ここがポイント
評価の観点は「主体的に学習に取り組む態度」
人は、よりよく生き、社会に認められ愛され、豊かな人生を営むことを望みます。身近な中学生の姿で見てみると、どんなにやんちゃでふてくされ、反抗的な態度を見せる子どもも、心の奥底では「よい子」になって認められ、心を開き愛されることを望んでいます。このような心の特性を理解しつつ学習指導要領の3つの柱で学びを捉えようとするとき、子どもたちはまず「知識及び技能」を獲得しながら、「思考力、判断力、表現力等」を駆使して学びに向かい、自己の姿に手ごたえを持とうとします。その際「学びに向かう力、人間性等」は、他の柱とは少し違った働きをします。他の2つの柱を獲得しようとするとき、「学びに向かう力、人間性等」には心の向かう方法性を見定める情意的な側面が影響するのです。そのため、この情意的な面は人間性として「感性、思いやりなど」という括りで評価の観点からは外され、個人内評価の範疇とされました。「感性、思いやりなど」における感性は、特にその人の心の向かう方向性を意識、無意識に関わらずにつかさどる資質であり、その人の人間性そのものと言え、尊重されるべきものだからです。しかしこの感性こそ、美術科の授業で、よさや美しさに触れて、ゆっくりと大切に育んでいかなければならない要素であることを忘れてはいけません。以上のことを背景に客観的な評価の観点としては「主体的に学習に取り組む態度」となったようです。
子どもたちが主体的に学習に取り組むために
主体的に学習に取り組む姿とは、どのような姿なのでしょうか。教師は個々の学びに寄り添い、育みを認め励ます存在でありたいものです。そのためには、子どもたちが主体的に学ぼうとする内発的な動機を生み出す授業展開をデザインすることが要求されます。決して挙手の回数などで評価してはいけません。子どもたちが試行錯誤しながらも、学びを勝ち取っていく一人一人の姿をあたたかな視点で見定める力量が教師には求められるのです。
(シナリオ・監修、文 川合 克彦)