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教育実践例 |
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情報デザインの要素を取り入れた「課題研究」の実践例 ─スパゲティをどこまで伸ばせる?─ |
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1.はじめに |
本校は平成20年4月に単位制の海洋科学科に学科改編し,校名を三崎水産高等学校から海洋科学高等学校に改めて開校した。以前の4学科(漁業生産科,食品産業科,水産工学科,情報通信科)体制とは異なり,ほとんどの専門科目が選択科目であるため,「学び」の軸を見失う危険性がある。そこで,教育課程の枢軸として「課題研究」を2年次に1単位,3年次に3単位設定し,本校での学びの「幹」としている。
2年次の「課題研究」(1単位)では,課題の見つけ方や研究の方法などのメタ学習を,主としてグループワークを中心に進めるように計画している。グループワークでは,いろいろな情報を「見える」形にする『情報デザイン』の基本的要素のひとつである「情報伝達やコミュニケーションの要件及び手法」が効果的であると考えて,指導計画に取り入れた。
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2.2年次「課題研究」の計画 |
次のようなグループワークを通して,課題を見つける「視点」を養い,研究を進める方法を体験的に学ぶ。
1.課題研究への導入
「スパゲティをどこまで伸ばせる!」と題してスパゲティカンチレバーを行い,この科目の目的を説明する。
2.情報を読み解く
図書室や新聞・ニュースなどから情報を収集し,読み解かせる。
3.意見や発想をまとめる
集めた情報をもとに各自の意見や発想を出し合い,まとめさせる。
4.体験学習
視野を広げるために,夏季休業中に校外での施設見学・インターンシップ・ボランティア活動などからいずれかを行うことを義務付け,そのための計画と準備,体験の発表を行う。
5.課題発見・問題解決
短時間で行える実験(例:PaperTower,Egg Dropなど)を行い,問題解決のサイクル(やってみる→振り返る→気付く→考える→改善する)を体験的に学ぶ。
6.3年次のテーマ探し
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3.スパゲティをどこまで伸ばせる? |
新年度が始まった4月早々に,「課題研究」の導入としてスパゲティカンチレバー(Spaghetti Cantilever)を実施したので,その実践を紹介する。
(1)スパゲティカンチレバー
茹でていないスパゲティをテーブルの端からつないで片持ち梁にし,その水平距離を競う(図1)。
▲図1 スパゲティカンチレバー
(2)この単元のねらい
カンチレバー(片持ち梁)は,本来は材料力学の基本問題だが,ここでは力学の定量的な検討を行うことを目的としていない。
スパゲティは自重で下方向にたわんだり,バランスが悪いと根元で折れたりするが,「どのようにすればスパゲティを水平方向に長く伸ばせるか」を次のステップで実施する。
- グループで検討する。
- 実際にやってみる。
- どうすればもっと記録が伸びるかをグループで検討する。
- 改善策をやってみる。
- 1〜4を各自で振り返る。
- 各自の振返りをグループとしてまとめる。
ある課題を解決する上で,「こうすればうまくできる」と思っていたことが予想に反していたときに,グループで協力して新しい発想を取り入れたり,別の視点で課題を見てみたり,各自の意見をまとめたりする必要が出てくる。
楽しそうな活動の中で研究の要素である【予測,実験,検証,再実験】を体験し,振返りを行うことによって学びにつなげることをねらいとしている。
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5.リフレクション |
(1)はじめから「班で振返ろう」だと,雑談に終わってしまう可能性があるので,各自が書いた振返りの付箋紙を持ち寄って,類似した意見を集め,振返りシート2に班としてのまとめを行う。
(2)トライアルとコンテストの記録,各自の気付いた点などを個人まとめに記入し,提出する。
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6.おわりに |
今回はこの原稿の提出後にリフレクションを行うので,その紹介ができないが,体験を主として行うこのような授業では,リフレクションが最も大切だと考えている。
「スパゲティを使って面白いことをやった」というだけで終わっては,学習として定着しないからである。
「スパゲティを何センチ伸ばしたか」を問うのではなく,頭に描いた「考え」や「やり方」を形に表す上で,生徒同士の相互関係の中で互いに協力して「どうすればうまくできるか,失敗がどこにあったのか,それをどのように改善した結果,記録が伸びたのか」に気付き,そのプロセスから得た「知」をグループで共有することが今回の単元の目的である。
日常生活では身近だが教材としては意外なスパゲティに対する親近性と新規性,一見して簡単そうな課題が予想に反してうまくできないというギャップ,グループで協力しなければ記録を伸ばせない状況の設定,このように計画することで楽しみながらも目的に沿って取り組むことができた。
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