ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.6 > p22〜p23

コンピュータ教育のバグ
生徒の顔が見えない教室
−コンピュータ室の問題点−
 「全ての学校にコンピュータを!」ということでやってきたマシンは,多くの学校の場合,ひとまとめにしてコンピュータ実習室というような部屋でもって運用されることが多いようだ。コンピュータをのっけた机がすらりと並んだコンピュータ教室で,いざ授業となって生徒を前に始めてみると,どうもしっくりいかないという経験をお持ちの先生方も多いのではないだろうか。
ディスプレイの背面がずらり
 通常の授業を行う教室では,生徒は全員前に向かって机を並べている。同じ配置でコンピュータ実習をおこなうとなると,教師はディスプレイのお尻を眺めて授業をすることになる。現状では,コンピュータ実習をするためにコンピュータ室に生徒を入れて着席させると,よほど座高が高い者でない限りは,全く顔が見えない状態で授業をスタートすることになるのである。

 およそ教師というものは,無意識のうちにも生徒のちょっとした表情などに反応しながら授業を進めているので,顔が見えないというのはちょっとやりづらい。そこで,机間巡視をさかんにおこなってフォローして回ったり,担当の教員数を増やすことで対応してみたりと,なかなかに苦労しているのが現状ではないか。しかも,コンピュータ室の机というのは,マシンを置く関係で通常より大きい。しかも配線ケーブルや電源コードがたくさん出ていたりもする。しかし,教室の大きさというのは独立したコンピュータ実習用の建物でもない限りは普通教室と大して変わらない。実習中の机間巡視の際に,狭い隙間を通ろうとしてコードを踏んづけて,大事なところで電源を落としてしまったなんていう経験のある方も少なくないはずである。
そこで教師は考えた
 なんとかならないかということで,色々と考えられているようである。よくあるのが,生徒の机を先生から見て横向きに並べる方法である。こうすれば,幾分見通しも良くなって,生徒の手元の様子も見やすくなる。ところが,縦のモノを横にしたわけだから,教師は生徒の横顔の並んだ状態を見ることになる。あたかも子供の頃にやった,母親の鏡台の三面鏡の左右を向かい合わせにして顔をつっこんだときのような景色である。
では,実現は難しいのかもしれないが,もしも十分な予算さえあればと考える。コンピュータ室を広くしつらえて,例えば調理実習や理科の実験の時のように数名のグループ毎で着席させるとか,多角形や星形の配置に机をくむとかいう方法もある。ケーブル類をフリーアクセスで床下に埋設すれば完璧という寸法だ。しかし,果たしてそううまくいくのだろうか。根本的に広すぎる教室というのは生徒を掌握しにくいので,実習には適さないようにも思う。見通しはいいけれど遠すぎて生徒が何やってるのか見えない,なんてのは笑い話にもならないではないか。

 コンピュータを導入する段階から,コンピュータ室の机の配置まできちんと配慮してあるのが本当なのだろう。しかし,現実問題としては,今,学校にある教室のどれかを,何とかやりくりしてコンピュータ室にするというのが一般的だろう。では,その机の配置をどうするか,スペースの関係もあいまってなかなかの難問なのである。だからといって,机のせいだけで,せっかくの実習をうまく展開できなければ,いくら生徒の顔が見えなくても,教師として顔向けできないではないか。
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