ブックタイトル情報セミナーレポート Vol.1

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概要

情報セミナーレポート Vol.1

8 9初めて問題解決の授業に取り組んだのは,10 年くらい前の「学校食堂を改善しよう!」という授業であった。私が問題解決の授業を始めたきっかけは3つある。1つ目は,単に調べたことを一方的に伝える「発表」ではなく,相手の課題を踏まえて提案する「プレゼンテーション」となる課題を探していたためである。2つ目は,高校生に問題解決の手法を教え,説得力を持って提案できる力を身につけさせたいと思ったためである。3つ目は,当時,学校食堂が開業したばかりで,利用者が伸びないことが問題となっていたためである。こうした理由から,生徒に問題解決の手法を教え,実際に食堂の利用者を増やすための提案をまとめさせ,校内関係者にプレゼンテーションを行う授業を実施した。その後も,テーマを変えながら高校1年生と2年生の授業で問題解決に取り組んでいる。今回は,高校2年生の情報科の選択科目「選択情報(2単位)」で実施している「学校設備の改善案を提案しよう」という問題解決の授業を紹介する。概要としては,学校の施設・設備の問題点を発見し,その改善案を企画してプレゼンテーションをする。個人ではなくグループで行い,その中で色々な問題解決の手法も学ばせる。授業の流れは,問題発見(1時間)→解決方法の検討(1時間)→調査分析,スライドの作成(3時間)→発表・相互評価(1時間)→振り返り(1時間)である。まずは,問題発見を行う。学校の設備で問題点がないかといきなり言われても,生徒はなかなか見つけることができない。そのため,「この場所は危険だと思ったことはないか?」,「このスペースはもったいないと思ったことはないか?」などとテーマを与え,課題を付箋に書かせる。まずは個人で書かせ,それをもとにグループで話し合い,整理をして発表するということを1時間で行う。次に,課題を書いた付箋を壁に貼り,グループでどれを採用するか考える。課題が決まったら,解決法をまずは個人で考えて付箋に書き,それを持ち寄ってグループで討議する。付箋は2色用意し,個人で書いたものとグループで追加したものは色を分ける。ある程度,数を出したところで時間を区切り,出てきたアイデアから1つに絞って企画書を書かせる。スライドを作る前には,提案の詳細を検討し,説得力を持たせるために調査・分析をする。例えば,イルミネーションを提案するならば,「どこに」,「どの程度」,「いつから」などという計画を立てなければならない。費用や効果を考える必要もある。このように,まずは何を調べなければならないかを考えさせる。また,調査の方法については,個人のブログよりも企業や公的団体,官公庁のものの方が説得力があることなどを教える。スライド作成については,基本的な構成について話をする。どうすれば効果があるということを相手に分かってもらえるか,また提案のデメリットや具体的な解決方法も説明しなければならない。グラフや表を入れると分かりやすいこと,どこで調べたか書いた方がよいことなど,スライドの作り方も教える。問題解決の授業に取り組んだ背景問題解決の授業の流れ問題発見と解決方法の検討調査分析とスライドの作成事前に,相互評価をすることや,発表で気をつけるべきことなどを伝えてから発表を行う。発表には,可能な限り,食堂の提案ならば食堂の人,学校施設の改善ならば事務の人というように,聴衆にも参加してもらうことにしている。生徒は「発表」,「デザイン」,「内容」,「説得力」の4つの視点で相互評価を行い,点数だけでなくコメントも書く。終了後には,自分たちのプレゼンテーションを振り返り,次に向けた改善案を考えさせた。図1 相互評価・教員評価の観点授業の工夫として,1つは,作業を行う際は「個人→集団(グループワーク)→個人」という流れで取り組ませている。何か意見を出す場合は,まずは個人で意見を書いて,全員がそれを持ち寄って協議し,最後にもう一度個人で意見を書かせた方が意見やアイデアは深まる。2つ目は,思考の可視化である。すべてのプロセスをワークシートに書かせておけば,それが評価材料になる。また,話し合っていると,途中で何の話をしているか分からなくなる生徒がいる。付箋を使っていると,話し合っている内容が視覚的になる。3つ目は,考える手順をスモールステップで指示している。例えば,グループで提案を考えるときに,声の大きな子が1人いると流されてしまいがちである。それを防ぐために,「まずは数を出そう」,「個人で考えよう」,「ここから1つに絞ろう」というように細かく指示を出すなど,教員側がうまく工程を管理し,時間をマネジメントしてあげることが大事だと思う。4つ目は,発表では,可能であれば聴衆を用意するようにしている。施設改善ならば,事務の人や他の先生を呼んでくる。ターゲットを明らかにすることで,より実践的なプレゼンテーションができる。参加した人からも,生徒の視点は参考になると好評だった。5つ目は,振り返りの時間を持つということである。自分たちが発表し,他の班の発表を見た中で気づくこともある。それを振り返ることで,次回の改善に生かすことができる。最終制作物だけで評価することがないように,各段階でワークシートを配布し,プロセスを記入させている。ワークシートの1つ1つの記入事項の小さな評価を積み重ね,授業全体の評価となるように工夫している。図2 評価の工夫また,評価基準を生徒と共有することで,授業へのモチベーションを高めている。付箋を用いての話し合いや,KJ 法,ブレーンストーミングなどの手法は,先に教えるのではなく,何かを解決していく中で教えていく。これらの手法を教えると,意見の数がかなり多くなる。また,学級や委員会において話し合いをするときにも有効な手法であり,生徒自身による活用が期待できる。身近な課題をテーマとした問題解決の授業は,生徒がその提案の効果を実感できたり,改善意識が育ったりするといった効果がある。解決方法を考えることで,自分たちの身のまわりのことは自分たちで考えるという当事者意識を育てることもできる。発表と振り返り授業における工夫評価における工夫授業の効果アサンプション国際中学校高等学校 教頭 岡本 弘之情報科の授業で取り組む問題解決の授業