ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.10 > p24

コンピュータ教育のバグ
明日への扉の鍵
−コンピュータルームの管理−
 日本の安全神話は,最近すっかり崩れ去ってしまったようで,電車や駅のホームでも,閑静な住宅街の鍵のかかった自宅の中でも,人里離れたひなびた村の一軒家でも,そしてあろうことか学校の中でさえも,危ない事件が次々と起こっている。こうなってくると,日本でもとうとう自分の身を守れるのは自分しかないという,自己責任時代がやってきたのかと感じてしまう。ならば,せめて学校の中でくらいは安全・快適に過ごせるべきなのではないか。しかし,学校という空間の管理は何かにつけ,なかなかに難しい。
コンピュータルームを誰が管理するのか
 学校においてコンピュータを管理するという場合,最大の課題は,コンピュータを設置した場所についての管理の問題である。学校でコンピュータを使用する空間の設定としては,概ね2種類に分類できる。
 一つは,独立した教室に多数のコンピュータを設置して,コンピュータルームとして運用する場合。もう一つは,コンピュータそのものをいろいろな教室に分散配置するか,授業によってコンピュータ自体を移動させて利用するなどしてコンピュータを既存の教室に持ち込む場合である。
 どちらかというと一般的な,コンピュータを一か所にまとめた場合,どんな問題が起こるのだろうか。おそらくは,コンピュータルームを誰が管理するのかということと,どのように子どもたちに使わせるかということに集約できそうである。
 今までのいわゆる特別教室であれば,放課後や休み時間に子どもたちが使えるように自由に解放したところで,子どもたちが勝手に化学の実験を行ったり,調理実習をしたりということにはならない。しかし,コンピュータの場合,子どもたちがある程度は自由に利用できる時間があってもいいのでは,という意見が当然のようにでてくる。次に,コンピュータ,殊にネットワークを利用するなら,いくら自由にといっても,先生が付き添う必要があるのではという議論になってくる。つまり,誰の責任で利用させるのか明確にしようというわけだ。付き添いも,数日ならともかく,年がら年中はちょっと難しいとおっしゃる先生も多いはずだ。こうなると,最悪の場合,授業以外は閉鎖なんてことになりかねない。
利用のルールとマナーについて
 さらに,子どもたちにどのように利用させるかという際に,「インターネットなども自由に利用して,いろいろ調べたり,研究したりしてみましょう。」というだけでは,いささか不安である。ネット上に潜む闇の部分に触れないとも限らないからである。かといって,ずらずらとURLを記述したプリントを配布して,「この中から調べよう」では意味がない。有害サイトを排除するフィルターをかけるなどして努力はしてみるのだが,完璧なものは存在しない。となると,決まったソフト以外は使用禁止,インターネットも禁止なんてことになって,結局は何もできなくなってしまう。
 コンピュータを利用する際のマナーやルールについては,最終的には使用者自身の自覚でしかない。とすれば,ここのところを上手く理解させ,実践させる必要があるといえるだろう。現場では,そうそう理想論ばかりは通用しない。しかし,うまく運用できないからといってコンピュータルームの鍵をかけてしまうことは,明日への扉の鍵をかけていることにもなりかねない。
前へ    
目次に戻る
上に戻る