日本文教出版 情報の科学(情科305) 教科書テキストデータ ---------------------------------------------------------------- 第1章 コンピュータによる情報の処理と表現 ---------------------------------------------------------------- 【p16】 2.コンピュータの動作のしくみ  コンピュータの内部ではどのようにデータ処理を行っているのだろうか。そのしくみについて理解しよう。 ○ハードウェアとソフトウェア  コンピュータは,機器そのものであるハードウェアと,それらを動作させるためのソフトウェアとで構成されている。ソフトウェアは,プログラム言語によって記述されている。 ○コンピュータと周辺機器の接続  コンピュータ本体をマウスやプリンタなどの周辺機器と接続することで,より多くの用途に利用することができる。 (コンピュータ本体と周辺機器) プリンタ ディスプレイ キーボード マウス コンピュータ本体 イメージ・スキャナ  コンピュータ本体と周辺機器を接続するインタフェースにはさまざまなコネクタの形状や電気信号の形式がある。接続する機器ごとにインタフェースが異なると不便である。近年ではUSBというインタフェースが標準化され,ほとんどのコンピュータで利用できる。USBを用いて,プリンタやイメージ・スキャナなど,さまざまな周辺機器が簡単に接続できるようになった。 ◎深める◎ さまざまなインタフェース  USBのほかにも,以下のようなインタフェースがある。また,Bluetoothなどの近距離無線技術を使ったものもある。 ・HDMI(エイチディーエムアイ) DVDプレーヤとディスプレイなどの接続に使われる。 ・SATA(エスアタ) コンピュータとハードディスク(→p.17)などの接続に使われる。 ・IEEE 1394(アイトリプルイー1394) コンピュータとディジタルビデオカメラとの接続などに使われる。 (実習4) USBを利用して接続できる周辺機器にはどのようなものがあるか調べてみよう。 ※側注 (1)Aハードウェア hardware:  コンピュータの機械そのものやコンピュータに接続されたさまざまな装置。 (2)ソフトウェア software:  コンピュータに情報を処理させるために必要なプログラム。 (3)プロブラム言語  コンピュータに対する指示を記述するもの。 (4)周辺機器  コンピュータ本体ではないが,コンピュータと接続して使用する機器のこと。 (5)インタフェース interface:  二つのものの間にあって,情報のやり取りを仲立ちする部分。 (6)USB(ユーエスビー) Universal Serial Bus:  コンピュータに周辺機器を接続するための規格の一つ。USBハブを設けることによりツリー状に127台までの接続が可能である。 【p17】 ○コンピュータの構成 ・入力・出力  キーボードやマウスなど,コンピュータにデータを取り込む装置を入力装置という。また,ディスプレイやプリンタなど,コンピュータ内部のデータを出力する装置を出力装置という。 ・演算・制御  コンピュータの内部にあるCPUは,データの演算や各装置の制御を担当する。演算とは,たとえば「2+6を計算しなさい」という命令に対して,それを解読して処理する機能である。CPUに対する命令は1と0で表現された機械語で与えられる。1と0は電圧の高低に対応する。制御とは,各装置に必要な指示を与え動作させる機能である。CPUはコンピュータの頭脳に当たる重要な装置である。 ・記憶  コンピュータの内部にあるメインメモリ(主記憶装置)は,プログラムやデータを一時的に記憶する。電源を切るとメインメモリのデータは消えてしまう。そのため,必要なデータは電源が切れても記憶を保持できるハードディスクなどの補助記憶装置に記憶する。 (さまざまなコンピュータの構成) ●デスクトップパソコン ・出力 ・入力 ・コンピュータ本体 ・演算・制御  CPU ・記憶  主記憶装置   メインメモリ  補助記憶装置   ハードディスク 本体と周辺機器で構成。 ●携帯電話,スマートフォン ・内部の基板にCPUやメモリが搭載されている。 ・入力にタッチパネルが用いられることも多い。 ●家庭用電化製品(例:エアコン) ・入力  温度センサ ・入力  リモコン ・演算・制御・記憶 ・出力 ・現在,ほとんどの家庭用電化製品には小さなコンピュータが 組み込まれている。 (実習5) コンピュータが組み込まれている身のまわりの家電製品の入力装置・出力装置がどのようになっているかあげてみよう。 ※側注 (7)CPU(シーピーユー) Central Processing Unit:  中央処理装置。 (8)機械語 machine language:  CPUが理解し実行できるプログラム言語。 (9)メインメモリ main memory:  メモリともいう。記憶できるデータの大きさをメモリ容量という。 (10)ハードディスク hard disk:  磁気ディスク装置。 (11)補助記憶装置 auxiliary storage:  ハードディスクのほか,USBメモリやDVDなどのこと。 ・五大機能  入力・出力・演算・制御・記憶をコンピュータの五大機能という。 (12)センサ  sensor:  環境の状態などを電気信号に変換する装置。 【p18】 ○CPUと論理回路  どうやってCPUは演算を行っているのだろう。CPUはいくつかの論理回路が組み合わされてできている。 (代表的な三つの論理回路) ○AND回路(論理積回路) ・真理値表 入力 出力 A B F 0 0 0 0 1 0 1 0 0 1 1 1 ・論理式 F=A・B ○OR回路(論理和回路) ・真理値表 入力 出力 A B F 0 0 0 0 1 1 1 0 1 1 1 1 ・論理式 F=A+B ○NOT回路(否定回路) 真理値表 入力 出力 A F 0 1 1 0 ・論理式 F=A(Aの上にバー) ○加算の回路  AND回路,OR回路,NOT回路を組み合わせて,2進法の1桁の加算を実行する半加算回路がつくられている。  加算する2進法1桁の数値をA,Bとして,和(Sum)をS,桁上げ(Carry)をCとすれば,A,BとC,Sの関係は左の表のようにあらわされる。  この加算を実行する半加算回路は次の通りになる。 (半加算回路) (実習6)  次の回路で,Aの入力が「1」,Bの入力が「0」のとき,出力Fを答えなさい。 ※側注 (1)論理回路 logic circuit:  論理演算を行う電子回路。 ・回路記号  ANSI(American National Standards Institute)記号とは,論理素子を記号であらわしたものである。JISでは以下の記号であらわされる。 ―AND回路 ―OR回路 ―NOT回路 (2)JIS(ジス) Japanese Industrial Standards:  日本工業規格。工業製品などの標準として定めた規格。 (3)真理値表 truth table:  論理回路などのすべての入出力の結果を表にしたもの。 半加算回路の真理値表       A B C S 0+0=  0→0 0 0 0 0+1=  1→0 1 0 1 1+0=  1→1 0 0 1 1+1= 10→1 1 1 0 ・加算回路  2進法の加算を行う回路のことを加算回路という。半加算回路は1桁の加算しかできないが,これを組み合わせて桁上げまでできるようにした回路もあり,全加算回路という。コンピュータの中では,これらを組み合わせ,桁数の多い演算もできるようにしている。 【p19】 ○CPUとメインメモリの動作  コンピュータが扱う命令やデータは,8ビットつまり1バイトをひとまとまりとしてメインメモリに記憶される。メインメモリの内部は1バイトごとに区分けされ,0からはじまる「アドレス(番地)」がつけられている。たとえば,容量が512MBのメインメモリなら,0~536,870,911番地まである。  CPUは,次の四つの動作を繰り返して命令を処理する。 1.メインメモリのアドレスを指定して命令を読み込む。 2.読み込んだ命令を解読する。 3.解読された命令を実行する。 4.処理した結果をメインメモリなどに書き出す。 (CPUとメインメモリ) メインメモリ (1)メインメモリから命令を読み込む CPU (2)解読 (3)実行 (4)結果を書き出す メインメモリ内部 番地 0000 0001 …… データ 01001110 01101111 ……  CPU内部では,データの受け渡しのタイミングを合わせるために,CPUクロックという信号が使われている。CPUクロックが1秒間に発生するクロック信号の数をクロック周波数とよび,単位はHzであらわされる。これまでクロック周波数を高めることで,CPUの性能を高めてきた。しかし,クロック周波数が高まると消費電力も増え,熱も多く発生する。近年では,マルチコアCPUや64ビットCPUなど,クロック周波数を高めずに,性能を高めたCPUが登場した。 ◎深める◎ パソコンの仕様表を見る  パソコンの仕様(スペック)表を見てみよう。どんなことをあらわしているかわかるだろうか。 CPU  動作周波数:1.73GHz 4コア/8スレッド メインメモリ  標準4GB ハードディスク  640GB インタフェース  USBポート×3,LANコネクタ(RJ-45),HDMI出力端子,オーディオ入出力 (実習7)  学校のコンピュータのメインメモリの容量とCPUのクロック周波数を調べてみよう。 ※側注 (4)0~(512×1024×1024-1)番地 (5)CPUクロック  生物の心臓の鼓動と同じように,短い周期で信号をつくり出す。 (6)Hz(ヘルツ) Hertz:  周波数の単位。1秒間に繰り返される回数をあらわす。たとえば,クロック周波数が4GHzのCPUは1秒間に40億回の命令を実行することができる。 (7)マルチコアCPU  CPUのうち,演算を行うコアとよばれる部分を複数搭載したもの。コアが二つあるデュアルコアCPUや,コアが四つあるクアッドコアCPUがある。 (8)64ビットCPU  従来の32ビットCPUは一度に処理できるデータは32ビットだったが,64ビットCPUは一度に64ビットを処理する。 ----------------------------------------------------------------