先輩からのアドバイス vol.35
【マンガ】研究会での成果を生かす(3年生への指導編)

指導や授業で、つまづきがちな悩みや疑問をとりあげ、ベテラン教師から読者と同じ目線で問題解決へのアドバイスを提案します。

ここがポイント

美術科の目標に照らして
 井澤先生が行った3年生の授業から問題点を洗い出してみましょう。確かに、1年生や2年生の授業を行ったときと同じように、町田先生の指導法で出来上がった自分の作品の出来栄えに驚きと手ごたえを感じ取り、満足した表情を見せる生徒も多くいました。しかし、学年が進むにつれ、中には授業の展開に満足しない生徒も現れます。それはなぜでしょうか? ここに答えのヒントがありそうです。
 井澤先生の中学校の子どもたちはミュズの助けもあり、のびのびと日々の授業に臨む姿があります。結果、出来上がる作品は、ハイレベルな作品ばかりではなく、そうでない作品も確かに多いようです。技術的にレベルの高い作品を作らせたいと考えるのは、教師であれば誰しもです。しかし、美術科の目標を見てみましょう。何を学び、どのような資質・能力を育成するのかを三つの柱で示した今回の教科目標の「知識及び技能」の面を見てみた場合、「創意工夫し」「創造的に」といった大切な要素が示されています。他の二つの資質・能力に関して見てみても、今回の授業展開とは乖離する部分が多々あることに気がつきますね。そうです、美術で学ぶ教育はハイレベルな作品を制作することだけが指導目標ではないのです。

見守り、待つ指導
 井澤先生は、まだそのことに気がついているとは言えない状態です。ミュズとの語らいの中から自分自身で学び取ることが大切です。今回の授業で、マニュアルに満足できなかった生徒の分析をぜひ行うべきですね。なぜそういった感情が生まれたのか。子どもたちに聞いてみると、おそらくストレートな「つまんないから……」といった答えが返ってくるのではないでしょうか。「つまんない」の中身はいったい何でしょうか?
 教えるべきことはしっかりと教え、彼らが試行錯誤し、造形的な見方や考え方を培っている時間は、見守り、静かに待つ指導の重要性を認識できるように、そのメリハリを井澤先生にはミュズの助けを借りながらも一緒に学んでいってほしいものです。

(シナリオ・監修、文 川合 克彦)