ブックタイトル情報セミナーレポート Vol.1

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情報セミナーレポート Vol.1

14 15育効果の高いものを選び,取り組む課題に適したソフトウェアを選択することが重要である。学習指導要領を見ると,活動例として「プログラムから呼び出して使うプログラミング言語」,「OS やサーバなどが提供するライブラリやAPI」,「プログラムの修正(デバック)」,「関数を用いてプログラムを分割・構造化」,「アプリケーションの中で実装されている検索・置換・並べ替えなどのコーディング」,「カメラ・センサの活用,音声認識」などがある。今回の学習指導要領は,(1)の問題解決がイントロダクションで,(2),(3),(4)と,系統立って書かれているように感じる。そうすると,ネットワークは(4)に出てくるので,(3)のプログラムではネットワークを使ったプログラムはやらなくて良いのか,という疑問が出ると思う。しかし解説をよく読むと,情報通信ネットワークについては,中学校の技術・家庭科で,双方向性のあるプログラミングを扱うと書かれており,IP アドレスなどが出てきている。つまり,高校の情報科で(3)を教える際には,ネットワークは学習済みという前提で,ネットワークを使ったプログラムを教えなければならないということである。機会があれば,技術・家庭科の技術分野の教科書を一度ぜひ見てほしい。情報の教科書かというくらい詳しく書いてある。ただ,技術・家庭科の技術分野はあくまでも,ものづくりを柱とした情報の技術であるし,当然中学生と高校生との発達段階の違いも考慮する必要がある。図7 「関数を使ったプログラム」の問題例例えば,この関数を使ったプログラムの問題は,生徒に解かせた場合,8割くらいが解けそうなレベルの簡単なC 言語のプログラムである。これは,基本情報技術者試験の解説本にも出てくるようなレベルである。極端な例えだが要約すると,私たち情報科教員は,基本情報技術者試験を合格できるレベルの知識がなければ,情報Ⅰが始まってから対応に困ることになる。生徒に「先生,国立大学の共通テストの過去問が分からないです。教えてください。」と質問されたとき,「ごめん,先生解けない。」とは言えないのと同じことである。そのためにも,基本情報(旧2種)くらいは,勉強しておくべきだと思う。そうすれば,生徒からの質問はもちろん,情報Ⅰにも対応できるようになるはずだ。そうは言っても,プログラミングは難しい。いま私が注目しているのは,「Progate」という初心者からできるオンラインのプログラミング学習サービスである。教科書の内容をいきなり教えるのでなく,「○月○日までにProgate のレッスン○までやってくるように」と指示し,生徒が自宅で基礎を勉強し,学校ではその知識を使って深い学びにつなげていくというような反転学習的なことを試してみようと考えている。Progate には,無料で学校教育に活用できる「アカデミックプラン」というものがある。授業にあわせて2つのコースが選択でき,選択したコースのレッスンはすべて無料で利用できる。生徒は自分のアカウントを持つことになり,自宅や学校で学習を進めていく。生徒一人一人の学習の進捗はデータ化されるため,それぞれに合わせた指導をすることができる。この項目は,中学校,高校の数学科と関係が深い。図8 数学科との関連ネットワークについては,「コンピュータ等を使ってデータをやり取りするためにコンピュータ同士を接続する仕組みや情報通信ネットワークを構成するクライアントやサーバ,ハブ,ルータなどの構成要素の役割について理解する」,「家庭内LAN などのネットワーク(3) コンピュータとプログラミングプログラミング学習サービスProgate(4) 情報通信ネットワークとデータの活用の仕組みを取り上げ,ネットワークを構築するために必要な構成要素やプロトコルを扱う」と書かれている。そのため,まずは,「情報の科学」の教科書に載っている「LTE」や「ハブ」,「ルータ」,「プロバイダ」,「無線LAN」などの用語を教員が説明できなければならない。また,生徒には用語を覚えさせることを目的とせず,必要と感じる知識を教えなければならない。図9 ネットワークの全体像学習指導要領を読み,情報通信ネットワークの部分で,どのような問題が出てくるかを考えたのが以下である。図10 「ネットワーク」の問題例①図11 「ネットワーク」の問題例②データの活用については,学習指導要領の解説からキーワードを抽出すると,「データベースの理解」,「データモデル・大量のデータ」,「データの様々な形式・データの収集,整理,分析」,「名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度などのデータの尺度水準の違い」,「データの欠損値外れ値,データの変換」,「テキストマイニングの基礎」などがある。「情報Ⅰ」に向けて私たちが準備することは,大きく3つある。1つ目は,(1)の問題解決,(3)のプログラミング,(4)のネットワークの部分については,基本情報技術者試験に合格することである。そうすれば,情報Ⅰにも耐えられると思う。2つ目は,(2)の情報デザインについて学ぶということである。私もいまここを必死に勉強していて,色々な本を読んだり,講演を聴きに行ったりしている。3つ目は,(4)のデータの活用で,統計を学ぶということである。統計検定の3級くらいまでは勉強しなければならないと考えている。図12 情報Ⅰに向けて学習指導要領解説を読むにあたっては,小学校及び中学校の総則にも書かれているが,小・中・高を通した情報活用能力の育成をしなければならないことを意識したい。教科化されているのが高校なだけで,小学校では全教科・学校全体で行う。中学校は技術・家庭科だけに押し付けられているようにも見えるが,小・中・高の発達の段階に応じた情報モラルがあるはずである。2022 年の新学習指導要領の施行までに,情報Ⅰを見据えた改善をしていかなければならない。<引用>・過去問題 東京都立三鷹中等教育学校  http://www.mitakachuto-e.metro.tokyo.jp/site/zen/entry_0000083.html・Progate  https://prog-8.com/「情報Ⅰ」に向けた準備