日本文教出版 社会と情報(社情306) 教科書テキストデータ ---------------------------------------------------------------- 序章 情報社会とわたしたち ---------------------------------------------------------------- 【p8,p9】 1.情報革命 ○情報革命と生活・社会の変化  携帯電話が誕生したのは1980年代である。そこからわずかの間にさまざまな機能がつけ加えられ,いまでは,電子メール,Webサイトの閲覧,音楽の再生,位置情報の確認,ゲームなどの機能を取り込み情報社会を象徴するものの一つとなった。  情報社会の進展につれて,わたしたちの生活は大きく変わり,学習の方法や,待ち合わせの仕方,仕事のスタイルまでもが影響を受けている。  社会もまた大きく変化している。異なる国や地域,文化間での相互干渉が少なかった古代に比べ,現代はある地域で起こったことがすぐに地球の裏側にも伝わり,結果としてその地域にも変化が起こるということが相互に繰り返されている。こうした地球全体の情報の流れを支えているのが通信である。  通信はかつて,テレビやラジオなどの放送産業にほぼ独占されていたが,インターネットは誰もが参加し利用することができる通信手段として世界中に広まり,従来の通信産業に大きな変化をもたらした。それだけでなく,ものの流通の仕方をも大きく変える可能性がある。たとえば,電子書籍は,書籍とはいっても物理的な本の形があるわけではない。したがってそれを運ぶトラックも販売する店舗も必要ない。インターネットの中だけで完結するこうしたサービスは消費のあり方を根本的に変える可能性がある。 ○情報システムの落とし穴  道具が強力であればあるほど,故障したり悪用されたりしたときの問題は大きくなる。自然災害やプログラムのバグ,人間の操作ミスなどで情報システムが止まってしまうことがある。たとえば交通機関に関係する情報システムが停止すると,安全な運行ができなくなり,何万もの人々が影響を受ける。情報システムを破壊するような犯罪が起こるとその被害は甚大だ。  そのほか,オンラインショッピングで,商品が届かなかったり偽物を買うことになったりする例も増加している。電子掲示板を通して知り合った人とトラブルになるケースも少なくない。また,犯罪を予告するような書き込みによって避難措置がとられ,多くの人々の暮らしが乱されることもある。  こうしたことから人々や社会を守るためのコストは莫大である。個人が払うコストだけでなく,政府が払うコストも,結局わたしたち市民が税金という形で支払っている。社会のシステムは一人ひとりの分担の上で成り立っているのである。 (携帯電話のさまざまな機能) ・インターネットアクセス  Webページ閲覧,電子メール,情報検索 ・マルチメディア  写真,電子書籍,音楽,ゲーム,動画 ・通信 ・情報管理・その他   電卓,時計・アラーム,アドレス帳,地図 (携帯電話のシステムを支える仕事) ・ソフトウェア開発 ・通信事業者 ・ネットワークの保守・管理 ・ハードウェア開発 ・Webデザイナー ※側注 ・情報革命  社会のあり方を大きく変える変化を「○○革命」とよぶことがある。18世紀後半~19世紀の産業革命に次いで,20世紀には情報革命が起こったとされる。 (1)情報社会 information society:  どんな情報をもっているかが重要な意味をもつ社会。コンピュータによる高速の情報処理,通信手段の発達による広範囲な情報伝達が現在の情報社会を支えている。情報社会では日々大量の情報が生み出され,蓄積され,加工され,伝達されている。 (2)インターネット the Internet:  世界中のコンピュータネットワークを相互に結んだネットワークのこと。インターネットに関する個々の詳しいしくみやそこでやり取りされるコミュニケーションの特徴,社会に及ぼす影響などはこの教科書を通して学んでいく。 ・通信システムのトラブル  予約システムの故障で,多くの人が鉄道や飛行機に乗れなくなった事例はいくつもある。銀行のオンラインシステムの障害で,入金・送金・支払いができなくなった事例も少なくない。