情報の科学」へと変わります。大会当時(2009年8月24日(月))は,新学習指導要領は公開されていましたが解説は公開されておらず,情報教育に熱心な教員がソワソワしているタイミングでしたから,永井先生の刺激的な話も相まって,多くの参加者が熱心に聞いていたと思います。
また,今回の基調講演では特定非営利活動法人PCY298※注2による要約筆記が導入されました。要約筆記とは講演者の講演内容をその場で文字要約する筆記通訳のことです。一般的に「話すスピード」は「書き取るスピード」より圧倒的に速いので要約するだけでも大変なはずですが,4人のスタッフによるパソコンでの要約作業は余裕すら感じました。視聴覚障害者のための技術だそうですが一般聴衆にも役に立つ技術だと思います。
▲永井先生ご講演と要約筆記
(2)分科会
午後から始まった分科会は6会場に分かれ,各会場で4本ずつの発表がありました。発表会場の広さは高校の普通教室よりやや小さい程度だったので,発表者と聴衆の距離が近くてホットな分科会になっていたと感じました。私はポスターセッション準備の関係で参加できたのは3つの発表だけでしたが,深い内容の発表や刺激的な発表が聞けて満足度は高かったです。
24発表(=6会場×4発表)というタイムテーブルだったので,聞けない発表が多かったのが心残りです。講演内容に関しては全国高等学校情報教育研究会のサイト※注3にPDFで公開されているものが多いので,聞き逃した発表の雰囲気だけでも知ることは可能です。
▲分科会発表の様子
【第1分科会】
- 「専門学科「情報科」と専門教科「情報」」
- 「柏の葉高等学校「情報理数科」生徒発表」
- 「大阪私学教育情報化研究会の取り組み」
- 「ワールドカフェを使った情報共有とアイデア創出」
【第2分科会】
- 「Squeakを使ったプログラミング教育の導入」
- 「体系的な実習実践」
- 「教科情報の授業実践と高大連携の可能性」
- 「絵描き歌を利用した情報伝達の授業」
【第3分科会】
- 「情報デザインの手法を取り入れた情報の授業」
- 「情報デザインの要素を取り入れた教材開発と実践」
- 「平成25年度に向けて高校情報教育の検討〜コンピュータ教育から情報デザインへ〜」
- 「第2回研究大会のサイン計画について」
【第4分科会】
- 「神奈川県高等学校教科研究会情報部会テスト委員会 情報科テスト結果報告」
- 「情報モラルに関するアンケート調査」
- 「小・中の学習内容からみる「情報の科学的な理解」」
- 「CECの調査から見る全国の「情報科事情」」
【第5分科会】
- 「情報の科学的な理解を促す導入的教材と考察」
- 「情報教育と知財教育の交差点」
- 「情報の教科書ここが変!?」
- 「新学習指導要領における情報教育〜中学校との接続〜」
【第6分科会】
- 「ショートムービーパワー」
- 「主体的な情報モラルの育成について」
- 「東京都ICT計画と使用感」
- 「高校生が活躍するパソコン教室」
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(3)ポスターセッション
いよいよポスターセッションです。ポスターセッションとは発表者が割り当てられた場所にポスターを掲示し,来た人に説明したり質問に答えたりする発表形式です。口頭発表と異なり多くのポスター発表が同時に行われ,聴衆の流動性も高いことが特徴です。
発表者は興味・関心のある聴衆を相手にすることになるので,密なコミュニケーションや人脈の広がりなどが期待できます。聞き手は興味・関心のあるポスター発表を選択することになるので,情報収集やコミュニケーションの時間配分は自分のペースで決めることができ,ポスター発表者とコミュニケーションをとることができます。自分の主張を展開したい時は口頭発表の方が良いと思いますが,Face to Faceに重点を置きたい時はポスターセッションに参加することをお勧めします。
なお,分科会と同様に大会のサイト※注3にPDFで公開されているものが多いです。
(4)自分のポスター発表
私のポスタータイトルは「普通教科「情報」における著作権に関する授業実践」です。大会パンフレットには「『著作権』を情報社会の基礎知識と考え,体系的な授業を試みました。特別な設備や機材に依存しない授業ができたと思います。専門的な知識や経験がないところから構築した授業を紹介します。」という説明文が掲載されて,会場では授業構築の流れを説明する予定でした。
ところが,実際にポスター発表をしてみるとそんな時間はありません。聴衆の流動性は想像以上に高かったので,説明に使える時間は長くて1分程度だと感じました。作戦変更です。1分間で「著作権の授業の予習で読んだ書籍の紹介+授業ノートの公開」という重要ポイントだけを説明し,授業に関する質問・疑問などを誘導する形にしました。これによりお互い会話が始めやすくなったと思います。
ポスターに掲示したのはPowerPointのスライド(A4サイズ8枚)だったのですが,これは小さすぎました。離れた所から見ても何が言いたいのか分かるような大きさが必要だったと思います。伝えたいことを1つ(多くても2つ程度)に絞り,大きいフォントのワンポイントポスターにした方がコミュニケーションがしやすいと感じました。
配付資料も「ポスターの縮刷(1ページ)+参考資料(3ページ)」の二つ折りで,内容大盛り状態でした。これも改善の余地があります。表紙をポスターの縮刷版にしたのは正解だったと思います。聞き手はメモをとる手間が省略されて,コミュニケーションに集中できるからです。ただ,参考資料はもう少しシンプルで良かったかも知れません。あまり詰め込みすぎると聞き手が質問する余地がなくなってしまいます。プレゼン内容の余白が相手の質問を誘導し,納得のいくプレゼンテーションになるというテクニックがあります。ポスター発表も同じことが言えると感じました。
ポスター発表に関しては,「1ポスター,1メッセージ,1枚レジュメ,1分説明」が基本かもしれません。第3回大会では今回の経験を生かしたポスター発表をしようと思いました。
▲ポスターセッションの様子
【第1部】
- 「賢い読者・視聴者になる」
- 「マジカル・スプーンの説明書」
- 「特別支援学校の情報教育実践」
- 「スケッチしよう!」
- 「杉並学院の情報教育の取り組み」
- 「プログラミング実習で論理的思考力とコミュニケーション力を高める—情報Cの教材としてScratchを活用する試み—」
- 「企業倫理とコンピューターセキュリティーについて」
- 「学校保健分野におけるTV会議システムの活用事例」
- 「TV会議システムを用いた学校間交流」
【第2部】
- 「校内ポスター作成における情報デザインの指導」
- 「普通教科「情報」における著作権に関する授業実践」
- 「高等学校段階での抽象化概念に関する授業実践」
- 「総合学科における情報Aの実践」
- 「コミュニケーションを重視したプレゼンの授業実践」
- 「「データ解析」の基礎力実践」
- 「InfoPathとSQL Serverを使った教務システム内製」
- 「環境問題を取り入れた教科「情報」の授業提案」
- 「保護者と連携した情報モラル教育」
- 「高文連コンピュータ部の活動」
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4.謝辞 |
第2回大会の企画・準備・運営をしていただいた茨城県高等学校教育研究会情報部の先生方,大会の情報デザインを手がけた筑波学院大学情報コミュニケーション学部情報メディア学科山本ゼミの学生の皆様,そして何より激辛のチェックをしてくれた妻に感謝します。
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