美術の先生が実際に立てられた年間指導計画を紹介、解説するコーナー。前回に引き続き、さいたま市立大宮南中学校の高藤友輔 先生に解説いただきます。今回は、3年生の年間指導計画に焦点を当てて解説いただきます。
以下より、高藤先生が立てられた3年生の年間指導計画の表がダウンロードいただけますので、ぜひ記事と併せてご確認ください!
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また、3年間分の年間指導計画をまとめた表は以下よりダウンロードいただけます。
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目 次
・5~7月:和の心を込めて
・9~12月:人が集う、憩いの空間
・1~3月:キラリと輝く私のオモイ~砂型鋳造によって生み出す金属の形~
・3月:明日への旅立ち
1.3年生の年間指導計画、どうやって考えている?
3年生では、進路や自分の在り方と真剣に向き合う時期だからこそ、これから大切にしたい思いや自分が置かれている環境のすばらしさに気が付いたり、身に付けた資質・能力を自らの個性として社会や生活の中で、どのように活用することができるのか考えられるようになったりする授業を意識しています。
2.実際の年間指導計画を解説!
筆者が、3年生の年間指導計画を立てる際に、どんなことを意識していたのかを題材ごとに解説します。
5~7月:和の心を込めて
1学期に修学旅行が実施される第3学年において学習内容が深まるように、仏像の鑑賞や日本の伝統行事の考察などを通して自分が住んでいる国の文化ではどのようなことが大切にされているかを考えながら表現をします。1・2年生で扱ってきた素材の工夫を活用できるように和紙を使いますが、表現に活用できる新しい素材として、また日本文化に親しみや興味・関心をもってもらえるように「水引」も紹介します。これまで、外国語科(さいたま市はG・S科)において、作品を通して自国の文化の紹介を行いました。
9~12月:人が集う、憩いの空間
2年生で立ち上げた仮想の会社「South Design Company」の継続として、SDGsも考慮しながら、義務教育におけるデザイン題材の最後として設定しています。調査により、「道路」や「公園」は生活に密着しているが、美術との関連があると考えている生徒は三分の一から半分程度であるため、周辺環境も目的や機能が考えられた造形であることを意識させながら指導を行っていきたいと考えています。
1~3月:キラリと輝く私のオモイ~砂型鋳造によって生み出す金属の形~
3年生最後の題材として、これからの人生において大切にしたい「オモイ」を金属という素材のよさに込めながら表現します。進路が決定していく時期だからこそ、なりたい自分になるための大切なことについて気が付いてほしいと考えています。
3月:明日への旅立ち
前題材の「キラリと輝く私のオモイ」の鑑賞も活用しながら、義務教育においてすべての生徒が学習してきた「美術」がどのような教科であったのか、これからの人生に必要などのような価値をつくり上げてきたのかを伝えたいと考えています。
3.おわりに
美術教員は、多くは学校に一人しか配属されていなく、全学年を担当しています。だからこそ、学年ごとの特徴や雰囲気などに気が付きやすい立場であると考えます。
授業は、それぞれの学年の特徴や、発達の段階による特徴を考えながら、年間指導計画や題材の設定をすることが大切になります。また、授業で生み出される表現は、生徒が自己との対話を多く行い、自分の分身である作品が表れてきます。その時期にある題材の表現の仕方や生徒の様子を先生たちと情報交換をしていくと、その生徒の成長や悩みに気付くことができます。
生徒一人ひとりが自分のことを主体的に表現できる美術科は、学校や学年の運営に大きくかかわれる素敵な教科だと思います。
高藤 友輔(たかふじ ゆうすけ)
さいたま市立大宮南中学校 教諭
○経歴
2005年~ さいたま市立八王子中学校
2010年~ さいたま市立南浦和中学校
2012年~ 埼玉大学教育学部附属中学校
2019年~ さいたま市立大宮南中学校 勤務