ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.17

巻頭言
 
東京都立武蔵野北高等学校長/東京都高等学校情報教育研究会会長 小原 政敏

 20世紀の終わりになって,パソコンと電話回線を用いた双方向通信技術がインターネットとして急速に発展普及しました。さらに,高度な技術を凝縮した携帯電話の発展普及によって,個人一人一人がいつでもどこでも情報を受信し,また,発信できる双方向通信が可能な時代となりました。

 このような高度情報化時代の21世紀に生きるため,学校教育にも情報の活用能力や発信能力の育成が求められることになり,2003年度から実施される新高等学校学習指導要領において教科「情報」が必履修科目として設定されました。しかし,教科「情報」の実施には多くの課題があります。

 まず第一に,必要台数のパソコンが学校に設置されていることが必要です。東京都の場合,少なくとも1クラスの生徒数に対応できるパソコンを設置してきました。しかしながら,パソコンのハードとソフトの進歩はめざましく,今後もハードとソフトについて更新と充実を図ることが大きな課題となっています。

 第二の課題は,教科「情報」を指導する教員の確保です。文部科学省は3年間に現職教員の免許講習会を実施して,9000名以上の情報免許者を養成したと聞いています。しかし,旧教科の担当や実習に複数教員の配置を考慮するとまだ不十分と思います。教科「情報」は,情報Aで2分の1以上,情報B・Cで3分の1以上の実習が必要とされています。この実習に対応するには,さらに情報担当の助手などの職務を新たに設けて配置する必要がありますが,今のところこのような動きはありません。今後,他教科でも情報機器を活用する機会が増加するものと予測されますので,情報実習助手などの配置をぜひ実現して欲しいと願っています。

 第三の課題は,学校の情報の安全を確保することです。学校は生徒の個人情報など多くの情報を保有しています。外部に個人情報が漏れない対策と,有害な情報が流入しない対策が必要です。さらに,著作権などの保護が大きな課題となります。著作権は情報の中心的な価値であり,情報の安全性の問題と著作権の保護については情報教育の中で十分に理解させる必要があります。

 このような状況のなかで,都立高校の数学・理科を中心として情報教育に関心を持つ教員が集まり,教科「情報」を含めて幅広く情報教育の教育方法の充実と発展を図るため「東京都高等学校情報教育研究会」を平成13年10月に設立しました。この研究会は,都立高校の教員ばかりでなく,情報教育に関心のある学校関係者・企業の関係者も会員とすることにしました。日進月歩の情報技術の教育には,民間企業や大学の協力を得ることが不可欠と考えたからです。この研究会はWebページを中心にして研究会を運営しておりますので,関心のある方はWebページをご覧になってください。WebページのURLは,http://www.tokojoken.jp/です。

 各学校が情報技術を活用して幅広く教育活動の改善を図り,生徒一人一人の情報技術の活用能力,情報の科学的な理解力,情報社会に参画する能力を高め,21世紀のグローバル化した情報社会で活躍する人材を育てるために,情報教育に関心をお持ちの皆さんとともにこれからも努力を続けたいと願っているところです。

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