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海外の情報教育の現場から |
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ヨーロッパにおける情報教育の現状 |
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ドイツ国立情報処理研究所 イレーネ ラングナ(Irene Langner) |
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ドイツにおけるインターネットを活かしたプロジェクトウィーク |
1.多様な学校制度
ドイツは日本同様6歳から義務教育が始まります。その修業年限も9年間と同じです。しかしながら4年間の基礎教育の後,大きな決断を親は迫られます。職業コースの学校へ入れるのか,あるいは進学コースの学校にするのかです。職業コースにはハウプトシューレ(5 年間)か レアルシューレ(6年間)がありますが,これは職業教育の基礎固めともいえます。もちろんこれらはわずか1回の選択だけでなく,課程途中から他のコースへ移ることもできます。進学コースにも編入可能です。進学コース,アカデミックコースとしてギムナジウム(9年間)もあります。このコースを選択すると,かの有名な“Abitur”というテストを受け,常に成績が記録されます。このテストの累積結果によって大学入学の可否が決定されます。
2.連邦制を活かした教育制度
ドイツの教育制度はフランスや英国と異なり,政府中央の影響が強いものではありません。文化や教育の問題は中央だけでなく,16の連邦の教育省との協議によって決定されます。
どのような学校が必要とされ,建設すべきかなどの行政的な問題から,教科の内容に至るまで教育関係の課題が協議されます。しかし基本的な政策は州単位で決定されます。例えば,国全体で学校の新学期が秋に始まり,春に終わるという取り決めがあっても,ある州では8月に始まったり,また他の州では9月に始まったりします。
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ハウプトシューレ(基幹学校) Hauptschule
・職業に就くための学校 ・9〜10年で卒業,職業に就く資格ができる
レアルシューレ(実科学校) Realschule ・卒業資格は10年でとれる ・卒業生は銀行などの商業関係,中程度の公務員職などに就職
ギムナジウム(進学学校) Gymnasium ・13年生で,アビトューア(高校卒業)の資格をとると大学へ進学することができる ・卒業資格をとるためには11年,12年で決められた成績に達しなければならない
ゲザムトシューレ(総合制学校) Gesamtschule ・3つのタイプを1つにした学校 ・10年終了すると,他の学校と同様の資格となる |
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▲ドイツの教育制度
3.問題解決学習
特に高校では教科の指導を通して教育がおこなわれますが,それだけでなく総合的な学習,問題解決学習にも重点が置かれています。
1960年代,70年代の「教育改革」は教科を超えた学習をを可能にしたのです。私立高校であっても同様な取り組みが見られます。ほとんどの公立学校においても,プロジェクト・ウィーク,プロジェクト・デイというものが設定されています。普通教科の代わりに,すべての生徒が自分の設定した課題や問題に主体的に取り組むことを保証しています。
事実ヘッセン州においては新学期から3週間の課題研究にとりくむことが実現しつつあります。13年生から取り入れ,12年生,11年生へと拡大していく予定です(日本の高校生に当たります)。もちろんこの「研究課題」はそれぞれの学校で決められ,トップダウンによるものではありません。
▲1998年6月のプロジェクトウィークでのマルチメディアプロジェクトの様子
(http://home.tronet.de/gesamtschule/projekte/)
4.インターネットと教育プロジェクト
このような取り組みはインターネットの教育普及にとって絶好の機会でもあります。多くの教師はこの時とばかりにインターネットの基礎的な学習や,ホームページの作成,どのようにこの時間を使っているかを伝えるwebニュースペーパーの発信に取り組んでいます。
この内容を伝えるページとして,ボンの近郊にあるトロイスドルフのゲザムトシューレのページを紹介します。残念ながらほとんどがドイツ語で記述されていますが,画像も多く配置されており,様子をうかがい知るには十分かと思います。また,関連あるサイトも紹介しておきます。
◆ドイツとアメリカとの間でのネットワークを通したプロジェクトを進めるTAKのWebページ (http://www.tak.schule.de/)
◆日本の学校も参加できるヨーロビアン・スクールズ・プロジェクト(ESP)のWebページ (http://www.esp.schule.de/) |
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ヨーロッパにおける教育用サーバ —教師のための情報提供— |
1 拡大充実を見せる教育情報提供
5,6年前までインターネットの教育利用を試みた教師にとって,参考になるインターネットの教育事例が見つからず,困惑していた状態でした。
しかし,この分野における発展はめざましく,今日すべてのヨーロッパ圏の国々には教師にとって役立つ教育関連情報の提供を行うWWWサーバが設置されています。中には教育省(文部省)の運用するもあります。今回はこの各国のサーバについてお話ししたいと思います。
それぞれのサーバのURLを紹介しておきますので,是非訪れてみてください。
2 イタリア
イタリア教育省は教育用サーバとしてBDPを運用しています。その内容は,イタリア,ヨーロッパ圏からの教育情報,各省,研究所からのニュース,各種データベースへのリンク,有用なサイトへのリンク,教育に関する法律,ソフト,ハードに関する情報を提供しています。
またメーリングリスト,ディスカッショングループの運用,ビデオカンファレンス,チャットなど多くの情報も備えています。大半はイタリア語で記述されています。
◆BDPのWebページ(http://www.bdp.it)
3 スウェーデン
スウェーデンの「スクール データ ネット」(SDN)の教育情報も多様です。教育上有用なサイトへのリンク,インターネット機能の紹介,イベントカレンダー,プロジェクトへのリンク,有識者へのリンク,電子辞書へにリンク,ビデオカンファレンス,学校のアドレスなどが紹介してあります。
◆SDNのWebページ(http://www.skolverket.se/skolnet/) ◆LUNDのWebページ(http://lankskafferiet.skolverket.se/)
4 英国
イギリスでは,英国科学技術庁が英語で有用な教育情報についてのサイトの登録などの管理運用をおこなっています(BECTA)。
この企画は教育学習網プロジェクト(National Grid for Learning)にリンクして運用されています。
◆BECTAのWebページ(http://www.becta.org.uk/becta_home.cfm)
5 ドイツ
ドイツにおいては,国の運用するドイツ教育サーバ(DBS)があります。もちろん各州は独自の教育用サーバを運用しています。ノースラインウェストファリア州のラーンライン(LEARN-LINE)も一つの例です。
ドイツでは,各州で独自の教科内容,カリキュラムを持っているため,州別のサーバが必要とされ,設置されています。
◆DBSのWebページ(http://www.zum.de/) ◆LEARN-LINEのWebページ(http://www.learn-line.nrw.de/)
6 個人サイトと公的運用
公的機関の運用によるサーバ設置以前は,個人の努力による情報収集サイトがありました。ドイツにおけるZUMもその一つですが,先生たちが時間を見つけ作り上げたサーバです。
もちろんこのようなサイトも,インターネット文化には重要かつ必要です。しかし,公的なサーバはその情報の豊かさゆえ,教育情報の提供の面で重要な機能といえます。この公的サイトは,人々の関心を集め,利用も増大しつつあります。 |
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イレーネ・ラングナ/ドイツ国立情報処理研究所研究員 研究分野…日本とドイツにおけるインターネットの教育利用 / 日本をたびたび訪れ,日常的に大学,現場教員と連携をとりつつ研究を推進している。 |
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