単元との関連について
本単元は、音楽科と国語、図画工作科、そして生活科の教科横断的な学習である。2年生は音楽を聴くと体が自然に動き出し、体全体を使って音と一体化する。本単元は「音」をきっかけに子どもたちの様々な感覚に働きかけながら楽しく活動する中で、音の世界に自然に入り込んでいけるように設定した。また、ICTや『デジタルアートカード』を取り入れ、協働性を高めたり、学習の効率化を図ったりしている。 『デジタルアートカード』との関連は、『デジタルアートカード』を使うことによるイメージの可視化と、友達との関わりを増やし楽しくイメージを共有するためである。子どもたちは、五感を使って生活の中の音やアートカードから音を聞き、そこから感じた音を自分なりにイメージして形や色、言葉、音やリズムに表す。そこで感じた音を身近なものから楽器をつくって表したり、アートカードに合わせて演奏会を開いたりしながら、自分自身で音やリズムを発見する喜び、そこからイメージを広げて楽器づくりをする楽しさを味わうこととなる。
材料・用具・ICT機器
『デジタルアートカード』、 プロジェクター、スクリーン、マイク、スピーカー、TV、教師用PC、児童用タブレットPC、楽器づくりの材料など
アートカードから聞こえてくる音を想像し、言葉で表すことを楽しもうとする
知識及び技能
日常生活に必要な国語の知識や技能を身につけるとともに、我が国の言語文化に親しんだり理解したりすることができるようにする。
思考力、判断力、表現力等
順序立てて考える力や感じたり想像したりする力を養い、日常生活における人との関わりの中で伝え合う力を高め、自分の思いや考えをもつことができるようにする。
学びに向かう力、人間性等
言葉がもつよさを感じとるとともに、楽しんで読書をし、国語を大切にして、思いや考えを伝え合おうとする態度を養う。
『デジタルアートカード』から感じ取った音のイメージを広げ、楽器づくりを楽しもうとする。
知識及び技能
自分の感覚や行為を通して、形や色などに気付くとともに、体全体の感覚などを働かせ、表し方を工夫して、創造的につくったり表したりすることができるようにする。
思考力、判断力、表現力等
造形的な面白さや楽しさ、表したいこと、表し方などについて考え、楽しく発想や想像をしたり、身の回りの音や自然物、作品などから自分の見方や感じ方を広げたりすることができるようにする。
学びに向かう力、人間性等
楽しく表現したり鑑賞したりする活動に取り組み、つくりだす喜びを味わうとともに、形や色、音などに関わり楽しい生活を創造しようとする態度を養う。
生活の中から身の回りの音を感じ取り、音のもつ様々な要素に気付き、楽しく音楽に関わろうとする。
知識及び技能
曲想と音楽の構造などとの関わりについて気付くとともに、表現を楽しむために必要な歌唱、器楽、音楽づくりの技能を身に付けるようにする。
思考力、判断力、表現力等
音楽表現を考えて表現に対する思いをもつことや、曲や演奏の楽しさを見いだしながら音楽を味わって聴くことができるようにする。
学びに向かう力、人間性等
楽しく音楽に関わり、協働して音楽活動をする楽しさを感じながら、身の回りの様々な音楽に親しむとともに、音楽経験を生かして生活を明るく潤いのあるものにしようとする態度を養う。
1年生と関わりの中から上級生としての役割について考え、1年生を楽しませるための方法を考えることができる。
知識及び技能
活動や体験の過程において、自分自身、身近な人々、社会及び自然の特徴やよさ、それらの関わり等に気付くとともに、生活上必要な習慣や技能を身に付けるようにする。
思考力、判断力、表現力等
身近な人々、社会及び自然を自分との関わりで捉え、自分自身や自分の生活について考え、表現することができるようにする。
学びに向かう力、人間性等
身近な人々、社会及び自然に自ら働きかけ、意欲や自信をもって学んだり生活を豊かにしたりしようとする態度を養う。
【国語科】『デジタルアートカード』から聞こえる音を言葉にしよう
3人グループにタブレットPCを1台ずつ配置し、TV画面に教示用PCを映す。『デジタルアートカード』は音が想像しやすいカードを予め30枚選んで、カスタマイズしておく。(日本画、洋画、風景画、抽象画、立体をバランスよく選び、声ではなく音に焦点化できるものを抽出した。)また、一人ひとりがタブレットで使用できるグループごとの共有ノートを準備しておく。 「授業で使用した作品リスト」はこちらから(PDF)
【生活科】手づくり楽器演奏会をしよう
スクリーンにアートカードを映し出し、スクーリーンの後ろで楽器を演奏する。小さい音も拾えるようにマイクを使用し、スクリーンの前方から音が出るようにスピーカーを設置する。
1.学習全体の流れ(8時間扱い)
1.「潤い自然園」に出かけて生活の中の音を感じよう。(音楽科・1時間)
2.アートカードから聞こえる音を言葉にしよう。(国語科・1時間・『デジタルアートカード』、タブレット使用)
「エプソンの競馬(トラックの馬) 作:テオドール・ジェリコー」を鑑賞して書いたオノマトペ
3.身近な材料から手づくり楽器をつくろう。(図画工作科・2時間)
4.「手づくり楽器演奏会」の計画を立てよう。(生活科・1時間・『デジタルアートカード』使用)
5.「手づくり楽器演奏会」の準備をしよう。(生活科・2時間・『デジタルアートカード』使用)
6.「手づくり楽器演奏会」をしよう。(生活科・1時間・『デジタルアートカード』使用)
2.『デジタルアートカード』の使用場面
1. 【国語科】「『デジタルアートカード』から聞こえる音を言葉にしよう」 ・3人1組でグループになり、親を決める。 ・親になった人が作品を1枚選ぶ。 ・作品を大きくして、それぞれのタブレットでじっくり見る。 ・想像した音をタブレットの各グループの共有ノートに書き込んでいく。 ・共有ノートがいっぱいになったら、親の左隣の人が次の作品を選び、想像した音を3人で書き込んでいく。(これを順番に繰り返す) ・各グループで十分にアートカードから音を感じ取り言葉に表したところで、学級全体で各グループのノートを共有する。 2.【生活科】「手づくり楽器演奏会」の計画を立てよう・準備をしよう 1年生を招待して、楽しく発表会ができるように計画を立てる。自分たちの楽器にあったイメージのアートカードを選んだり、進行に必要な役割分担を考えたりする。また、作品の題名を考えたり、アートカードを見ながらイメージに合ったリズムや強弱、速さを意識して音楽を楽しくつくったりして、演奏会の準備を進める。 3.【生活科】「手づくり楽器演奏会をしよう」 『デジタルアートカード』の作品をプロジェクターで大きく映し出し、スクリーンの後ろで楽器を演奏する。演奏が終わったら楽器を持ってスクリーンの脇に出てきて、音に関するクイズを1年生に出題する。
楽器演奏の音楽づくりでは、リズムや速さ、強弱の組み合わせを意識させて音楽をつくる。最初に鑑賞したアートカードから感じた音にとらわれず、そこからさらに発想を広げ新たな世界をつくりだすイメージで授業が展開できるように支援する。
それぞれの教科の目標に沿って学習評価を行うようにする。その際、他教科とのつながりを意識しすぎて、その教科の本来の目標や、児童実態と活動にずれが生じてしまわないよう留意する。また、子どもが活動の中でその行為に価値を見つけだし、自己調整しながら主体的に活動している姿を見取る。
2年生の学習で、「音」を使った学習は各教科で既に行われている。今回、「音」を中核において、それぞれの教科の特性を生かしながら、教科横断的な単元として扱った 。実施してみると、思った以上に、他教科との横断がとても滑らかになり、子どもたちは最後まで夢中になって活動することができた。 要因の一つは 、子どもたちのイメージした形や色、音やリズムのイメージが『デジタルアートカード』を通して容易に可視化され、学習を共にする友達とイメージを共有することができたからだである。また、『デジタルアートカード』は、直感的に見たい作品を選ぶことができる。またデジタル化していることで拡大して表示し細部まで見ることができるので、子どもたちの活用方法を広げるきっかけともなった。 もう一つは、アート作品を取り入れることによって、子どもたちが多角的に考え、活動の幅を自ら広げていったことである。アートによって、授業の可能性を広げることはできる。 アート作品は図画工作の鑑賞の授業のみならず、どの教科においても素晴らしい教材となるだけの力をもっていると思う。