ブックタイトル情報セミナーレポート Vol.1

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情報セミナーレポート Vol.1

6 7 プレゼン授業を考えた背景は4つある。 1つ目は,本校はアクティブラーニング推進校で,「アクティブ・ラーナーを育てる?自律的・主体的に学び続ける生徒に?」と掲げており,そこにつながるような授業を考える必要があったこと。 2つ目は,1年次や2年次の総合的な学習の時間で実施している内容につなげるためである。総合的な学習の時間では,課題解決学習,企業探究型学習を通して,主体的・対話的で深い学びを目指している。 3つ目は,文部科学省が掲げている学力の三要素や,生涯学び続ける生徒を育成するためである。ペアワークやグループワーク,発表など,学びあいながら深めていく形で課題に取り組ませている。さらに,目標を掲げて最終的にどこに持っていくかということを大事にしており,振り返りをすることで次につながる授業を考えている。 4つ目として,ラーニングピラミッドでいわれる「講義型」の学習定着率の低さと,「グループ討論をする」,「自ら体験する」,「他の人に教える」ことによる学習定着率の高さを挙げておきたい。 このような4つの背景から考えたのがプレゼン授業である。 まず,教員が教科書2ページ分のポイントを3分ほどで簡潔に説明する。この時点で,生徒はしっかりと説明を聞いていないとスライドが作れない。そのため,普通の授業よりも集中して話を聞くようになる。 そのあと, PowerPoint を使って教科書の内容をまとめさせる。発表準備を含めて30 分程度,スライドを作る時間を設ける。 準備ができたら,発表に移る。基本的にはペアを組んで,1対1で発表しあい,終了後は評価をつけてフィードバックする。このように,生徒が主体的に取り組みながら,互いに理解を深めあえるような授業を行っている。 スライドを作成する際は,教科書やインターネット上の画像を活用して,効率的に教科書2ページ分の内容をまとめていく。初めの頃はタイピングの速度やまとめる能力に差があるが,2,3回行うと作成のスピードもまとめる力もついてくる。最後はプレゼンをして相手に理解してもらうということが目標であるため,どのように工夫すれば理解してもらえるかを考えながら作成を行う。 プレゼンは3分間で行う。1対1のペアで行うが,マンネリ化の防止や,1回目で失敗したことを改善していくために,発表する相手は2回ごとに変える。作成したスライドは各自のフォルダに保存して蓄積していき,評価ではそのスライドを使う。 プレゼン後は,振り返りシートを使って振り返りを行う。「説明は十分だったか」,「興味が持てるような内容だったか」,「積極的に伝えようとしていたか」,「適切な大きさの声だったか」の4項目を,4段階で評価する。さらに,良かった点や改善点を最低2つは書く。 振り返りシートの上の部分(相手への評価)は発表した相手に渡し,下の部分(自分の振り返り)は教員に渡す。自分で振り返り,前回よりもどうだったかというところを肝にして自己評価をさせる。プレゼン授業を考えた背景プレゼン授業の方法作成時のポイントと発表の流れプレゼン後の振り返り図1 振り返りシートによる評価 プレゼン後は簡単なプリントでまとめを行い,教員からも補足をすることで,理解を深めさせる。 これまでの実践を発展させた内容として,プレゼン授業とジグソー法を組み合わせた授業を行った。内容は「知的財産権」と「個人情報」のところで,まず「知的財産権」のグループと「個人情報」のグループに分け,さらに2人1組のペアを作る。そのペアで話しあいながら1つのプレゼンを作り,同じテーマのグループ内で披露する。そのあと,披露したグループの全員で,お互いにフィードバックをする。これをエキスパート活動という。複数のプレゼンがあると,それぞれに良いところや悪いところが出てくるため,その良いところを自分のプレゼンに反映させる。要するに,他のグループの良いところを統合し,完璧なプレゼンを作るということである。その完璧なプレゼンを使い,隣にいる違うテーマのグループに披露する。こうすることで,よりバージョンアップした良いプレゼンを行うことができる。図2 プレゼン授業とジグソー法を組み合わせた授業 もうひとつ,問題演習を生徒に主体的にやらせたいということで考えた授業がある。内容としては,まずは個人で問題を解き,そのあと4人のグループを作り,答え合わせをする。答え合わせをして間違っていた場合は,教えあいをさせる。それをグループの全員が完璧に理解するまで続ける。全員が理解できれば,4人のうち1人がその答えを持って教員のところに行き,教員が答えを確認する。正解であれば,教員から問題をいくつか出す。「これは何か説明してください」と言って説明をさせたり,問題を解かせたりする。それに対し,正しく答えることができれば終了で,間違っていた場合は,もう一度グループに戻って勉強し直す。そして,答えが完璧になったと思ったらもう一度教員のところに行く。これを繰り返し,教員から出される問題に答えることができれば終了,という授業である。 このように,少しでも生徒が主体的に授業に取り組めるような工夫を凝らしている。図3 問題演習も主体的に 教員が生徒のモチベーションを上げることは重要である。生徒をやる気にさせ,「次はプレゼンがうまくいくといいな」と思えるような授業をすることが大事だと思う。教員が教えすぎてしまうと,生徒はあまり成長できない。これが自分の中で課題となり,生徒が主体的に授業に取り組める形を目指してこのような授業を行っている。ペアワークやグループワークを行い,生徒自身が頭を使ったり知識を確認しあったりすることで,自分の成長を実感できるような授業が理想的だと考える。プレゼン授業を発展させてプレゼン授業~主体的・対話的で深い学びに向けて~東京都立本所高等学校 主任教諭 大和 雅俊