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教科「情報」テキスト活用事例 |
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著作権についての教科「情報」の模擬授業 |
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1.はじめに |
今年の8月,北海道札幌東商業高等学校において,北海道高等学校情報教育研究会第1回研究大会が開催されました。北海道高等学校情報教育研究会(高橋一雄会長,北海道札幌東商業高等学校長)は平成12年8月に設立された研究団体です。平成15年度から実施される新教科「情報」をはじめとして,さまざまな教科での情報教育の実践について研究しています。
そこで,来年度からの教科「情報」の実施を前に,どのような授業が考えられるのか,模擬授業が行われました。今回はこの研究会で私が行った,著作権を扱った模擬授業について報告させていただきたいと思います。
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2.著作権を扱った授業実践 |
模擬授業は,札幌東商業高等学校の商業ホールで行われました。生徒は札幌東商業高等学校珠算部8名の生徒。その後ろに70名ほどの北海道中から集まった先生方が参観するという,特殊な環境で行われました。なお,今回の模擬授業は,黒板を利用せず,Microsoft社のPowerPointで製作したスライドを利用しました。 |
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3.展開例 |
(1)単元名
「情報の収集・発信における問題点」
(2)本時の目標
「知的所有権についての理解を深める」
印税計算の中から,著作権がどのように守られているか考えさせる。
(3)使用教材
・『情報A』(日本文教出版)
・『IT・Literacy—著作権編—』(日本文教出版)
(4)学習活動
1)導入
「すばらしい音楽や映画に出会うために」
生徒たちは普段映画や音楽を楽しんでいる。そしてこれからも,すばらしい映画や音楽に出会いたいはずである。今回の授業は,生徒たちの身近にある音楽から,著作権がなぜ守られなくてはならないのか考えさせたいと思いました。
はじめに,デビュー前のあるシンガーソングライターの歌を聴かせました。そして,その新人アーティストの作品がどのような権利によって守られているのか考えてみよう,と投げかけました。はじめに本物の歌を聴かせたのは,できる限り生徒たちに身近な問題としてイメージできるように配慮したためです。
2)著作権とは
スクリーンにまとめたものを表示しながら,説明を加えました。そして著作権の種類について,プリントに記入させました。
以下の文章は,実際に模擬授業で生徒たちに伝えた解説の一部です。
「人が創作したものには,必ず権利というものが発生します。それらをまとめて知的所有権といいます。その中でも,思想や感情を創造的に表現したものを守る権利として,著作権が生まれました。著作権で守られるものを著作物といいます。著作物には,歌や絵画はもちろんですが,例えば今ここで私が書いたイラストや,ここで突然踊りだしたまったく新しい振り付けも著作物と呼ばれます。」
「著作権には,大きく分けて3つあります。著作人格権,著作財産権,そして著作隣接権があります。たとえば,この新人アーティストの場合だったらどうでしょうか。もしCDデビューを果たしたら,作詞者,作曲者として著作人格権と著作財産権を持ち,さらに歌っているので著作隣接権も持っていることになります。また,レコード会社もまた,多くの人に伝える役割を持っているので,著作隣接権を持つことになります。また,音楽出版社は著作権を管理したりCD音源を作ったりするので,財産としての権利(著作財産権)と多くの人に広める権利(著作隣接権)の両方を持つことになります。」
「チョサク犬と描かれたイラストの下に記されているコピーライトという文字。この文字は,誰が著作権を持っていて,いつ発行したのか示します。このイラストでいったら,「2002年にTakuya
Aiduという人によって著作権が発生しました」というしるしです。絶対やらなくてはいけないというものではありませんが,こういう表示があった方が相手にわかりやすく著作権について伝えられます。」
3)印税計算
次に著作権使用料(印税)の計算を行いました。今回は,日本文教出版の『IT・Literacy—著作権編—』の28ページ,印税計算の問題を利用させていただきました。
新人アーティストAさんについて,もしCDデビューした時,そのCDの売り上げ枚数に応じて著作権使用料が支払われます。いわゆる印税収入ですが,それがどのくらいなのか計算しました。
○条件
・タイトル:あなた
・作詞者名:Aさん
・作曲者名:Aさん
・曲数:5曲
・5分以上の曲:1曲
・売り上げ枚数:10,000枚
・税抜き価格:2,000円
○解答
・印税6%の計算:2000×0.06=120
・収録曲数で等分する:120×1/6=20
・4等分(音楽出版社50%,作詞者25%,作曲者25%):20×2/4=10
・出荷枚数の80%:10×(10,000×0.8)=80,000
・JASRACの手数料7%:80,000×0.93=74,400
・提供曲数6曲×2(作詞・作曲両方):74,400×12=892,800
・所属事務所と折半:892,800×1/2=446,400
・源泉徴収10%:446,400×0.9=401,760
つまり著作権使用料は,401,760円になります。
ここで大切なのは,著作権使用料が計算できたということではなく,この金額について生徒がどう感じるかなのです。以下はその生徒たちとのやり取りです。
「みんなに聞きたいんだけど。どうですかこの使用料高いと思いますか,安いと思いますか。」
「安いです。」
「私もとても安いと思います。1万人の人々を感動させても,たった40万円です。みなさんがもし,このCDを購入しないで友達から借りて,何10枚もコピーして配ったらどうだろう。身を削る思いで詞や曲を紡ぎだしても食べていけない。音楽活動を続けたくても続けられない。そうなると,結局はみなさんがすばらしい作品に出会う機会を失うことになります。みなさんがアーティストを育てていることを忘れないでほしいんです。」
4)音楽以外の著作物について,インターネットで公開するために注意すべきこと
様々な例を挙げて考えさせました。ここでも生徒たちに積極的に問いかけ,正しいとか正しいくないとか,そういうことよりも,どう感じるかを大切に授業を展開していきました。
ケース① ドラえもんのイラストをコピーして販売した。
ケース② 松前高校から見える夕日をデジカメで撮影してホームページに公開した。
ケース③ 警察のキャラクター,ピーポくんの前で撮影した写真を自分のホームページに公開して自慢した。
▲ピーボ君の前で
「この場合建造物の一部であり,また,キャラクターという著作物にあたります。私がたまたま撮影した場所に写ってしまったという言い訳をしたらどうでしょうか。」
という問いかけに対して,ある生徒がこう答えました。
「自慢しているからだめです。」
「確かに自慢という言葉の中に,この写真をWeb上に公開した者の気持ちがわかりますね。」
こういった授業の中での会話が非常に大切です。
何が正しいとか正しくないということよりも相手の気持ちを考えさせることが情報の授業をやる上で必要ではないでしょうか。
ケース④ 東京ドームで行われたあるイベントに出かけた時撮影した写真を公開して自慢した。
▲東京ドームの前で
著作権は東京ドーム,イベント主催者などにありそうですが,果たしてどうでしょう。これを公開したことで,不当に利益を侵害しているといえるのでしょうか。正しいか正しくないかはっきりしないものも多いのです。ここで押さえておかなくてはいけないのは,あくまで著作権は文化が発展するために作られた権利であるということ。ですから著作物を尊重する気持ちが大切であるということです。
5)著作権の問題を解決するには
最後に,日本文教出版発行の教科書『情報A』57ページのコラム「許諾の勧め」を読ませました。
そして,この授業で扱った新人アーティストの歌を大勢の人に紹介したいと考えた時,どうすればいいのか考えさせました。
「それでは,著作物を利用するために必要なことは何だろう。無断で使用しない,そして,許諾を得ることが大切であるということが書かれています。この作品を誰かに紹介したいんだけど,いいのかなあと迷ったら,著作者に連絡してみればいいんです。自分の中だけで解決しようとしないで,相手とコミュニケーションを取ろうとすることが,これからの情報社会で大切なことではないしょうか。著作権というものは,あれはだめとか,これはだめとか制限するために作られた権利ではありません。もし制限が目的だとしたら,今回のような新人アーティストがその作品を広める機会を失ってしまう。「使ってもいいけどお金を払ってね」のような文化を経済面でバックアップしたり,互いの作品を認め合う世の中にしようと考えられた権利です。そうすることで,みなさんがこれからもすばらしい作品に出会えるのです。」
(5)授業のコンセプト
著作権は創造された文化的作品の利用を規制するためのものではなく,正当に評価し育てるためにあるということを伝えたいと考えました。
今回は,デビュー前のシンガーソングライターを題材に柱を立て,さらに,サブテキストの印税計算を行うことで,自分たちがアーティスト,つまり文化を育てているという感覚を身に付けさせたいと考えました。
著作権について,知識の裏づけをしようと調べれば調べるほど,明確な答えが出ませんでした。そこで,著作権はわかりにくいものだからこそ相手の許諾を取りましょうと,説明しました。わかりにくいものなのだということを理解させ,だから相手の著作物を尊重する気持ちが大切だという結論に持っていきました。そしてコミュニケーションをとることの重要さを伝えました。
生徒たちの授業の感想を,いくつか紹介します。
「著作権はとても難しいものだと思っていましたが,そういうものではなく,まず著作者に連絡してみるというのが大切だということもわかり,楽しい50分でした。これから著作権を考える時がくると思いますが,その時は今日の授業を思い出します。ありがとうございました。」
「今日の授業はテンポがよく,とても考えてみると難しいけど,答えが一つしかないというものじゃないので,自分の意見を持つことができて良かった。そして発言をしたりして相手の意見等がわかり,自分の考え方の他にもたくさんあって面白かった。」
(5)授業のコンセプト
著作権は創造された文化的作品の利用を規制するためのものではなく,正当に評価し育てるためにあるということを伝えたいと考えました。
今回は,デビュー前のシンガーソングライターを題材に柱を立て,さらに,サブテキストの印税計算を行うことで,自分たちがアーティスト,つまり文化を育てているという感覚を身に付けさせたいと考えました。
著作権について,知識の裏づけをしようと調べれば調べるほど,明確な答えが出ませんでした。そこで,著作権はわかりにくいものだからこそ相手の許諾を取りましょうと,説明しました。わかりにくいものなのだということを理解させ,だから相手の著作物を尊重する気持ちが大切だという結論に持っていきました。そしてコミュニケーションをとることの重要さを伝えました。
生徒たちの授業の感想を,いくつか紹介します。
「著作権はとても難しいものだと思っていましたが,そういうものではなく,まず著作者に連絡してみるというのが大切だということもわかり,楽しい50分でした。これから著作権を考える時がくると思いますが,その時は今日の授業を思い出します。ありがとうございました。」
「今日の授業はテンポがよく,とても考えてみると難しいけど,答えが一つしかないというものじゃないので,自分の意見を持つことができて良かった。そして発言をしたりして相手の意見等がわかり,自分の考え方の他にもたくさんあって面白かった。」
(6)反省
1)教材自体の著作権について,著作権法35条にある「学校教育にあたり認められる複製の範囲」と考え,無断で利用した部分がありました。私も含め,生徒に許諾を実際に取る経験が必要だと感じました。次は,許諾を得る体験を授業で取り入れたいです。
2)コンピュータソフトの違法コピーに関する著作権について,まったく触れませんでした。
3)著作権法について詳しく扱いませんでした。 |
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4.教材を利用した感想 |
(1)教科書について
授業の最後に,教科書57ページのコラム「許諾の勧め」を黙読させました。それは,今回の授業では生徒とのコミュニケーションに多くの時間を費やしたので,そこで逆にじっくり読ませることで,生徒たちが自分たちのペースでおちついて考えさせる時間を作りたかったからです。その点で,このコラムは簡潔でわかりやすい内容でした。
(2)『IT・Literacy—著作権編—』について
今回,生徒たちに著作権というものを実感させたいと思い,印税計算を取り上げました。解答を導くにあたり,ヒントとなっている計算式を理解するのに苦労しました。しかし,本当に大切なことは,印税計算を通して,著作権の概念を伝えるところにあるのです。そういう意味では,簡単に答えが導き出せることは,次の授業展開に進む上で扱いやすい教材であるといえます。印税を計算したあと,生徒が一言ポツリと「安いね」とつぶやきました。その時,生徒たちに直感的に著作権というものを感じさせることができた,という手ごたえを感じました。 |
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