ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.19 > p28

コンピュータ教育のバグ
ハードな長期予報からソフトな長期予報に
—情報教育の長期展望—

 天気予報に長期予報というのがある。日本の場合,これは毎月気象庁から発表される発表月の翌月から3ヶ月分の予報である。このあたりの手法を突き詰めていくと,モデル化の話なんかに繋がっていくところなのだろう。それはさておき,今のところは,この長期予報というのは,いまひとつ信用できない部分もあるように思う。しかも,日々の生活では,その日その日の天気や降水確率の方がどうしても気になるので,長期予報なんていうのはすっかり忘れてしまっているというのが本当のところだったりする。

情報教育の長期予報はあたらなかったのか
 一昔前といえば少々大げさかもしれないが,少なくとも数年前までは,学校におけるコンピュータネットワークシステムの導入について,折りしものミレニアム騒ぎも相まって,侃々諤々の議論があった。「2000年問題の行く末をみたら,これを教訓に学校のコンピュータのセキュリティー体制を一新しよう。」「校内にLANを組んだらこう活用しよう。」「すべての教室にコンピュータが設置されれば,授業のスタイルも変わらなければいけない。」「コンピュータを有効に活用するために,特別な研修が必要だ。」など,ああでもない,こうでもないなんて言いながらも,なかなかに夢のある話であったように思われる。

 こういう議論が決してなくなったわけではない。今に至ってもなお継続的な課題は多いし,さらに進化した状況によって,以前とはまた違った問題ももたらされている。しかし,のど元過ぎれば熱さを忘れるというのだろうか,例えば2000年問題にしても,あれだけ大騒ぎしたのは,いったい何だったのだろうかと思うほど,今は昔である。

 では,あの頃に考えたコンピュータ教育の長期展望は間違っていたのだろうか。よく考えてみると,まんざらはずれていたわけではないのがわかる。校内LANをここ数年でスタートさせた学校は数多いし,学校におけるコンピュータセキュリティーの問題は,ますます重要な課題となってきている。
これからの展望は
 このように,ハード面での整備は進み,十分とはいえないまでも,日本中の学校はすでに多かれ少なかれコンピュータ教育に取り組み始めている。ネットワークシステムを中心として,インフラの整備は今後も進んで行くであろう。ところが,学校現場では今ひとつ劇的な変化や絶大な効果があがっているという例が少ない。どうやら,ソフト面にあまり目を向けられていなかったツケが来ているようだ。教員配置などの人的問題,カリキュラム開発や評価の問題などは,新しい取り組みが始まっているものの,一般化するにはまだまだこれからという感じがしてならない。

 情報とは,そもそも無形のものである。教育も,また然りである。とすれば,情報教育を考える上で,インフラ面,ハード面だけをビジョンとして描いていたのでは進歩は望めない。ソフト面での充実を目指す長期的な方策なり展望なりが必要なのではないだろうか。

 ところで,ここで問題なのは,学校現場ではそんな長期展望を持つ余裕がないほど多忙を極めているということである。それでも,その日その日の目先の授業のことだけでなく,遠くを見る目はいつも持ち続けていたいものだ。歴史上で,未だかつて,止まなかった雨も,復旧しなかったネットワークもないのだから。
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