ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.20 > p32

コンピュータ教育のバグ
そのうちなんとか,な〜るだろう?
—お気楽なシステム管理体制の危さ—
 転ばぬ先の杖とはよくいったもので,いざというときに備えておくというのは,古今変わりない定説である。しかし,いくら杖を用意していても対処できない場合もある。そんなときは,有効な杖に取り替えるか,転ぶ原因のある動作をすべて行わないようにするかしなければならない。しかし,お気楽な方は,転んだってまた起きればいいさとおっしゃるかもしれない。

ブラスターで大騒ぎ

 折しも,2003年夏休みの終盤,インターネットのWebページを介して拡がる新種のコンピュータウィルスで,大騒ぎになった。特に日本の学校関係各所では,9月の新学期を控えて,一段と危機感が高まっていたようである。しかし,それでもなお,8月下旬から9月にかけては,さまざまなトラブルが頻発した。また,トラブルが出なかったところでも,担当者がこの対策に駆けずり回って対応したという例も多い。

 誰がどんな悪意を持って,どういう経緯でこのような騒ぎの種を植え付けたのかは未だ定かではないが,コンピュータシステムの管理は,いざというときにはやっぱり大変だなぁと,今さらながらに再認識することにもなった。さて,そんな中で,具体的に起こったトラブルには,こんな例が報告されていた。
 

この騒動で明らかになったことは何か

 この事態をうけて,管理者はウィルスに対応すべく,早急にOSに措置を施さなければならなかった。その対象は,管理しているネットワークに接続している全てのマシンである。一台でも漏らせば,そこから感染する危険性が残る。今や学校内のコンピュータは,いろいろな部屋にいろいろな用途で使用されていて,校内LANでもあろうものならその大半がネットワークにのっかっている。ということは,その一つ一つにすべて措置が必要なわけで,休業期間で火元責任者が不在の部屋でも鍵を開けて入り込む必要があった。ここの措置をどうしたかでその後の結果に大きな違いが出た。強引にでも入り込んで措置を行った場合は良かったのだが,人間関係などに配慮したために(要するに○○先生が出てこられてから措置しようと待った場合)措置が遅れて,結局感染を広めてしまう例もあったようだ。

 もう一つ問題だったのは,私物のノートパソコンを学校に持ち込んでネットワークにつなげたり,逆に学校のパソコンを夏休みに持ち帰っていたりして,これが感染していて新学期に一斉にウィルスを吐き出したケースである。ネットワーク利用のモラルが守られなかったための悲劇といえる。いずれにしても,この経験は必ずや今後に活かすべきものではないだろうか。もし学校現場で今回の騒動に巻き込まれたのであれば,これを契機にネットワークシステムの管理体制について,ぜひ見直しを行いたいところである。

 ところで,さらに悲惨だった状況としては,セキュリティーに関するポリシーが定められていないばかりか,セキュリティーという考え方の認識そのものについて,管理者自身すら「俺もないけど心配すんな」的に無責任に放置してしまっていた場合である。そのうちなんとか……ならなかったのである。
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