ここがポイント
生まれる作品と美術の学び
今回はミュズの活躍が光りましたね。大切なことがたくさん語られていました。おかげで、かわいそうにミュズは少々語り疲れたようです。でも年間指導計画を立てるということは、それだけ大切な業務であるということでもあります。なぜなら、1年間の生徒の学習の内容と方向性を左右するわけですから当然のことなのです。特にどんな可能性を持った生徒が入学してくるのかが、把握しにくい1年生ならなおさらです。
若い教師が年間指導計画を立てるときに陥りやすい課題として、どのような題材を授業の中で行うのかということに終始してしまうということがあります。その際の教師の頭の中にあるのは、作業に夢中になる子どもたちのイメージと出来上がってくるであろう完成作品のイメージではないでしょうか。○○作品展などで、金賞を取るなどということが目の前にあるとなおさらです。もちろん素晴らしい出来の作品が生まれるような授業は素晴らしいものではあります。しかし、教師は授業で育まれる学びの中にあるものに着目しなければならないことを忘れてはいけません。「何を学ぶために必修教科として美術科は存在するのか?」美術教師はこの答えを明確に持とうと自問自答するべきでしょう。そのための学習指導要領なのです。
As is the teacher so is the school.
学習指導要領に書かれた文章には具体的な題材の紹介はありません。指し示すべき方向性と、子どもたちが学ぶべき事柄が記述されていますので、まずは学習指導要領を理解しようとすることが大切です。過去に行われた題材と同じ活動をする必要はありません。様々な情勢で時間がなければ短時間題材に、また一つの題材にいくつかの学びの要素を計画的に配置するなど、美術科には題材開発という自由が許されています。つまり授業者はクリエーターでもあるわけです。三冊に構成された教科書には、行われるべき教育の客観的分析と、新たな授業構築のエッセンスが具現化されていて、3年間の発達の段階に合わせて編集されています。どのように教育が改善されようとも、現場の教師が旧態依然とした指導をしていては何もなりません。As is the teacher so is the school.「学校は(学びは)教師次第である」という言葉があります。今を生き、未来を生きる子どもたちのための学びを共有する教師でありたいものです。
(シナリオ・監修、文 川合 克彦)