日本文教出版 社会と情報(社情306) 教科書テキストデータ ---------------------------------------------------------------- 第1章 情報の活用と表現 ---------------------------------------------------------------- 【p18】 第1節 情報とメディアの特徴 ■情報社会における情報の役割について理解しよう。 ■メディアの特性を理解しよう。 1.情報の特徴 ○情報社会  わたしたちは,毎日多くの情報に接している。新聞や雑誌,テレビなどを通してさまざまなできごとを知ることができるし,インターネットを使って自分に必要な情報を探し出すこともできる。情報を手に入れるだけでなく,世界に向けて情報を発信することもできる。  情報はわたしたちの生活にとって欠かせないものである。天気予報は服装や持ち物を決めるために役立つし,はじめて訪れる場所で行動するときには地図情報がとても役立つ。このように,わたしたちは情報を行動や意思決定の材料として利用している。そして,パソコンや携帯電話などの情報通信機器を活用して,いつでもどこでも情報にアクセスできる社会で生活している。情報社会とは,情報やそれを支える情報技術が生活に欠かすことができないほど大きな影響力をもっている社会である。 (わたしたちのまわりにあふれる情報) インターネット 人工衛星 広告・ちらし 人の話 携帯電話 スマートフォン テレビ・ラジオ 博物館・美術館・図書館 パソコン CD DVD Blu-ray 新聞 雑誌 書籍 ※側注 (1)情報 information:  人にとって意味や価値のあるデータのこと。意思決定の材料として使われる。 (2)情報通信機器 information and communication devices:  情報をやり取りするために使う機器のこと。インターネットに接続されたコンピュータ機器や携帯電話などがよく使われる。 ※脚注 (1)ある目標を達成するために,現在の状況を分析し,複数の解決方法を考え,最もよい方法を見つけること。 【p19】 ○情報の特質  “もの”には形があるが,“情報”には形がない。そのため,ものと情報では特性や取り扱いのルールが違うことがある。たとえば,ものは盗まれればなくなるが,情報はオリジナルを残したままコピーをつくることができるので,盗まれても気づかないことがある。しかし,ものと違いオリジナルが残るからといって,知的活動で生み出された知的財産を盗んだり,無断で複製して使ったりすることは許されない。  書店で小説を購入するときのことを考えてみよう。わたしたちは紙の束というものだけを購入するためにお金を払っているのではない。そこに印刷されている小説の内容という情報に価値を認めて購入しているのである。 ○情報の価値  情報社会では人々に価値ある情報を提供するための情報の収集や加工,流通がビジネスとして成り立っている。たとえばWeb上の情報を集めて検索サービスを提供したり,個人の購買履歴をもとにおすすめの商品を提示したり,多くの人の発言をもとに何が流行しているのかを分析するサービスなどが展開されたりしている。このように企業はさまざまな情報をその企業活動に役立てている。とくに個人情報は多くの企業にとって価値のある情報であり,入手に熱心である。ほとんどの人がなるべく個人情報を知られたくないと思うが,いっぽうで個人情報の活用が社会をより豊かにしている側面もある。 (実習1) あなたは1日に平均して次のことにどのくらいの時間を使っていますか。学校に来る平日について考えてみよう。(単位:分) ・テレビやDVDを見る。 ・携帯電話を使う。 ・音楽を聞く。 ・テレビゲームや携帯ゲーム機で遊ぶ。 ・パソコンを使う。 ・漫画や雑誌を読む。 ・本や新聞を読む。 ※側注 情報の価値  たとえばある地方の天気予報は,その場所に用事のある人にとっては意味のある情報であるが,用事のない人にとっては単なるデータでしかない。情報の価値は受け取る人によって左右される。 ※脚注 (2)情報には形がないため,表現したり記録したり伝えたりするためにはメディア(→p.22)が必要になる。 (3)レコメンデーション(→p.116)という。 【p20】 ○情報の信憑性  正しい判断をするには,根拠となる情報が正しいことが前提となる。たとえば,友だちと遊園地に出かける計画を立てるとしよう。公式ガイドブックなら正確な情報を得ることができるはずだし,加えて遊園地の公式Webサイトを利用すればガイドブックよりも新しい情報を得られるだろう。また,利用者の立場から書かれた個人の体験記やブログからも有益な情報を得られることがある。そのいっぽうで,誤った情報を信じて失敗してしまう可能性もある。情報の信憑性(確からしさ)は情報を意思決定に利用する際にはとても重要である。情報社会に生きるわたしたちには信憑性を見極める力が必要なのである。 ○信憑性を確かめる  情報の信憑性を確かめるにはどうすればいいだろうか。その第一歩は情報源を確かめることである。一般的に,情報の真偽を多数の人が確認している情報源や,専門家によって検証されるしくみをもつ情報源から得られる情報は信憑性が高いと考えられている。 (情報の信憑性を確かめる方法) (1)情報源がどこなのか確かめる。 (2)情報の発信・更新日時を確かめる。 (3)客観的な事実なのか,誰かの意見や推測なのか確かめる。 (4)複数の情報源から同じ情報が得られるか確かめる。 (5)専門家に聞いて確かめる。 (6)自分で見たり,実行したりして確かめる。 (新聞記事とブログが記事になるまでの流れ) ○事件・できごと ○新聞 取材→編集→校正→新聞 ○ブログ ・えーと,こうだったかな?  タイトル:パニック!  消防車が3台も来て逃げ遅れた人を助けていたよ! 送信→インターネット 【p21】  さらに情報の信憑性を詳しく検討したい場合には,次のような点にも注目しよう。 ・発信者の立場を考える  情報には必ず発信者の意図がある。どのような意図をもってその情報を流したのか,発信者の立場や背景,目的について考えよう。たとえば,ある問題に対して複数の異なる考え方がある場合では,それぞれがどのような立場に立って発信された情報なのかを考慮しなければならない。 ・数字やグラフが意図的でないか考える  わたしたちはある事柄の根拠を数字で示されると信じやすい。数字やグラフを見るときは,ある目的のために意図的にデータを集めたり,表現されたりしていないかを確かめよう。新聞や雑誌などでアンケート調査の結果を数値やグラフで紹介している記事も多い。アンケート調査では調査者,目的,対象,規模,時期,方法,内容(質問文や回答方法)などをよく検討して,その結論の確からしさを判断しなければならない。 (信憑性の検討) ○発信者の立場による記事の違いの例 [記事A] 小学生の携帯電話普及率が40%を超えた。いまの小学生は習い事なども多く,学校から帰宅後も遠くへ出かけることがある。外出中の安全対策として携帯電話をもたせることは有効な手段である。携帯電話をもっと普及させることが望ましい。 →子どもの安全を考えている,子どもに携帯電話をもってもらいたい。 [記事B] 小学生の携帯電話普及率が40%を超えた。いっぽうで,子どもたちのコミュニケーション能力を育てることが重要な課題となっている。小学生のうちは直接対話というコミュニケーションを大事にすべきであり,携帯電話などをもたせることには問題がある。子どもの携帯電話所持は制限することが望ましい。 ○数字やグラフによる意図的な表現の例 10代に大人気 DVDラーニングシリーズ 英会話教材 10代に大人気のラーニングシリーズの教材。とにかくわかりやすいと大評判!高校生を対象とした調査では4枚以上もっている人がなんと35%もいることが判明。さぁ,君もこの波に乗り遅れるな! [DVDの所有枚数] 1枚以下 40% 4枚以上 35% 3枚   15% 2枚   10% →何人に聞いた結果なのかがわからない。立体グラフを使って実際の数字と印象を違えている。 ※側注 (3)アンケート調査 questionnaire research:  複数の人に同じ質問をすることで人々の意識や行動などを把握するために行う調査のこと。 ※脚注 (1)情報には必ず発信者の意図があるという考え方はメディアリテラシー(→p.62)を考える際にも大切である。 (2)立体円グラフでは手前のデータが大きく見える傾向がある。