ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.12 > p25

コンピュータ教育のバグ
取り返しのつかないことを
−コンピュータの特徴を伝えているか−

 コンピュータが普及した副産物として,いろいろな文書が簡単に作成できるようになった。ちょっとした文書なら,公的か私的かさえ問わず,ちょちょいのちょいで入力して完成させてしまうことができる。便利になったと思う反面,いざ自筆で文字を書かなければならない場面で,簡単な漢字がわからないなんてことになったりもする。ぺン書きの書類だと,失敗したら取り返しがつかないから,書き直さなければならない。あたりまえのことだが,コンピュータ入力に慣れていると,これまた面倒くさいものである。

便利なUNDO機能
 文字入力の操作に限らず,コンピュータ処理そのものの特徴のひとつともいえるのが,アンドゥー(UNDO)機能である。操作ミスや入力ミスをなかったことにしてくれるという,大変便利なものである。だから,コンピュータ実習するときには,ソフトの種類などは問わず,「とりあえず,やってみよう。そして,もし間違ったらUNDOしよう。」というのが決り文句である。「失敗したらやり直せばいいや」というのは,あまりに安直で教育的配慮に欠けるのではないかというご意見もありそうだが,しかし,コンピュータの便利な特徴であるこの機能を使わないわけにもいかない。

  要は,UNDOのやり方が問題なのではないか。試行錯誤の過程で,いろいろとやってみて,問題があるところを振り返り,やり直すというのは,ごく一般的なことである。しかし,何度も何度も同じミスを繰り返して,何の進歩も成長もないのはよくない。つまり問題なのは,使う者が,何かしら考えを持って操作しているのかどうかである。

  ところで,ここでネックになるのが,教える先生の姿勢である。従来,学校の授業というものには,失敗を容認するような配慮はあまりない。「失敗は成功の母だ」とかいいつつも,失敗なく大過なく学習していく方を尊しとする風潮があることも否めない。しかし,コンピュータ教育においては,いろいろなミスを犯すほうが,むしろ上達が早いのではないだろうか。コンピュータで,データを間違いなく正確に素早く処理する能力を身に付けようとした場合でも,それを習得する過程でもしミスを何も犯さなかったとしたらどうなるだろうか。
そもそもコンピュータとは
 そもそもコンピュータとは,どういう特徴をもった代物なのだろうか。簡単にいってしまえば,素早く誤りなく演算ができるということと,一定量のデータを正確に記憶できるということが,人間に勝っている程度のものだ。こういう特徴・特質を把握するのは大切なことである。

  コンピュータ実習をすすめていくと,簡単な操作しか教えていなくても,コンピュータ操作の勘所をつかんだかのような生徒が出現してくる。初めてのマシンでもソフトでもそこそこ使いこなしてしまうのだ。逆に,いくら長い期間をかけてコンピュータ実習をこなしていても,習った操作しかできない生徒もいる。コンピュータの特徴や特質をきちんと理解させることで,このあたりのギャップを少しは埋められないものだろうか。

  学校の授業において,コンピュータの操作で取り返しのつかないことをしてしまうなんて,そうそう起こりえない。けれども,何も考えずに入力だけを繰り返すコンピュータ実習で失った時間は,取り返しがつかない。
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