ブックタイトル令和3年度版「中学社会 地理的分野」内容解説資料

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令和3年度版「中学社会 地理的分野」内容解説資料

第3 編第2 章 日本の地域的特色と地域区分日本は,国土が山がちで海岸部の平野に多くの人が住んでいるため,大雨や強風などの気象による自然災害(風水害)がひんぱんに発生します。 梅つ雨ゆや台風による大雨は,毎年のように,全国各地で川のはんらんによる洪こう水ずい,地すべり,がけくずれ,土ど 石せき流りゅうなどの風水害を引き起こします。また,台風は,しばしば高たか潮しおや強風による災害ももたらします。高潮は,海水が,気圧の低下によってすい上げられたり,強風によって沿えん岸がん部にふきよせられたりすることで海面(潮ちょう位い)が上じょう昇しょうし,海水が陸上にあふれ出して,沿岸部の低地が浸しん水すいするものです。1959年の伊い勢せ湾わん台風では,伊勢湾沿岸で高潮が起こって大きな災害が発生しました。また,2018年の台風21号では,関かん西さい国際空港が高潮で浸水しました。自然災害のなかには,自然現象だけが原因ではなく,人間の活動が災害発生の間接的な原因になっていることがあります。例えば,山地の森林を伐ばっ採さいしたために,土ど砂しゃくずれが発生しやすくなる場合があります。また,もともと浸水しやすかった低地や土砂くずれの可能性がある斜しゃ面めんの近く12 (大阪府)さまざまな気象災害自然災害と人災気象災害からみた日本の地ち域いき的特色と地域区分4台風による関西国際空港の浸水(2018年,大おお阪さか府泉いずみ佐さ野の市・田た尻じり町・泉せん南なん市) 台風による高潮で滑かっ走そう路ろやターミナルビルが浸水したほか,強風で流された船が連絡橋に衝しょう突とつしたこともあって,復旧までに長い時間がかかりました。2土石流(左:広ひろ島しま県呉くれ市)と洪水(右:岡おか山やま県倉くら敷しき市) いずれも2018年の西日本豪ごう雨うによる被害です。6月末から7月上じょう旬じゅんにかけて,梅ばい雨う前線や台風の影えい響きょうで,西日本の広い範はん囲いで大雨による災害が発生しました。1学習 課題見方・考え方地域によって気象災害の起こりやすさが異ことなることに着目しましょう。なぜ日本ではさまざまな気象災害が起こるのでしょうか。地域小学校 4・5年 日本の自然災害について学習した内容をふりかえりましょう。毎年,大雨による災害のニュースを見ることがあるね。14651015第3 編第2 章 日本の地域的特色と地域区分日本では,明めい治じ以い降こう,建設技術の進歩や経けい済ざい発はっ展てんにともなって,防ぼう災さい対たい策さくが進められ,堤てい防ぼう,ダム,防ぼう潮ちょう堤ていなどが整備されました。また,観測技術の進歩によって,地じ震しん,津つ波なみ,気象などの警けい報ほう・注意報もより正確になりました。その結果,自然災害の被ひ害がいは大おお幅はばに少なくなりました。 しかし,技術と費用には限界があり,これらの防災対策だけで災害を防ぐことはできません。国・県・市町村などの機関,自主防災組織などの住民組織,家庭・個人が一体となって,被害をできるだけ小さくする減げん災さいに取り組んでいく必要があります。防災や減災のためには,災害が発生する前に,日常生活のなかでふだんから行う防災対策が重要です。自然災害が発生したときに,どこでどのような被害になるかを予測したハザードマップなどを参考にして,地ち域いきで予測される災害について理解し,対策を立てておく必要があります。災害が起こると,電気,ガス,水道などのライフラインが長期間絶たれるおそれがあるので,それに対するそなえも大切です。 中学生のみなさんは,自分や家族の生命を守ること(自じ 助じょ)に加えて,地域社会の一員として地域の防災に役立つこと(共きょう助じょ)が期待されています。例えば,津波の危き険けんや,大雨・高たか潮しおによる浸しん水すいのおそ12P.132, 151 P.28034防災・減災へのくふうどのように災害と向き合うか4 自助・共助・公助と避難3原則2 日常生活のなかで行う防災対策の例1週間ぶんの備び蓄ちく3 食料(1人ぶん)の例5 6 災害にそなえるために 学習 課題多くの自然災害から地ち域いきや人々の生命を守るために,私たちはどのようなことに取り組めばよいのでしょうか。見方・考え方自然災害が起こりやすい日本で,さまざまな防災・減災の取り組みが行われていることに着目しましょう。人と自然とのかかわり自 助● 建物をゆれに強くし,家具がたおれないようにする。● いざというときに,どのように連れん絡らくを取り合うか相談しておく。● 自分から進んで防災・減災活動をする。共 助● 被ひ害がい者しゃをすぐに助け,地ち域いきの安全をみんなで守る。● 被害を受けても,救助の人たちはすぐにはかけつけられないので,ふだんから訓練を重ね,災害に強い地域づくりをめざす。公 助● 防災や災害復旧のために,国・県・市町村などがさまざまな対たい策さくを行う。避ひ難なん3原則● 想定にとらわれるな● 最さい善ぜんをつくせ● 率先して避難せよ特別警けい報ほう数十年に一度の暴風や大雨など,警報をはるかにこえるような現象が予想され,重大な災害の危き 険けん性がいちじるしく高まっているときに発表される。 注) 大津つ 波なみ警報,噴ふん火か 警報(居住地ち 域いき),緊きん急きゅう地震速報(震しん度ど 6弱以上)も特別警報に含ふくまれます。警 報重大な災害が発生するおそれがあるときに発表される。注意報災害が発生するおそれがあるときに発表される。気象庁ちょう1 が発表する防災情報の例● どこにどんな地形があるのか,あらかじめ理解しておく。● 学校,通学路,自じ 宅たくなどの場所から避ひ 難なん所への避難経路を,ふだんから確かく認にんしておく。● 非常用の備び蓄ちく食料や懐かい中ちゅう電灯・ラジオなどを用意して,定期的に点検しておく。● 電話やインターネットがつながらないことも想定して,家族がはなればなれになった場合の集合場所を話し合っておく。● 特別警けい報ほう・警報・注意報などの防災情じょう報ほうの意味を理解し,どの情報がどのような災害への注意をよびかけているのかをつかんでおく。● 避難訓練・防災訓練にきちんと参加する。災害に対して,私たちはどうやってそなえていけばいいのかな。148 小学校 4・5年 さまざまな防災への取り組みについて学習した内容をふりかえりましょう。51015第3 編第2 章 日本の地域的特色と地域区分45°140° 145°40°35°25°30°130° 135° 125° 130°桜島さくらじま雲仙岳うんぜんだけ富士山ふ じ御嶽山おんたけ東日本大震災(2011年)阪神・淡路大震災(1995年)関東大震災(1923年)はんしんあわじ0 300kmマグニチュード7.9以上大きな津波被害をともなった地震その他の地震1885年以降の主な地震7.0~7.96.0~7.0主な火山じしんつ なみ ひ がい(気象庁資料)2021年度版中学社会地理的分野教科書C321_03_03日本周辺の地震災害と火山2018年10月 地図制作:ジェイ・マップもと図78%縮小自然環かん境きょうは私たちにさまざまなめぐみをもたらしますが,生命や財産に被ひ害がいをあたえる自然災害を起こすこともあります。 日本は,環かん太たい平へい洋よう造山帯にあるため,世界のなかでも地じ 震しんや津つ 波なみ,火山による自然災害の多い国です。地震は,規き模ぼ(マグニチュード)が大きい場合,強いゆれによって建物などを破は壊かいし,土ど砂しゃくずれや液状化現象を引き起こすことがあります。震しん源げんが海底の場合は,津波が発生することがあります。津波は,沿えん岸がん部の建物を破壊し,川をさかのぼるなどして内陸部まで浸しん水すいさせることもあります。 1995年には阪はん神しん・淡あわ路じ 大だい震しん災さいが起こり,兵ひょう庫ご県南部を中心とした都市部が大きな被害を受けました。はげしいゆれで多くの建物が倒とう壊かいし,鉄道や道路がこわれました。2011年には東ひがし日に 本ほん大だい震しん災さいが起こりました。日本周辺では過去最大級の地震で,巨きょ大だいな津波が発生し,東とう北ほく地方などの太平洋沿岸にあるリアス海岸や平野部で広い範はん囲いが3P.140 P.280P.2801地震や津波による災害地震・火山災害からみた日本の地ち域いき的特色と地域区分33 日本周辺の主な地震災害と火山阪はん神しん・淡あわ路じ大震災で倒とう壊かいした高速道路(1995 年,神こう戸べ市東ひがし灘なだ区)1東日本大震災で沿えん岸がん部ぶをおそった津つ波なみ(2011年,宮みや城ぎ県岩いわ沼ぬま2 市)学習 課題見方・考え方地域によって,地震や津つ波なみ,火山の噴ふん火かなどの災害の起こりやすさが異ことなることに着目しましょう。なぜ日本では多くの地震・火山災害が起こるのでしょうか。地域これらの地じ震しんでは,大変な被ひ害がいが発生したんだね。144 小学校 4・5年 日本の自然災害について学習した内容をふりかえりましょう。510基本方針3学びを日々の生活や社会に活かす地図を活用する⑨ハザードマップの使い方②1. 地形図を見たりインターネットの「地理院地図」を使ったりして,想定される浸しん水すいの深さが場所によって異ことなるのはなぜか,理由を考えましょう。2. 4 のA の場所がどのくらいの深さで浸水すると想定されているか,読み取りましょう。3. A から周辺の避ひ難なん所まで,できるだけ安全に避難するルートを探さがしましょう。グループに分かれて, 3 10 15の避難所までの避難ルートを,それぞれ考えましょう。4. クラス全員で, A から3 10 15 のどの避難所に向かうのが最も安全か,検けん討とうしましょう。5. ハザードマップの想定の前提となる条件を読んで,それと異なる(上まわる)場合はどうなるか,考えましょう。例えば,前提となる条件以上の大雨が降ふった場合は,さらに浸水の範はん囲いが広がったり,浸水が深くなったりすることが想像できます。その場合は避難所や避難ルートをどうすればよいか, 3・ 4 の作業をもう一度行いましょう。6. 以上の作業を参考にしながら,身近な地域のハザードマップを使って,自じ宅たくや学校から周辺の避難所までの避難ルートを考え, 1~ 5の作業を行いましょう。北名古屋市洪水ハザードマップ(2019年3月,部分掲けい載さい) 左の地図は,ハザードマップの一部です。上の説明は,洪水想定の前提となる条件を示した部分です。431015DB0 300m地理 P.132の説明を参考にして,身近な地域の印刷されたハザードマップを入手するか,インターネットでダウンロードしましょう。ここでは,北きた名な古ご屋や市の「洪こう水ずいハザードマップ」を例に取り上げます。(愛知県)ハザードマップをより深く知り,使うために3編1章のP.132で,ハザードマップの使い方を学習しました。ここでは身近な地ち域いきのハザードマップをさらにくわしく読み取って,災害が発生したときの避難について考えましょう。A1513-2 日本の地域的特色と地域区分地域の課題をつかむ地域の特色をつかむ課題の要因を考察する解決に向けて構想するまちづくり会議これまで調べたことをもとに,課題の解決に向けた構想として,よりよいまちづくりプランを考えましょう。作成にあたっては,コンセプトをはっきり示しましょう。タイトルをつける, 1 枚まいの紙にまとめる,プレゼンテーションソフトを使ってまとめるなどして,わかりやすいプラン(提案)になるようにくふうしましょう。よりよいまちづくりプランを考える4 課題の解決に向けて構想しよう 学習 課題見方・考え方地域の課題の変化や持続可能な地域づくりに着目しましょう。地ち域いきの課題を解決するための構想をまとめましょう。地域出生率が低く高齢化率が高いので,地域の活力を維い持じ する対策が必要だと思い,大学生に京都市に残ってもらうプランを提案します。人口と街なみ班● 若い人々に魅み力りょくのある街をつくろう!● 京きょう都と市の人口 … 1986年の148万人が最高で,将しょう来らいは少しずつ減っていきます。● 京都市の人口の特色 ・高こう齢れい化率は全国平均よりやや高い ・大学生が約15万人!(人口の10%以上) ・ 東とう京きょうや大おお阪さかへの転出が多い(特に25~29歳)  ・保育所の待機児童数が少ない! 1 京都市の人口(「国勢調査」年ほか)O1955年65 75 85 95 2OO5 15 25 35 453O(推計)(推計)(推計)6O9O12O15O万人京きょう都と 市の特色である多くの日本人観光客・外国人観光客のためのプランと,日本全体に共通する通つう勤きん・通学者や高こう齢れい者,障がい者,災害時に他地域から来る避ひ難なん者しゃのためのプランに分けて提案します。自然と防災班は ん● すべての人々のための「京きょう都と市災害対たい策さくプラン」を立てよう!家族での話し合い防災グッズの用意ハザードマップの確かく認にん災害時の避ひ難なんルートや避難所の確認徒歩での帰き宅たくルートの確認災害時帰宅支し援えんステーションマップの確認災害時帰宅支援マップの確認やっていますか? 1人1人ができること防災に関する意識度チェック ●京都市 ▲日本全体▲ 学校・企き 業ぎょうで災害時の徒歩での帰宅方法を考える勉強会を開かい催さいしよう。● 有名な観光地のホームページにそこが観光客緊きん急きゅう避難広場であることを多言語で示そう。▲ バリアフリー化が難むずかしい避難所に必要な支援を考え,地ち 域いきの人々で助け合う準備をしよう。▲ 駅・インターチェンジなどで,ほかの地域からの避難者への対応を手伝おう。● 地形的に災害が起こりやすい観光地では,特に早めの避難をよびかけよう。私たちの提案5地震災害・火山災害気象災害防災・減災自助・共助・公助実践的な学習3編2章では,日本全体でどのような災害がみられるかを学習した後,具体的な活動を通してハザードマップの使い方を身に付けることができます。このような実践的な学習により,生命や安全の確保に主体的に取り組むことができます。注目 3編2章(日本の地域的特色と地域区分)では,地震・火山災害,気象災害,防災・減災(自助・共助・公助)について詳しく学習し,それらを踏まえた実践的な学習を提案するページを設けました。また,3編1章(地域調査の手法)・3章(日本の諸地域)・4章(地域のあり方)でも防災・減災に関する教材を充実させるように努めました。知識だけではない災害・防災教育を豊富な事例と実践的な学び↓P.144 ↓P.146 ↓P.148↑P.151 3編 2章 チャレンジ地理 ↑P.270 3編 4 章 まちづくりプランP.168-169 自然環境に影響を受ける人々の生活(九州地方)P.190 巨大地震にそなえる過疎地域の取り組み(高知県)P.230-231 都市問題の解決に向けて(東京大都市圏)P.244-245 震災からの復興と災害に強い地域づくり(東北地方)P.246 新しいまちづくりをめざして(宮城県東松島市)P.247 持続可能な社会をめざして (東北地方)3 編3 章体系的・実践的な学習が可能です 各地方での学習3 編1 章 身近な地域の災害・防災についての調査ができます。3 編2 章  地震・火山災害,気象災害,防災・減災について,体系的に学習を進めることができます。● 地震・火山災害からみた日本の地域的特色と地域区分(P.144-145)● 気象災害からみた日本の地域的特色と地域区分(P.146-147)● 災害にそなえるために(P.148-149)自由研究 「釡石の奇跡」はなぜ起こったのか(P.150)チャレンジ地理 ハザードマップをより深く知り,使うために(P.151)3 編3 章 災害・防災に関する各地方の諸課題を学習することができます。3 編4 章  日本全体や日本の各地方の災害・防災の学習を踏まえて,調査地域の防災について考察,構想できます。20 21