ブックタイトル情報セミナーレポート Vol.1

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情報セミナーレポート Vol.1

4 5起きていると考えてもらえるとよいだろう。ほかにも色々な大学が情報入試を実施しているが,その数は徐々に減ってきている。大学が動き始めるには何らかのきっかけがあってから,2,3年はかかる。今回の未来投資会議や安倍総理の発言,これを受けた関係各所の動きがきっかけとなり,2,3年後に少し状況が変わる可能性がある。あるいは中途半端な時期に変えるのは嫌だという大学も多いと思われるので,2024 年に大きく状況が変わる可能性がある。早稲田大学の政治経済学部が,現在の高校1 年生が受ける2021 年度の一般入試から数学を必須にすると発表し,大きな衝撃が走った。これまでは数学は選択だったが,数学Ⅰ,数学Aが必須になるというのである。この動きは大学の中でも重く捉えられており,「うちの大学はどうするの?」という声を頻繁に耳にする。早稲田大学政治経済学部の数学必須化が発表されたのは最近のことで,他の大学が追従するには少し時間がかかる。いずれにせよ,「理数の重視」がこれから進む可能性があり,そこに「情報」ものるかもしれない。「情報は,入試がないから楽しく教えられたのに,入試が始まるとそれができなくなるので困る」という話もよく耳にする。情報入試をやりたいと思っている大学の人も,やりたくないと思っている大学の人もいる。やりたい側はなぜやりたいと思っているのか。今の時代,政治をやるにも,行政をやるにも,音楽をやるにも,アートをやるにも,医者になるにも,情報が絡まない分野はない。この状況の中で,何も知らない生徒が大学に入学してくると,私たちは一から教育をすることになる。大学を卒業したときに活躍できる人材を育成するよう,私たちも大学4年間の中でしっかりと教育をしなければならない。その準備段階として,高校でも少し学んでほしいということで情報入試を求めているのである。誤解を招くこともあるが,決して狭い意味でのIT 人材の育成(プログラマを増やすなど)を目的としているわけではない。文部科学省が大学入学者選抜改革推進委託事業を行っており,この情報分野で情報処理学会が取り組みを進めている。大阪大学が代表を務めており,そこに東京大学と情報処理学会がぶら下がる形の体制である。この中では,思考力・判断力・表現力をどのようにして測るかを考えたり, CBT をどのようにしていけばよいのかを考えたりしている。一般的に,CBT はIRT(項目応答理論)を使って実施していることが多い。つまり,多肢選択の中から選ぶというのを繰り返す。それぞれの問題に難易度が設定されており,その結果を受けて点数をつけていく。TOEFL などと同じだが,いつ受けても,問題が違っても同じように能力を測ることができるという特徴を持つ。しかし, IRT を使って,思考力・判断力・表現力というのは問えるのだろうか。それを検証するため,半分はIRT,半分は長文の問題を,大阪大学の1年生と東京大学の1年生に受験してもらい,データをそろえて分析を進めている。この事業が終わる頃には,こういった結果もまとまってくると思う。 図2 情報入試研究会作成問題そもそも思考力・判断力・表現力は,何をどのように測るのか。これを示したのが図3である。図3の右側のように,「あなたの思考力はAランクで,判断力はBランクです」などということを測りたいのではない。私たちは,各分野において「知識があるレベルなのか」,それとも「それを活用できるレベルまで達しているのか」というようなことが評価できる体系を作り,問題にしていこうと取り組んできた。理数重視の動き何のために情報入試を始めるのかCBT についての検討 図3 思考力・判断力・表現力の測り方現在CBT を2つ作っている。昨年行ったCBT をV1と呼んでおり,これは,同じ選択肢が連動表示されたり,文字制限がある問いには入力文字数が表示されたりなど,答えのアシストがされるものである。 図4 CBT(V1)今年に入って作ったV2 は,どちらかというと紙ベースではやりづらい,CBT ならではの出題形式である。例えば,実際にデータを入力してみて出力を観察し,その結果からプログラムを想定したり,大量のデータを使ったデータベースを操作するような問題を出したりする。そのほか,ゲームブック形式で,ストーリー性のある連続設問により思考力を問うものもある。このあたりは,紙ベースではやりづらい問題で,コンピュータならではの試験である。 図5 CBT(V2)ならではの出題① 図6 CBT(V2)ならではの出題②たくさんのデータを扱うことが情報科と数学科の違いだとすると,当然,情報科ではデータを扱うような問題を作らなければならない。これは高校の先生にとっても非常に大変である。例えば情報Ⅰの授業では,たくさんのデータを扱わなければならないが,そのような試験を高校の中でどうやって行うのか。大学受験だけでCBT を使うというのも難しいので,高校の中でも実際にCBT を使う必要が出てきそうである。もはや,情報分野に関する知識なしには何の課題も解決できない時代である。このような社会を生きていく生徒たちに対応した教育を考えていかなければならない。理数やSTEAM 教育重視の動きも大きくなっている。情報科を入試に加える動きが加速し,大学入試センターの準備も進んでいる。高校の先生方もぜひ注目をしてほしい。CBT ならではの出題形式まとめ