ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.4 > p18〜p19

交流
テレビ会議システムとインターネットの教育利用
大阪府教育センター 指導主事 堂之本 篤弘
adounomo@edu-c.pref.osaka.jp
1.大阪府教育情報ネットワークとは
 近年の情報化の進展にはめざましいものがあり,情報化に対応する学校教育の在り方や具体的な方法を提示するのが困難な状況にある。また,激しく変化する社会を主体的に生きていく児童生徒の育成は,重要な教育課題である。国はこのような課題に応えるため,情報通信ネットワークの整備,全国の学校がインターネットに接続できる環境の整備を目指した施策を展開している。 大阪府教育センター(以下「府教育センター」という)は,このような施策に呼応して,平成9年4月に府内の公立学校等を結ぶ「大阪府教育情報ネットワーク(以下「府教育ネット」という)を整備し,教育内容と教育環境の充実の両面から学校教育の活性化に取り組んでいる。ここでは,府教育ネットとテレビ会議システムを活用した事例を中心にして,ネットワークを活用した実践的な取り組みを紹介する。

教育情報ネットワーク活用イベント概要
▲教育情報ネットワーク活用イベント概要
2.府教育ネット活用イベント
 府教育ネットでは,テレビ会議システムを利用して児童生徒を主体に自由な意見交換を行うイベントを実施している。このイベントの目指すところは次の4点である。

①学年,校種,地域を越えた交流の活性化
②児童生徒が主役となる府教育ネットの活用
③学校を主体とした府教育ネットの活用
④児童生徒の若い感性や発想を教育施策に生かすこと

 テレビ会議システムの特徴を利用して,教育分野へは次のような利用が考えられる。

①遠隔セミナー,遠隔授業
②遠隔学校間ミーティング,コラボレーション
③各種イベント等中継
3.テレビ会議システムの利用実践例
■ 平成9年度
①「夢を語ろう〜21世紀の学校とインターネット〜」(平成10年2月)

■ 平成10年度
②「子ども公開探偵団〜疑問を持とう,答えを探そう〜」(平成10年10月)
③「子ども環境サミット〜教室にインターネットがやってきた〜」(平成10年11月)
④「中退問題シンポジウム」(平成11年3月)

  各イベントでは府教育センターとイベント参加校をテレビ会議システムで結び,その様子は,インターネット(CU-See-Me)を利用して府教育ネットから見ることができるように配慮した。
4.平成11年度の取り組み
 平成10年度までの実践を踏まえ,平成11年度はより継続性のある取り組みを進めている。

(1)遠隔ティームティーチング(平成11年9月〜)

  府教育センターと研究協力校(小学校)とをテレビ会議システムで結び,算数の授業での活動等を系統的に実践・観察・検討することにより,基本概念(数量・図形に関する認識力)獲得過程を解明するための継続的な研究への利用である。この研究は,小・中・高等学校という教育課程の一貫した流れを視野に入れている。研究協力校の教室には,遠隔操作が可能な小型カメラを2台設置し,府教育センターと学校との遠隔ティームティーチングが実現している※注1。

(2)遠隔セミナー(平成11年10月,平成12年1月〜)

  府教育センターでの講義を「高校生のための公開講座」(ホームページ上で募集)として府内の参加希望校(2校)へ公開したり,府教育センターでの研修(4日間)を他会場に送信したりしている。これにより研修受講者は,会場までの移動や交通費が少なくて済み,研修への参加が容易になることなどが期待できる。

(3)イベント的利用(平成11年10月)

  必要に応じてテレビ会議を行っている。府教育センターで実施した文部省の教育情報化推進指導者養成研修においては,タイの小学校の生徒・先生とも交流した。

テレビ会議システム
▲テレビ会議システム

遠隔操作可能な小型カメラ
▲遠隔操作可能な小型カメラ



※注1 本研究の経費は,日本学術振興会科学研究費の補助(基盤研究(C)(2)11680206)による。
5.これからの交流活動
  インターネットの教育利用には,3つのレベルが考えられる。第1レベルは,ホームページなどによる情報の収集である。第2レベルは,情報の発信である。そして第3レベルは,インターネットを通した交流・連携と考えられる。現在,日本の学校は殆どがまだ第1レベルであるが,昨年発表されたバーチャルエージェンシーの「教育の情報化プロジェクト」をみると,数年後には各教室からインターネットが利用できる環境を目指しており,第3レベルの学校も数多く現れてくるであろう。インターネットによる交流・連携にも,時間に関係のあるもの(同期)とないもの(非同期)に分けられる。同期をとる必要がある交流にはこのテレビ会議システムは欠かせない。今後もマルチメディアを利用した教育を研究,実践して行きたい。
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