ブックタイトル平成30年度版 高校美術 内容解説資料(表紙作品・作家紹介)
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平成30年度版 高校美術 内容解説資料(表紙作品・作家紹介)
―瞬間で伝わる魅力 インスタレーション=空間造形なので、人がその空間に入った瞬間、「わあっ!」と伝わるんですね。絵画や彫刻のようにゆっくりと、じわじわと伝えるような表現も魅力的ですが、作品を見たとき、一瞬で……まさに1秒とか2秒で人の心を鷲掴みにして、作品の中に吸い込んでいく。私にとって、インスタレーションという表現手段の魅力はそこにあると言っても過言ではありません。―「掌の鍵」は、なぜ「鍵」だったのか 鍵は、生活に密着しているもので、人がもっているものの中でも大切なものです。その上、鍵という言葉にはたくさんの意味があります。物理的な「錠」の意味だけでなく「鍵を握る」とか「チャンスをつかむ」のような。しかも鍵は簡単には人に託せないですよね。信頼の上で受け渡しをする。すなわち人とのつながりの確かさを見極めるようなアイテムでもあります。鍵を通じて、未来を託したり、責任を託したり、大人が次の世代に様々なものを託していく、そんなイメージを作品に込めています。 また作成過程で感じたことですが、鍵の形ってどこか人間の形に似ているんですね。作品に使用した18万個もの鍵は、文字通り世界中の方から提供いただいたものですが、すべて使い古されたものなわけです。それらの鍵1つ1つに残る記憶を編むような、赤い糸で人と人とをつなぎ、結び合わせていくような心持ちになりました。 赤い糸は、1巻75メートルのロールを3千個使用しています。赤であることは、やはり血液の赤であると同時に、運命の赤い糸、すなわち縁のような意味もあります。大量の鍵が赤い糸を介して星のように、まるで宇宙空間のように散らばっていて、私の体内にある宇宙と、外の宇宙とをつないでくれているようにも感じます。 そして、2艘の舟は両の掌の象徴。降り注ぐ「鍵」を受け止める役を担っています。舟は前進するもので、方向性があります。2015年のヴェネツィア・ビエンナーレのタイトルが「全世界の未来」だったこともあり、一人一人の向かう方向や未来というものを表しました。塩田千春 (しおた・ちはる)現代美術家1972年、大阪府岸和田市に生まれる。大阪府立港南造形高等学校卒業。京都精華大学洋画科卒業。「生きることとは何か」、「存在とは何か」を探求しつつ大規模なインスタレーションを中心に、立体、写真、映像など多様な手法を用いた作品を制作する。2007年、神奈川県民ホールギャラリーの個展「沈黙から」で芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2015年、 第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館作家として選出される。国内の主な個展に、高知県立美術館(13年)、丸亀市猪熊弦一郎 現代美術館(12年)、国立国際美術館(08年)など。ベルリン在住。Chiharu Shiotahttp://www.chiharu-shiota.com/ja/