ブックタイトル情報セミナーレポート Vol.1

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情報セミナーレポート Vol.1

12 13情報Ⅰが実施されるのは「まだ先のこと」と思っていないだろうか。中等教育学校や,中学校相当を持っている教員,私立の中高一貫校からすると,すぐそこのことである。書き出してみるとよく分かるが,2022 年度が新学習指導要領実施年で,この年高校1年生になる生徒がいま何年生かを考えてみる。中等教育学校では,2019年度に入学する生徒は,新学習指導要領で高校の授業を受けることになる。情報Ⅰでは,「情報社会の問題解決」,「コミュニケーションと情報デザイン」,「コンピュータとプログラミング」,「情報通信ネットワークとデータの活用」を教えなければならない。これらを考えると,年に1つくらいは情報Ⅰに向けた準備をしていかないと間に合わない。図1 新学習指導要領と生徒情報Ⅰの導入として,「問題解決」,「情報に関する法規・制度」,「情報セキュリティ」,「情報社会における個人の責任と情報モラル」,「情報技術が及ぼす影響」,「情報と情報技術の適切な活用」がある。もちろん,これらも大学入試に出る。学習指導要領のア(ア)には,「情報やメディアの特性を踏まえ,情報と情報技術を活用して問題を発見・解決する方法を身に付ける」と書かれている。はずれている可能性もあるが,これを私なりに解釈して考えた問題が,次の通りである。図2 「問題解決」の問題例①図3 「問題解決」の問題例②簡単に言うと,「固定長ではなく,可変長にすると問題がある理由について,例を示して説明しなさい」という問題である。実は,この問題は本校の入試を引用したもので,小学校6年生に5分間で解かせることを想定している。実際の問題文では,小学生向けに「Aさん」と「B さん」が,「たかおくん」と「みつこさん」になっているが,それ以外は同じである。オリジナルの問題は,本校のWeb ページにも公開されている。解答の一例を次に示す。新学習指導要領と生徒(1) 情報社会の問題解決図4 解答例この問題の裏に隠された意図は,固定長で情報を処理する,可変長で情報を処理するというところを小学生レベルに落とし,問題文からそれに対する答えを見出すことである。中等教育学校で適性検査をしている学校は,記述式の入試にアドバンテージがある。私たちはすでにこのような入試を実施しており,さらにこの能力を伸ばす教育を6年間行っている。学習指導要領の解説を読み,私が一番大事だと思ったのが,(2)の「コミュニケーションと情報デザイン」である。プログラミングやデータサイエンスももちろん大事だが,先生方の中にはプログラミングを経験した人や習ったことがある人,昔SE だった人もおり,プログラミング教育としてはすでにたくさんの事例がある。データサイエンスも,言葉は新しいが,統計の世界には統計の専門家がいる。図5 情報デザインとは学習指導要領を見ると,「目的や状況に応じて受け手に分かりやすく情報を伝える」,「メディアの特性やコミュニケーション手段の特徴について科学的に理解する」,「情報デザインの考え方や方法を身に付ける」ということが書かれている。効果的なコミュニケーションや問題解決のためには,当然情報を整理しなければならない。フェイクニュースなどが含まれるような膨大な情報の中から,自分に必要なものは何か,またそれを他人に伝えるためにはどうしたらよいかを考えることも,情報デザインである。ちなみに,数学科との連携,社会科との連携というのは学習指導要領解説に書かれているが,芸術科との連携ということは書かれていない。私たちが扱う情報デザインは,あくまでも情報科の中のもので,芸術ではないということである。前後の学習との関係の中で,メディアの特性やコミュニケーション手段の特徴については,中学校技術・家庭科の技術分野「情報の技術」及び「情報Ⅰ」の(1)「情報社会の問題解決」とも関連づけて扱う。私たち高校教員は,高校の学習指導要領ばかりを見てしまいがちだが,中学校技術・家庭科の技術分野の学習指導要領だけでも読んでおく価値がある。情報デザインの考え方や方法については,(3)「コンピュータとプログラミング」,(4)「情報通信ネットワークとデータの活用」でも扱う。なぜなら,プログラムを書く際に,データ構造を理解し,何を扱うのかきちんと整理できていなければ,良いコードは書けないからである。このあとの学習のためにも,情報デザインはとても重要である。図6 前後との学習Word,Excel,PowerPoint,Photoshop,Illustratorなどは,ツールである。やりたいこと,具現化したいことのためにこれらを使うのはよいが,操作だけを学ぶのは違う。例えば,学習指導要領の情報Ⅰで言えば,「データの活用」という単元で,sAccess を使うのか,Excel を使うのか,全然違うものを使うのかは,教員に任されているところである。目標や目的に応じて,教(2) コミュニケーションと情報デザイン前後の学習との関係ツールを学ぶのではなく,深い学びを東京都立三鷹中等教育学校 主幹教諭 能城 茂雄新学習指導要領「情報Ⅰ」に向けて