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教育実践例 |
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…さん,そこのキーを押してみてください!
−(私)明成高等学校の地域一体型情報教育− |
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1.はじめに |
明成高校は,今年創立123年を迎えた。21世紀の新たな私学教育の方向性を模索し新世紀の高校教育と生涯学習の振興を図り,地域に密着した教育現場を目指している。その中で,平成10年度に文部省(現文部科学省)の「文教施設のインテリジェント化に関するモデル研究」と「新教育課程研究指定校」の指定を同時に受け,本年「次世代ITを活用した未来型教育開発事業」の指定を受けた。
現在,調理科・普通科の2つの科を有し,さらに普通科は6つの類型(健康体育・デザイン・OA情報・生活文化・国際文化ならびに進学)に編成している。
ここでは,平成10年度の研究指定から現在まで試行錯誤を繰り返しながら進めてきた実践内容を紹介する。 |
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2.本校の情報教育 |
本校での情報教育は「OA情報コース」中心に進められ,現在では,商業科におけるところの情報技術(ワープロ)を中心として近年まで行われてきた。平成4年にワープロ専用機(50台)からPCへ移行され,さらに平成9年にPCの更新とともにLAN構築(教室内)を行った。
現在は,校内LAN構築を行い,ネットワークには約150台の端末が接続している。さらに,平成14年には一部のコース生徒がモバイルPCを所有するため,全て可動した場合200台を越えることになる(システム構成については,ほとんどの学校でLAN構築が完了していると考え,省略する)。
教育内容もPC導入とともに変化が現れ,ワープロ主体からアプリケーションソフト(ワープロ・表計算・HP,その他)を活用した授業に変わってきた。大きな転機は,平成10年度の「文教施設のインテリジェント化に関するモデル研究」の指定校になったことである。 |
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3.文教施設のインテリジェント化に関するモデル研究 |
本研究では,時代に即したシステムをある程度保有している教育現場(学校)がその資源を地域に提供し,社会の要請に応えることが必要であるとの認識から,今後さらに加速するであろう「高度情報通信社会」に参加し,地域と学校・親と子などの「学びの共同体」を作っていかなければならないと考えた。そこで,大人も子供もスタート段階から学べるのはパソコンであると考え,PC教室の開放を考えた。
▲教室一杯の受講者
(1)開放事業
このような基本的な視点を踏まえて,本研究では「地域からのコンピュータ関連の開放についての要望」を近隣の町内会に依頼し,「学校施設を有効に開放するための施設設備の充実」と「公開講座のあり方」を見定めるため,アプリケーションソフトを用いた「コンピュータ公開講座」を試行した。
「公開講座」の開催について,本校周辺の3地区の町内会を通して呼びかけをした。その結果,大きな反響があった。開催講座は週末(土曜日,日曜日)を設定し,募集人数を50名程度としたところ,107人の応募があり,コンピュータを学びたいがその機会に恵まれず,近隣の学校で教えてくれるチャンスを待ち望んでいた地域住民が多数存在していることが分かった。
公開講座の試行とはいえ,なるべく多くの方の要望に応えるため,当初計画を修正拡大し,地区ごとに講座開設日を分けて実施したところ参加人数は,680人(講座ごとの平均参加人数は約36人)となった。
▲アンケート(学校開放について)
講座開始時の参加者の実態を把握するために,アンケート調査を行った。受講希望者の7割は女性で,40代が25%,50代が20%,60代が30%であった。
▲アンケート(受講者年齢)
コンピュータ講座の受講経験者は,全体の15%程度であり,アプリケーションソフトを全く使ったことがない人が60%であった。
▲アンケート(講座経験有無)
講座内容はアプリケーションソフトを用いた実習とし,コンピュータ操作の基礎・ワープロ・表計算・ホームページなどの9種類のメニューを提示し,受講者がそれぞれのニーズに基づいて内容を選択する形式を取った。
▲アプリケーションソフト使用の有無
基礎的な内容を希望する人が多かったが,一部に,ホームページ作りや写真入りの年賀状づくりを希望する人も見られた。多彩なニーズに対応するためには,講座の内容を主催者が決めて行う一斉講座よりも,今回のようにメニューを示して選択させるような柔軟なカリキュラムが必要であると思われる。
▲希望講座
講座内容の希望が多岐にわたると予想されたので,できる限り広範囲のメニューを準備し,課題を書いた教材をもとに,各自が進める形を採用した。
公開講座の実施には,教員と地域ボランティアが交代してあたった。各アプリケーションに精通している教員もしくはボランティアを毎回,アプリケーションごとに一人以上は配置し,質問に応じる体制を整えた。その結果,受講者が希望する内容の講座を開催することができた。
(2)生徒の参加
公開講座を通じて,「地域への貢献」と「自分たちの学習の成果を生かす場面」を作る目的で,本校の生徒が指導にあたった。本校の生徒は,各種の検定試験に向けてアプリケーションソフトウェアの操作方法を勉強しており,それぞれの経験を生かしながら,地域住民と交流し,地域と学校の「学びの共同体」への道を模索した。参加した生徒は,数多くのことを体験したようであった。ここで重要なことは,朝の受付を始めとして全ての活動を生徒が主体的に行うことであり,教員は表に出ないことが大切である。講座終了後,参加生徒に感想を書いてもらったのでその一部を次に掲げる。コメントの中には,さまざまな「成果」が記されていた。
・目上の方と話をするときの心がけ,気配り,挨拶などを見直せた。
・相手から言われる「ありがとう」の一言がとても嬉しかった。
・今まで使っていたパソコンの機能の違う使い方を知ることができた。
・数回しか会ったことがない受講生が自分の名前を覚えていてくれた。
・自分が分からないことも,先生の説明を一緒に聞いて覚えられた。
・教える立場にある先生たちの苦労を実感した。
・社会人になるための予備知識を得ることができたと思った。
・わからないところが解決したときのおばさんおじさんの笑顔が嬉しかった。
・また機会があればぜひやってみたい。
・3年生になったらしっかり教えられるようになりたい。
・データを消してしまったり失敗ばかりで,もっとちゃんと授業を聞いておけばよかったと思った。
・明成のパソコンが一般の方も使えるようになったことをたくさんの人が歓迎していることを実感した。
・はじめは失敗ばかりだったけど,何度もいろいろと聞いてくれるので,自分にもとても自信がつき勇気もついた。
・あの歳になっても新しいことにチャレンジして,ずんずん進歩しているのがすごいと思った。
・最初は面倒なものだと思ったけど,今は教えるとともに自分が学んでいくこともできるので楽しく感じる。
・人に教えるためには,もっと自分自身の勉強が必要だと思い知らされた。
・緊張してガチガチだったときに「落ち着いて」と声をかけてくださったので落ち着きを取り戻せた。感謝の気持ちを込めて,落ち着いて分かりやすい説明をしようとした。
・「とっても分かりやすかったわ。ありがとう」と言ってくださったことは忘れない。
▲朝の受付(生徒が行う)
▲受講者と生徒
(3)参加者の意見
参加された方々にも今後の開放講座の在り方についての意見や要望・感想を率直に聞いてみた結果,次のようなコメントをいただいた。
▲学校開放について今後の希望
・小さなことでも自分でできたという喜びを皆さんから頂きました。
・生徒さんはみんな性格のよい方ばかりで,楽しみながら勉強できました。
・明成高校のイメージも変わってきます。もっとみなさんに知ってもらうといいですね。
・わからなくなったとき常駐してくれる人がいて,ここにくればいつでも教えてもらえるようになるといいな,と思います(ぜいたくなお願いですが)。
・今回できなかったもので,まだやりたい課題がたくさんあります。
・今回の講座は,歩いていける所にやってみたい講座があるという点で応募しました。
・また企画して,好奇心旺盛な地域住民に有効な時間をくださいませ。
・休日返上でご指導してくださる先生や生徒さん,ボランティアの方方に感謝。
・学校に対する認識が少し深まったと思います。
・ある程度長期の講習を希望します。費用はかかってもいいです。
・明成高校,本当にすばらしい学校だと,近所にいながら今改めて感じています。
・(生徒さんたちに)何か私たちで協力できることがあれば声かけしてください。
・いろんなメニューを用意して異なったソフトについて教えていただき感謝します。
参加者および生徒の意見を通して生徒の得たものは大きく,特に,「目上の人とのふれあい」・「人に教える難しさ・喜び」等直接授業では学べないものを学んだ。
「開放講座を引き続きやってほしい」,「もう少し長い時間開放してほしい」という意見が多数寄せられた。自由記述欄に寄せられたそのほかの意見・要望の一部を次に掲げる。 |
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4.総合的な学習と情報教育 |
「文教施設のインテリジェント化に関するモデル研究」は単年度のため,平成10年3月で終了となったが,開放講座については,「総合的な学習の時間」の中で現在も引き続き行われている。
PCを介して大人との「会話」・「共同の作業」を行うことにより,より生活に密着した実践的な経験をすることができ,問題解決にあたっても教員以外(一般社会)の考え方を直接体験できるほか,自らが指導する立場に立つことにより得た経験は生きた学習として十分価値のあるものと考える。
(1)ホームページ作成
平成11年度には,参加された地域の方々とグループを組み,思い思いにホームページの作成に取り組んだ。総合的な学習の時間を利用し,ハガキにより参加希望を募り,希望者に集まってもらい「総合的な学習の時間」の趣旨説明を行った。(本校では「総合的な学習の時間」2単位の設定を前期の金曜日に4時間を集中し,3校時〜6校時までとしている)。
3年生を中心として一般参加者と1・2年生でグループを作り,(パソコン指導は,3年生を中心に行う)練習課題として,ビジュアル的要素を取り入れたポスター作りを行い,インターネットを使ったホームページの説明等をへて作業に取りかかった。とかく教員主導型に慣れている生徒はなかなか取りかかるまで時間を要したが,参加者と協力しホームページの内容を考えグループで作業内容を分担し,データの収集,作成に取りかかっていた。
資料の収集から作成まで,参加者の方々と多くの会話を持つことができたと思う。
▲作品の構成を考える
▲作品(お菓子アラカルト)
▲作品(おいしいコンビニ再チェック)
(2)福祉施設とのテレビ会議
平成12年度には,「総合的な学習の時間」での経験を生かし,福祉施設(養護老人ホーム)とのテレビ会議を計画した。昨今同システムを使用しての国際交流等はさかんに行われているが,これは双方向ともに機器をある程度操作できることが前提となっているが,今回は養護老人ホームということもあり,機器の扱いが不慣れな方々を対象に行うこととなった。これは,今後加速するであろう「福祉」と情報の接点を見いだし,情報機器を通し生徒がいかに福祉社会へ参加できるかを体験させる目的もあった。
身体に障害を持つ方々に対して,いかに社会参加(情報化社会)の手伝いができるかが焦点となった。特に,耳に障害を持つ人,目に障害を持つ人に対して配慮した機器構成を考え,本校より生徒をホームに派遣した。通常のテレビ会議システムに加え,リアルタイムで意見をキーボードより入力し映像として映し出すことでインターネットを使った新たな交流方法を見いだすことができたと考える。
テーマは「お年寄りから見た今の高校生」として2日間にわたり意見交換が行われた。「今の高校生の制服をどう思うか」・「茶髪,ピアス等のファッションについて」・「昔の遊びは何をしたか」・「もしも現在高校生なら何をしたいか」等々の意見交換が行われた。
このテレビ会議を通して生徒は,情報機器の新たな活用方法と情報機器を使った社会参加のあり方を学校教育とは違った面から学んだ。
▲ホーム側
▲質問をリアルタイムでタイピング
▲障害者に配慮した機器
▲学校側 |
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5.まとめ |
情報教育の中で,今後コンピュータ操作からワープロ・表計算・データーベース・プレゼンテーション・ホームページと言語からアプリケーションソフトを使用した授業が展開されていくであろう。また,日々発展する情報機器を使った授業も同様に展開されると予想される。
しかし,これではコンピュータと情報機器の一部のハード活用に過ぎないという批判が出ている。
重要なのは,活用する態度や心構えと共に,今後どのような場面で,どのような状態の時にコンピュータを代表とする情報機器等を利用していくかを生徒に理解させることが大切なのではないだろうか。
「コンピュータを学ぶ授業」ではなく,「コンピュータを活用する授業」がより大切になってくるのである。
今回紹介させていただいた本校の「開放講座」・「総合的な学習の時間」・「福祉施設とのテレビ会議」は,情報教育の試行実践にしか過ぎない。今後,ハードの発達と共に多種多様なソフト面の取り組みに努力していかなければならない。 |
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